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青い空に届けアタシの気持ち

「青い空、白い雲。今日も、いい天気だな」

アタシはハムスターハウスのベッドに寝っ転がりながら空を見ている。

何せ、それしかすることが無いからだ。世界の王が降ってきて死ななかったのは良かったけど。潰された時にハムスターハウスは地中に埋まってしまったのである。

右も左も前も後ろも、とうぜん下も、窓から見えるのは土である。

なので上を見ている。他を見ても詰まらない、なにせ上の窓だけが動くものを映し出しているからだ。

でも先程から、風景に変わりはない。のどかな風景が続いている。だが、こんなにものどかな風景の死角では、女王様の折檻が続いているのはわかる。大きな振動が絶えず発生しているからだ。

まあ。振動感知の能力がなくともわかるくらい地面が揺れている状況である。地震大国日本に済んでいたアタシからすれば、この程度の揺れと思っていたけど、ひっきりなしに続く揺れに音を上げ掛けている。この揺れはいつまで続くのだろう。空から聞こえてくる声を拾ってみると。

「そんなこと言ったって研究の続きがヘブラッ」

「あと少しだけ少しだけなんデラボジラッ」

「先っちょだけ。ほんとに先っちょだけ、それで十分だかベラニシキッ」


……世界の王もダメだね。怒っている女性に向けて言い訳なんてしても無駄だと言うことがわかっていないなんて。そんなこと、すればするほど。怒りに火がつく、火に油を注いでいるようなものだよ。


「はあ?、てめぇ何寝言言っていやがる。ワイらのことなめとるのかい。お前ら、ゆるさんぜよ」

女王様、任侠だけでなくてスケバンも混ざってますよ。

入ってくる情報は耳だけである。状況として映画をセリフだけで聞いているような物なので。情景を思い浮かべて頭の中で妄想映像を再生していた。なのでドラゴン同士で暴れているのだと理解はしているのだが。

アタシの妄想の中では、世界の王が、白衣を着たマッドサイエンテスト風で描かれていて、

女王様は、着物を着ていたり、特攻服を着ていたり、セーラー服を着ていたり忙しそうに着替えている様に描かれている。

やられる度に、世界の王は爆発するのだが、台所の黒い奴のように次の瞬間何事も無かったかのように現れる。

戦いはエンドレスなのかしら。何せ、空しか見えなくなった日から、青空の日は今日で10日目である。雨の日はない。

とっくの昔に諦めているけど、声が聞こえないから戦っていなそうな、女神さんが救出してくれることを望むのだが。これはアタシの我が儘なのだろうか。



更に10日経った。相変わらず振動は続くけど「スケさん、カクさん。こらしめてやりなさい」「「違います」」とか「余の顔を忘れたのか」とか「御用だ。御用だ」って時代劇風なものまで混ざっている。

なんだか人数が増えているような気がするけど、なんでだろう。ドラゴンが暴れているのだから割り込める生き物なんていないと思うのだが。何が起きているのだろう。

でもアタシには、空を見ている以外にすることはないし出来ない。悲しい囚われのハムスターである。

それにしても、あれから20日か、世界の王もしぶとい。と言うか、宇宙人ってどんだけ体力があると言うのだろう。

何せ、同時に女王様も昼夜問わずに折檻し続けているのだから。その体力は驚愕にあたる。そんな風に思っていたところで状況が変わったようだ。


「お父さんのバカぁ。そんなお父さんなんか大嫌いだ。顔も見たくない。マッポの手先になって、ヨーヨーぶつけてグレてやる」

色々突っ込みたい。でも女神さん、意味を理解して言っているのかしら。

女王様もそうだけど、暇潰しに日本のビデオを観すぎなのではないのかい。なんて心の中で突っ込みを入れていると、あれだけひっきりなしに続いていた振動がピタリと止まった。

アタシの妄想が正解なら、世界の王は折檻(イタミ)には耐えられたが、女神さん(ムスメ)からの大嫌い宣言を受けて、立ち直れない状況に陥ったのかもしれない。

「すまない。儂が悪かった。次回のタイミングで帰ることを約束する。なので、この星に滞在するのは、あと残り3ヶ月程じゃ。それまでは逃げも隠れもせぬ。それで一緒に帰ろうな。だからジジイだけは許してくれ。ベロチュウ父さんと呼んでくれ。お願いだ」

世界の王は、娘が好きなんだなと思える発言なのだが、如何せん名前が『ベロチュウ』なので締まらない。

『ベロチュウ父さん』だなんて、悲しいけど子供社会では一番にからかわれそうな呼び名だ。お前のかぁちゃんでーべそ。と言う、お前みたことがあるのかいと突っ込んでしまいたくなるような、からかわれ方をされそうである。

「約束だよ。ペガサス父さん」

女神さんの声が聞こえたのだが、ちょっと待て。今、ペガサス父さんと言わなかったか。そうするとアタシのリスニングミスなのか。ペガサス父さんなら格好良いかも。宇宙人め聞き取りづらい名前ばかりだからいけないのだ。宇宙人にとってペガサスが格好良い名前なのかわからないが。

そうすると、チョコさんへの依頼は世界の王探しだったってことか。

直後にペガヌスだなんて似た名前のワンコに会ってたから危なく間違えるところだった。へんなことをチョコさんに伝えなくて良かったわ。


それにしても、このハムスターハウスに閉じ込められているだけで、謎が解き明かされていくだなんて。なんて楽チンなのだろう。でも完全に蚊帳の外だから話しに加わることが出来ないのが寂しい。しかもやっぱりアタシは、この世界の脇役であったみたいだ。だって。


「ペガサス父さん。帰るときにヨミも一緒に連れて帰って良いよね。ヨミもその方が良いよね」


どうやら、地上のドラゴン同士の戦いにヨミさんは参加していたみたいだ。あの戦いの中で生き残れるだけでも凄いと思う。ハムスターが超魔王ハムスターになったとして、ドラゴン同士の戦いに加わって何かの役にたったのかわからないけどね。


何をしたのか。それは見られなかったから残念だけど置いといて。

けりが着いたのなら地面からの救出を求む。引っ張り上げてください。お願いします。アタシは連絡装置のスイッチをバシバシ叩きながら精一杯のアピールをする。


まさか。忘れていないよね?

ほんと。そんなことはないよね?


「ここから出してー。助けてー」


はたしてマッキーの叫びは、外にいる人達に届いたのだろうか。

それは青い空だけが知っている。


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