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開印の言葉とは

アタシは砦跡の瓦礫の影に居る。後はこの包帯を引っ張るだけだ。

圧力鍋を開けるべきか開けないべきか、そんなことは既に答えが出ている。

開けなければならないのだ。

だっていくら怪しいと思ったところで、開けなければ先に進めない。もしかしたら空の圧力鍋(ハズレ)かもしれないのだから。

でも無頓着に開けることは(ハバカ)れるので、細工をしている。

圧力鍋が動かないように丈夫な糸で杭を打ち地面に縫い付けて。

圧力を抜くネジ式の弁に包帯を巻き付けて、途中に滑車を付けて力の働く向きを変えて、瓦礫の影から弁を開けられるようにしたのだ。

これで爆発してもアタシはきっと大丈夫。いくらなんでも周辺全てを消滅させるような爆発は起こるまい。

その他の呪いっぽい罠は、トビーさんを信じることにした。封印の魔道具を作るときに、少しでも優麗さんの事が脳裏を掠めたのなら。最悪、優麗さんが開けてしまうことを想定するはずだからだ。

自分が出てきて、変わりに優麗さんが封印されたり死んでしまったりしたら、後悔しか残らないだろう。

優麗さんは幽霊だから、既に死んでいる状態かもしれないけど。


一瞬よぎる不安を振り切りアタシは力一杯、包帯を引っ張った。


果たして、ネジは簡単に回ったが圧力が抜けるような音はしなかった。

爆発もしないし、圧力鍋に封印されてしまうことも無かった。ひとまず安心したが、空の圧力鍋(ハズレ)だったのかもしれないと不安になる。


アタシは瓦礫の影から出て、圧力鍋のネジを完全に緩めて蓋を開けた。

恐る恐る中を覗くと、二つの物が入っていた。

一つは紙のようだ二つに折られている。表は何も書かれていない。裏には何かが書かれている。

早速取り出し開いて読んでみる。この世界の言葉だ。

『この紙を見ている人が居るということは、私はこの世に居ないのだろう。魔王の封印は成功して世界に平和が戻ったのだろうと思うと嬉しい限りだ。一緒に入っている物は魔王を封印している物だ、魔王は人を憎んでいる。下手に動かすと封印が解けて貴殿を食らうであろう。だから、見つけてくれた貴殿には感謝するが、再び同じように蓋をして埋めておいて欲しい。最悪の魔王を再び世に放たないように願う。 魔道具師トビー』

どうやら当たりだったようだ。自分自身が犠牲になる事がわかっていながら封印を実行したとは、その覚悟に頭が下がる思いだが、秘密にしていたのかもしれないが優麗さんを置いて逝く事がわかっていながら一言も懺悔が書かれていないなんて、自分勝手でひどい奴だとしか思えない。

書かれているように、このまま蓋をしてしまおうかと思って紙を二つに折ったときに、何かが書かれていることに気が付いた。

この紙は真っ二つではなく、少しずれて折られていた。

折り目通りにしっかり折ると、日本語で『魔力を流して』と書かれていた。

指示通り紙に魔力を流すと、何も書かれていなかった表面に、日本語の文字が浮かび上がった。

『この紙を見ていると言うことは、僕はこの世に居ないのだろう。って言うのは冗談だ。このネタが通じるのなら貴殿は異世界に来てしまった日本人なのだろう』

トビーさん、この文字が読める時点で、ほぼ日本人だって。いちいちネタを披露しないで良いから。って、このやり取りをしたことがあるような。

まあ。そんなことは置いといて。わざわざ日本語で書いたと言うことは理由があるのだろう。続きを読むと。

『もし、火魔法を壁の用に連発されても問題ない程の実力があるのならば、封印を解いて魔王を倒して欲しい。倒してくれたら、お礼に極魔道具を進呈します。もしそこまでの実力がないのであるならば、元に戻して埋めて欲しい。本音は封印を解いて貰いたい、待たせている人が居るからだ、だが実力がなければ、貴殿が死んでしまう。これは自分勝手な願いだから実力なき物は読まなかった事にして欲しい。封印を解く言葉は……』


封印を解く言葉も重要なのだが、頭で考えるより先に目が、最後の行を追ってしまっていた。


『異世界に来てしまった日本人 時任 清正美』と。


アタシは二つの記憶が競合してしまっている、それに伴い二つの感情も波を打っている。

元の自分の記憶と感情は冷静に『実感ないけど、この名前はアタシの子供かもしれない。トビーってあだ名をそのまま使っていたのね。魔術の祖とか言われて立派に育ったんだね』と他人事の用に考えていたのだが。

新しい記憶と感情は激昂していた。

『宇宙人どもめ。アタシだけではなく、息子まで異世界に拐ったのか。許さない。許せるはずかない。必ず痛い目にあわせてやる』

冷静なアタシは、激昂しているアタシを落ち着かせるために苦労したが、まずは封印されている子供を助け出す事が先決だと説くと、波が引くように落ち着いた。

取りあえず、記憶と感情のイニシアチブは冷静なアタシが握っているようだ。


「我、解放の……。開印」か、封印の反対は開印なのか。アタシの子なら、もう少し捻って欲しいけど、簡単に封印が解けないようにした努力が見えるから及第点をあげるね。って、なに及第点って甘い点数をつけているんだ。ってアタシはこの子の親か。

まだ混乱しているアタシだが、やらなければいけないことはわかっている。

変身していないアタシでは、ゴキリンに勝てるかわからないが、親は子を守らなければならないのである。

実力がないから諦めるなんて言えないのだ。

必勝の気合いを込めて、封印を解く言葉を発する。

「我、解放の魔法なす者。今、解き放たれし時が来た。開印」


そう言い放ち。アタシは封印の魔道具を投げた。


その瞬間、アタシは白い光に包まれた。






あれ?

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