闇魔とドラゴンと白い粉
あれから4時間後に救出してもらえたので、ひとまずホッとした。
したのだけど、こんな事になるならあのまま埋もれてミイラになってしまった方が良かったのかもしれない。
何故ならば。
「白い同胞よ。此処で会ったが100年目。逃がしはしない」
どうしてこうなった。
いや、ヨミさんが居る場所に普通に出てしまえば、こうなるのも無理はない。
小屋で会ったときに、完全にスルー出来たからすっかり頭から抜け落ちていた。なにせ、あの時は濃緑の作業着を着ていたからバレなかったけど。今は完全武装中である。トレードマークの白いマントを着ているのだからバレないはずがない。
とうぜん、誤魔化したさ「アタシはグレイだよ。ヨミさん(仮)。パンの恨みはひとまず置いといて。久し振りだね」と。
アタシの先制攻撃に、疑いつつも引け目があったのか。ヨミさんは「むむむ。パン食べてごめん」と謝って引き下がってくれたので、誤魔化せたと胸を撫で下ろしていたのだが。やってくれましたよ。あの使えないじじいめ。
「おお。マッキーも居たのか。そう言えば、ヨミが反省部屋から出てきた時に会ったのだろ。なら顔見知りだろうが、この娘はヨミと言うのじゃ。似た境遇だから仲良くしてやってくれ」
だとさ。短くまとめて、全てをバラしやがった。
お陰でヨミさんは、ハムスター(ネズミ)を見つけた猫の如く臨戦状態だ。女神さん(飼い主)から行って良し(ゴー)と言われたら飛びかかって来るに違いない。なんで飛び掛かってくるかわからないけど。なんとなくそんな感じがする。
何故かドラゴン3人組は人化している。ヨミさんは女神さんに、背後から抱き抱えられている状況。なので動けないで居る。そのまま捕まえていて欲しい。因みに世界の王は、女王様に鞭を打たれている。
それは世界の王がバラした直後に、アタシが抗議したからだ。さすがは女王様である鬼気迫るアタシの抗議に「このジジイ何言っていやがる」と気が付いた時には既に握っていた鞭を振り回し、世界の王を打ち付けていた。
「あひぃ」とか「うひゃあ」とか世界の王は言っているが、残念ながら余裕がありそうだ。鞭打ちだけではたいしたダメージではないようだ。お願いだから、余計なことは言わないように止めを差して欲しい。
でも、今はそんな事に関わっている場合ではない。
アタシがやらなくてはいけなかった事は、すでに完了している。
ヨミさんが押さえ込まれている間に逃げ出すことが先決だ。でも、アタシが逃げ出した瞬間にヨミさんを解放されたら、すぐに捕まるだろう。そうなると厄介である。
ここはまず女神さんに、暫くヨミさんを捕まえていてくれとお願いしないといけない。さてなんと言うべきか。
アタシが一瞬思考している間に、目の前で赤と青の閃光が走った。いきなり登場した赤と青の閃光に驚いた女神さんは、ヨミさんをだっこしている手を緩めてしまったようだ。簡単に赤と青の閃光がヨミさんを奪い取り。上空に舞い上がる。
赤と青の閃光は、良く見るとキリさんとレイさんである。
二人は「「ここは一旦引きましょう(こう)」」と言うと、ヨミさんの返事を待たずに、閃光のみ残して東に飛んでいってしまった。
女王様と世界の王は、女王様ゴッコに夢中だ。女神さんは抱っこしていた体勢のままで固まっている。アタシは展開に着いていけずに呆然としている。
赤と青の閃光が見えなくなったころ、最初に再起動したのは女神さんである。ドラゴンに姿を変えると、赤と青の閃光の後を追うように飛んでいった。
アタシは女神さんがドラゴンに姿を変えるときに生じた圧力を受けて地面を転がってしまっていた。一応、ちゃんと気を全身にまとっていたので、怪我はない。
女王様と世界の王は、それでも女王様ゴッコを続けている。
えっと。放置しておいて良いのですか?
その答えが聞けたのは、翌日の朝である。徹夜で声を掛け続けていたので喉が痛い。
明け方になってようやく女王様から「あら。冒険者マッキー。もう良いのか」と問われたのだが、良い悪いの問題ではなく、女神さんが赤と青の閃光にヨミさんが拐われて、女神さんが追いかけていった事を伝えた。
伝えたのだが「あの娘が、この世界の生き物にどうこうされる訳がない」と諭されて。アタシは納得してしまった。そう言えば子供だと言ってもドラゴンなのだから当たり前か。
アタシは安心して、女王様ゴッコを「邪魔してごめんなさい」と言ってから。一応、何があったか説明することにした。
そして補足的に、その赤と青の閃光は世界の王がミーヤとピィコに殺せと命じた、キリさんとレイさんであると伝えると、とたんに世界の王が慌てだした。
話しを聞けば、キリさんとレイさんは、闇魔の生物であるという。あの二人自体は世界の王が言うには大したことは無いそうだ。だがもし、闇魔の元に向かったとしたら女神さんが闇魔に侵されてしまうかもしれないと。
宇宙人なのに、何をそんなにと、思っていたら。世界の王も闇魔に侵されていると言う。
だから、世界の王は女王様と女神さんから離れて闇魔と言う病原菌に感染させないようにしていたと。
闇魔は、この世界を破壊するべく活動をしていて。このまま放置しておけば、この星をすべて侵しつくしたら次はこの星系を、星雲を、そして宇宙全体にひろまり侵し尽くすに違いないと。
……凄まじく理解が追い付かないのだけど。とにかく、治療方法がわからない限り放置して良い話しではない事は理解した。
理解したが納得行かない。なんでそんな危険なものを、アタシに試練として与えたのかと言うことだ。
問い質せば「いや、あの時は、つい、勢いで。研究に詰まっていたこともあって」と言い訳のオンパレード。
ほんとうなら、女王様に折檻をお願いしたいところだが、女神さんのことが気になるので、簡単なお仕置きをすることにした。
それは、あの白い粉である。元はあの変な生き物である。そいつを燃やしたら残った白い粉だ、ぱっと見は灰のようで害があるようには見えない。元の世界でも罰ゲームには良く使われていたではないか。世界の王よ、顔面真っ白にして反省しろと。世界の王に向かってビンから粉を一掴み取りだし、お相撲さんのように振り撒いた。
すると、白い粉をぶつけられた世界の王が、苦しみだした。何がどうなってこうなるのか、さっぱりわからないマッキーは呆然としているだけであった。




