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夫婦喧嘩はマッキーも食わぬ

宇宙人(ドラゴン)が作ったハムスターハウスは堅牢だ。

人間だって、自分達が暴れても壊れない材質で物を作るのだから、とうぜん宇宙人作るものは、宇宙人が暴れても壊れる訳がない。

でもだからと言っても、近すぎはしませんか。そこの所を、もう少し考えて行動して頂きたいのですが。

ダメですか。無理ですか。その前にアタシの声なんて聞いてないですか。アタシに諦めろと、そう言うことですか。


今は真っ昼間である。お日様が高い場所から輝き照らしてくれている。だがその時、アタシの居る周辺のみ真っ暗になった。

真っ暗になった原因をアタシは見上げて諦める。

「さすがにこれは死んじゃうな」

空一面にドラゴンの身体がある。そしてそのドラゴンの身体は、ハムスターハウスごとアタシを押し潰した。

アタシは真っ暗な世界で圧迫感を全身で感じている。あんな巨大生物の下敷きになったのだから、いくらハムスターハウスが堅牢で壊れなかったとしても、衝撃だけで中の生き物は死んでしまうと思うし。現に圧迫されているのだから、ハムスターハウスが壊れたのだと思う。だとすればさすがに死んじゃうよね。

包帯を巻こうと考えたが、身体がまったく動かせなくなっている。

この場が空中なら、手足を使わず、包帯を巻く特訓の成果を見せる事が出来たのに残念だ。

あまりに大きなダメージを受けて痛覚が麻痺したのかな。痛みが無いことは単純に嬉しい。


こんなに悠長にしていられると言うことは、ほんとうにアタシが死ぬまでに少しは時間がありそうなので、なんでこうなったのか少し時間を遡って説明するね。



高速で飛行する女王様にハムスターハウスごと、運ばれていたのだけど、人の住む場所に近付いたので減速した。

音速を越えるスピードを出せば衝撃波が発生するので、地上が被害を受けないように超高空を飛んでいる。そんな超高空からでも下を見ると、セントラル王国がわかる。

アタシも何度かセントラル王国上空を飛んでいるので鑑定を使うことにより一致したので間違いない。

その後、ヨミさんが現れたクレーター、懐かしのブラン砦を経由して北に向かうと岩山が見えた。

アタシの言葉を女王様に伝えることが出来る装置で目標を伝えると。女王様はハムスターハウスをブラン砦北の大草原に降ろしてくれた。アタシはこれだけ離れていれば大丈夫だと思って安心して見守ることになった。

女王様はハムスターハウスを降ろした後、女神さんと共に岩山に向かい消えた。たぶん人型になったのだろう。何故なら、アタシが宇宙船への小さな侵入口の位置を教えていたからだ。

たぶん、今は二人とも宇宙船の中である。アタシは静かに事が終わるまで見守るだけしかできない。

暫く岩山を見ていると何かが飛び出した。それはすぐに巨大なドラゴンとなり、こちらに向かってきた。

アタシは、それを見て。全てが終わり、迎えに来てくれたのかなと呑気に思っていたのだが、岩山から更にドラゴンが2頭現れたことを見て理解した。世界の王が二人から逃げる事に成功したのだと。

すごい速度で世界の王が飛んでくる、その後を女王様と女神さんが追う。

世界の王よりも女神さんの方が若いだけあって速い。距離がすぐに詰まってきて、アタシの上空で追い抜いた。

追い抜かれた世界の王が逃げる方向を変えようと減速した瞬間を狙って、女王様が体当りをした。

体当りを受けた世界の王は、地に墜落した。この大草原に。


そこからは取っ組み合いの戦いである。とは言っても世界の王は手も足も出してはいない。一方的に叩かれているだけのようだ。

時おり「母ちゃん勘弁して」と悲痛な世界の王の声が聞こえるところを見ると。

巨大なドラゴン同士の死を掛けた戦いではなく、ただの夫婦喧嘩の様だ。

偶々なのかもしれないが、宇宙人であろうとも、カカア天下の摂理は変わらないみたいだ。

大草原は広いと言ってもキロメートル単位の生物が暴れているのだ。多少は離れていると言っても大迫力である。とても近くに感じる。

その時、女王様の一撃により、アタシの近くまで世界の王が転がってきた。

近い。近すぎる。この距離では巻き込まれてしまいますって、もう少し離れてください。

アタシのそんな思いは届かずに、女王様は世界の王の近くにまで来て。

「この糞、ろくでなし、意味の無い研究をいつまで続けているんだ。ちょっと有名になったからと言って、調子こいてるんじゃないわ」

そう言いながら、立ち上がり掛けた世界の王の顎にアッパーカットを放った。

アッパーカットを受けて世界の王が見事に宙に浮き、ハムスターハウスの上に落ちてきた。


これが見て聞いたアタシの最後の瞬間でした。死ぬ前に全てを話せて良かったです。アタシは後何秒生きていられるのかわかりません。なので意識が有る限り伝えたいと思います。

アタシの人生は短かったけど、生きた証を残すことが出来たので悔いはありません。

強いて挙げれば、後生大事に持っていたけど、あの白い粉の正体がわからなかったのが残念であるのだが。今更だよね。

って、どうでもいいようなくだらないことまで考えられるなんて、死に際の思考の加速とはすごいね。でも死ぬ間際って自分の過去が走馬灯の様に見えると……あれ?圧迫感がなくなった。しかも明るくなっている。

長々と思考できたけど、ついにお迎えが来て死んでしまったのかと思ったが、思考は続いている。不思議に思って目を開いてみたら、布みたいなフィルムみたいな物が壁に収納されていくのが見えた。


暫く思考が停止してしまっていたが、アタシは生きているようだ。

もしかして、今の布みたいな物は自動車とかに付いている、事故に遭った時に搭乗者を守るために膨らむエアーバックなのかしら。だということは。先程までの圧迫感はハムスターハウスが壊れて潰されたのでは無くて、エアーバックに包まれていたと言うことなのかしら。


予想だにしていなかった事が起こり、命は助かったのだが、生きている実感を得たよりも、いくら科学技術が発展しても衝撃吸収する装置はエアーバックなんだと言う事実に驚いているマッキーであった。


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