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魔法少女には縫いぐるみ生物がつくよね

ショックを受けて立ち直れないでいる間に、世界の王が何かを話している。

「その姿……通り……ナアス……実在……納得……何故……」

そんなごちゃごちゃ言われてもアタシには相手にしている余裕はない。この格好をなんとかしなければならないのだから。

そうだ変身したからには元に戻る方法があるに違いない。思い出せ、魔法少女のアニメを。元に戻る方法はなんだ。だが昔に見た魔法のコンパスで変身するアニメ以外は、戦闘終了後に何事も無かったかのように元に戻っているシーンしか思い出せない。なら世界の王と戦って勝てば戻るのか。それはぜったい無理だ。そもそも、このアイテムで変身してしまったアタシは元の姿に戻れるのだろか。

服装が変わるだけなら脱いでしまえば良いけど、背中の翼は大きすぎて隠せない。これはアレか。

アタシはこの先、この世界におけるファンタジー生物の一人となって、新たな登場人物に「さすがファンタジー世界だ。なにせ翼人までいる」と感動させないといけない役柄になるのか。

って、脱線している場合ではない。ほんと、どうしたら良いのだろうか。こんな状況を説明して導いてくれるアシスタントキャラはアタシには居ないのであろうか。

そうだ。いるよ。そうアタシの心に住み着いて見守ってくれる存在がいるよ。ここは格好良くビシッと決めておくれ。

『蜘蛛君。お願いだからアタシを助けて。この状況を打破出来る様に導いてください』アタシは心の中にいる蜘蛛君に必死に呼び掛けた。

すると一瞬、目眩を感じたがすぐに戻ったような気がする。もしかして戻ったのかと思い全身を見るが、変身したままである。

ふと足下をみると何かが描かれている。日本語だ。もしかして目眩を感じている間に、蜘蛛君が何かを書き残してくれたのかもしれない。そう。蜘蛛君だけが、この世界に来たアタシの昔からの唯一無二の味方だ。ありがとう蜘蛛君。この恩は忘れるまで忘れないからね。

早速、読んでみる。

『お久し振りです。真紀の活躍はいつも見ていますです。今回も楽しく拝見させて頂いていますです』

いつもの『です』口調は文にしても健在なんだな。

『今回の魔法少女事件も楽しいです。これからも楽しい事を体験したいです。真紀の活躍を期待するです』

あれ。魔法少女の対策はどこだ。

『魔法少女について……』

おお。あった。危なく自分の足で踏んで読めなくなるところだった。こんなに離して書くなんて。蜘蛛君も良くわかってる。ネタは引っ張るものだとね。なになに。

『魔法少女についてです。真紀にわからない事が僕にわかる訳がないです。時間が経てば勝手に戻るのではないのかです。

PS僕は縫いぐるみ生物ではないのです。間違えないでくださいです。僕はただの蜘蛛です。期待しないでくださいです。 以上です』

恩は忘れた。アタシの中には蜘蛛君に対する恩はどこにもない。蜘蛛君は理性的だ。そう言われてしまえば、アタシが知らないのに蜘蛛君が知っている訳なんてないよね。元に戻るにはタイムオーバーまで待つしか方法は無いのかな。

でもありがちな3分なら良かったのだけど、もう経ってしまった。次は30分がポイントかな。でもそれ以上だと見当もつかない。

なにしろ、少なくとも姿を変えずに1万年間クータンのお腹に刺さっていたのだから。何かしらのエネルギーが尽きない限り、このままのような気がする。いや。そんなマイナス思考で考えてはいけない。きっとドウニカナルサ。

アタシは再び立ち上がった。この姿は世を忍ぶ仮の姿なのだから。この世界でこの格好は浮きまくりだけど『注射しちゃうぞ』とか言わなければ、これ以上のダメージを受けることはない。

心を落ち着かせて、まず全身鏡を出してくれた女王様にお礼を言おうと口を開いた。

「女王様。鏡を出して頂きありがとうございます。おかげさまで状態が理解できました。感謝致します」

これなら大丈夫だ。変身したところでアタシはアタシ。思考も問題ないし、おかしな事も口走っていない。

次に世界の王を見て口を開いた。

「世界の王。アタシは貴殿の知っている存在とは違う存在です。だからそんなパニックになっていないでください」

世界の王は、ドラゴンの姿のまま、不思議な体勢をしている。

右手を頭の上に右から左に回し、

左手を横に右にまっすぐ伸ばし、

右足を曲げて左足一本で立っている。

これって。そうだ思い出した。お約束の驚いた時のポーズである。巨大なドラゴンが、そんな事をやるなんて思ってもいなかったので、逆に驚いて片足を上げ掛けてしまった。

なぜそんな事をしているのかと聞いてみれば、原因はアタシだ。岩山の洞窟の前にパンツをはかせた世界の王の像が不思議なポーズをしていたのを覚えていたみたいだ。なので世界の王は、その記憶と現状を結びつけて。これは神聖なポーズなのかと勘違いしたみたいだ。だがアタシは宇宙人の祖先を助けた存在ではないから、神様に対する神聖なポーズなど知らない。でもこの事は面白いから内緒にしておこうと思う。

そう結論が出たのでポーズの話しは置いといて。


騒動の原因のアタシが言うのも何だけど

「それよりも、娘さんを放置しておいて良いのですか」

アタシがそう聞いてみれば、世界の王は、あからさまに『アッ』とした表情を浮かべてパニックを再発させた。

「あっちもこっちも緊急事態だ。儂はどうしたら良いのだ」

と言いながらウロウロしている世界の王を見ていたら、腹が立ってきた。

宇宙人(ドラゴン)は寿命が長いだけあって、自身の身体に流れる時間も緩やかなのだろう。

ことが起きても、一つずつゆっくり考えて結論を出してから次の事に取り組む。時間がある分、深く長く考察出来るから理解が深くなるのだろう。頭が良く見えるのは、たくさんある時間のおかげかなのかもしれない。

だから逆に二つの事が同時に起こると、考える時間が無いからパニックを起こすのかもしれない。宇宙人って言っても情けない。


そんな世界の王に腹がたったアタシは、感情のまま叱責してしまった。

「この状況で一番大事なのは娘さんの安否でしょ。さっさと行って連れ帰ってきなさい。行かないと言うなら、痛い痛いお注射しちゃうぞ」


あっと思ったがもう遅い。決め台詞と同時にウインクまでしているしまつだ。

やはり変身中は決め台詞を口走ってしまいやすい設定のようだ。

だめだ、いくらアタシはアタシであっても、こんなことを口走るアタシでは人前に出れない。


マッキーは再び受けた精神的大ダメージによって、その場に突っ伏してしまった。

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