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対決 不浄の恋人

自称でも闇魔の四天王と言うからには、とても強いのであろう。お約束から考えれば、ゴキブリなのだから、素早い相手だと考えられる。

どんなタイミングできても避けられるように、相手の動きから目を離さない。

アタシから先制攻撃をすることも考えたが、相手がどんな攻撃をするのか見た目はゴキブリなだけに、まるで想像出来ない。

こちらの攻撃を避けられて致命的な一撃を受けることになったら、目も当てられない。なのでカウンター狙いである。この距離なので遠距離攻撃を持っているなら、打ち出しを見て避けてカウンターとして気を撃ち込む。

突進してくるようなら、遠距離攻撃は無い。距離を詰められないように気を付けながら、アウトレンジで気を撃ちまくる。

そして気を付けなければならないことは、撃ちきった後に『やったか』と言ったり思ったりしてはいけないことである。

そんなことをしたら、間違いなく無傷のゴキリンが現れるからだ。細心の注意を払わなければならないことである。


ゴキリンは、上の両腕を組み、下の右腕を腰にあて、左腕を前に突き出した。さすがは四天王と自称するだけあってゴキブリだが威風堂々としている。

「さあ。この不浄の左手で闇魔の世界に案内してやるでゴキー」

あの体勢からの攻撃は遠距離攻撃か。アタシはそう予想して、射線から外れるように軽くサイドステップを踏んだ。その時。

「この左手に触れるゴキー。さあ。来るゴキー。どうしたゴキー。……ゴキー。……ゴキー」


真面目に戦術を考えていたアタシの脳内で何かがキレた。

「ゴキー。ゴキー。うるさい! 誰が好き好んでゴキーの手を自分から触りに行くか!」

両手に持っていたホウキとハタキを空中に放り投げて、両手から十発の気弾を撃ち込んだ。

そしてタイミングよく落ちてきたホウキとハタキをキャッチして、何故か一回転して決めポーズ。と言うことは……

「治療魔法技 聖光気弾十連撃。完治しちゃいましたか?」

アタシの気弾技をコスプレナースに取られた。しかも『完治しちゃいましたか?』だって、やめてくれ。思わぬダメージに膝を着いてしまいそうな気がしたが、決めポーズ中なので動けない。普通、敵前で膝をつくなんてそんな危ない事にならなくて良かったと、決めポーズ硬直に感謝しつつも。そんなわかりやすい倒せていないフラグなんて立てたらダメだという思いもある。

このパターンは絶対にあれだ土埃が晴れ始めて姿が見えた瞬間にお返しの一撃が飛んできてピンチになるパターンだ。早く逃げなければならない。

頭ではそうわかっているのに、今度は決めポーズ硬直のせいで動けない。早く硬直よ解けろ。

土埃が晴れてきた。

『まずい。まずすぎる。早く解けて。お願い解けて』

わかっていてピンチになるなんて嫌すぎる。心の中で叫びがこだまする。


が、お返しの一撃は来なかった。砂埃が沈着する頃、漸く硬直が解けた。

ゴキリンを見ると真っ黒だった体表が半分以上白くなっている。どうやら効果はあったようだ。その時。

「やばいゴキー。このままでは浄化されるゴキー。部下よ集まれでゴキー!」

ゴキリンの叫びに黒いアレたちが集まり、ゴキリンの身体に取り付いていく。そして次の瞬間。ゴキリンが10mサイズに巨大化した。因みに白いアレはアタシの背後で整列(?)しているが、アタシに合体の意思は無いので意味は無い。

「これで無敵ゴキー。白法衣のナアス、闇魔の力を思い知るゴキー」

巨大化したゴキリンを見て。確かに強そうだと納得する。なにせ大きくなれば、それだけで力となるからだ。しかも、元々ゴキブリマンなので触れるだけでベトベトしそうだから近接攻撃は選択肢に無かったのに、本物のゴキブリでコーティングされたのなら尚更触れたくない。恐るべき相手になってしまった。

だが。アタシだって巨大化するのを指をくわえて待っていた訳ではない。

「それは何のまねゴキー? もしかしてお腹が痛いゴキーか? だったら、そこの岩影にでもしてくるゴキー。後で部下達が綺麗にしておくゴキー」

ゴキリンめ。女性に向かって何てデリカシーの無い発言をしているのだ。その一言だけで万死に値する。ゴキリンよ墓標には『女性の敵、ゴキリン。ここに消える』と書いといてやるから覚悟するがよい。


アタシはゴキリンが悠長に部下と合体している間から。

両手を合わせて気を手と手の間に凝縮し、反動に備えて腰をしっかり落とし、両手を背後まで引いて気を凝縮し続けていた。

この体勢を見て、ゴキリンは腹痛なのかと思ったのだろう。心配してくれて、ほんのちょっとだけ嬉しいが、もうゴキリンと語る言葉など無い。

王道なら地道にダメージを蓄積してから、止めに放つのであろうが、撃てるチャンスがあるなら初っぱなから撃つべし。


必殺技名を叫ぶなんてあり得ない。アタシは凝縮した気をゴキリンに向けて放出するイメージをしながら気合いの息と共に両手を前に突き出す。

その時、すべてが白光に塗り潰された。

アタシの気の色は白であるが、でもこれは白が濃すぎる。ってまさか。

「治療魔法技奥義 聖光彗星気弾 おとなしく退院しちゃいなさい」

気弾を放ち終えたアタシは、強制的に決めポーズを取らされている。何ゆえ、敵に背中を向けるのだ。何ゆえ、ずれていないナースキャップの位置を直すのだ。そして誰に向かってウインクして片腕を挙げて勝利のポーズをしているのだ。だがそれは誰も見ていないし我慢しよう。

でもこれだけは許せない。コスプレナースにアタシの技を再び取られてしまった。更に奥義ってなによ。この技はアタシの妄想の産物なのよ。さも初めから有りましたなんて口調で言わないでくれ。

ああ。突っ込みどころが多くて大変だ。ところで『退院』って、いつからゴキリンは入院していたのよ。ってあれか。変身時にマジックホスピタルとか言っていたけど、アタシ自身が病院なのか。だから『退院しちゃいなさい』ってことなのか。そんなどうでも良いことでも考えれば考えるほど混乱する。今のアタシの状況。完全に、とほほである。


そう言えばゴキリンはどうなった。


ゴキリンの事に漸く考えが及んだマッキーであった。


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