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いくら強くなっても変わらないこと

アタシは今、一辺が100mもある部屋の中にいる。

すごい広い大部屋である。足下はふかふかな絨毯のように柔らかであり、机に椅子に、ベッドにトイレ、台所や作業場までも完備されている。すごく豪勢な部屋だ。お金も掛からないし一人で暮らすなら拠点にしてもよいくらいだ。

でも残念な事に、外から鍵を掛けられてしまっているので出ることは出来ない。

そう、監禁されているのだ。貧弱な生き物であるハムスターに与えられる自由は箱の中だけである。なにせ箱の外は危険がいっぱいあるからだ。

大事にされればされるほどハムスターに自由はなくなるのである。

ああ。アニメのハムスターの様に再び冒険をすることは出来ないのだろうか。懐かしむのは過去の冒険の旅である。

身の安全はどこにもない、毎日が生きるか死ぬかの冒険である。

身の安全を願うと言うことは自由が無くなるものだと知っていたし、高尚にもバーン家の当主に垂れたこともある。

アタシは自由を無くした鑑賞生物と化している。外に対してやれることは、ご飯を頂戴とアピールすることだけである。

でも後方に設置された窓から見える景色は最高だ。

このいつまでも昇らない朝日。この部屋に入ってからかれこれ8時間は経つけど。お日様はオレンジ色のまま一点に固定されている。と言うのは大袈裟かもしれない。

でも僅かに横方向にしか動いていないのだ。

なんでかと聞かれれば答えは簡単である。それは今この部屋が、この星の自転速度と同じ速度で高速移動中であるからだ。ほんとうならもっと速く移動できるそうだが。

でもそんなことをしたら、アタシが死んでしまうからしないそうだ。大事に扱ってもらっているということは、ハムスターとして嬉しいことなのではあるが、引っ越しするわけでもないのに、ハムスターハウスごと持って移動しないで欲しい。環境に適応するのは大変なのだから。

って言うのは半分冗談である。でも閉じ込められて移動しているのは本当のことだ。



何があったのかは、これから説明しよう。

まず大事なのは、女神さんのメンタルは子供だと思っていたが、考え方もやはり子供であったのだ。


アタシは女神さんの目を見て話し始めることにした。交渉なのだから弱味は絶対に見せてはいけない。気合いを入れて全力全開である。

「アタシは、世界の王と名乗る、女神さんの父の居所を知っている。教える代わりに異世界干渉は止めてくれないか」


「父の居場所を知っているの(?)わかった。もうしないよ。約束するよ」

あっさり交渉終了である。気合いを入れて始めたのにあまりにもあっさりと交渉が終わってしまった。何となく虚しい。


すると「(大声で)お母さーん(!)来て(!)」といきなり叫ばれてびっくりしていると。

「はいはい、まったく何よ。用事があるのなら、足があるのだから自分が来なさい。って、あら久し振りねヨミ(?)じゃないわね。お客さん(?)」

身長2mを越えているが、女神さんを大人っぽくした雰囲気の女性が現れた。若干つり目気味で、見た感じキツそうな性格に思える。この人のデザインもヨミさんなのかしら。でもなぜか女神さんとは違い双山ではなく。とても控えめである。

控え目なそこを見て何故か、この人の名前が『バズドギュウジュウノエー』と思えてしかたがなかった。

「うん。この子は冒険者のマッキー。でね。聞いてびっくり。なんとお父さんの居場所をしっているんだって」

「なんですって(!)あの野郎。漸く尻尾を見せたか。今度は半殺しではなく全殺ししてやる(!)で居場所は聞いたのかい」

「まだだよ。一緒に聞こうと思ったから。これからなんだよ」

なんだか女神さんが、子供っぽくなった気がする。まあ。知らない人の前とは違って。母親の前となると子供は子供らしくなるのは、わかっているけど。しゃべり方まで完全に子供じゃないか。

お母さんも、アッチの人では無いのなら落ち着いて欲しい。それに全殺ししたら死んでしまうよ。

状況の推移に着いていけずに呆然としていると。矛先がこちらに向いていた。

「そうかい。なら。冒険者マッキーとやら、キリキリ吐かんかい」

えっと。宇宙人さん。どこで日本の任侠映画を見たのですか。あ。異世界干渉でテレビとビデオデッキとテープをGetしたのですね。それで見たと。それで覚えたのですね。言われなくてもわかりました。日本の映画って格好いいですよね。真似したくなりますよね。

と、ついあまりの迫力に現実逃避しかけたけど、なんとか繋ぎ止めて、交渉を続けた。

母親はハムスターには交渉権は無いとばかりの迫力であったが。話しをすれば普通の人であった。

アタシは見た目はこんなで、この世界に産まれて2〜3年だけど、元の世界では二人の子持ちでしたのよと話せば、子育て苦労話トークの開催である。詳細は省く。


話しを戻して、居場所を教える代わりに、世界の王にアタシが襲われたり食べられたりしないように守って欲しいと伝えると。「わかった」と一つ返事で約束してくれた。

その結果が、このハムスターハウスなのだ。

正式名称は『中型生物用惑星内中距離移動可能型多種族観賞用ハウス』と言うそうだ。いったいぜんたい、どう略せばハムスターハウスになるのかわからない。

『中型』で『中距離』だからチュウチュウでハムスターとかだったらアタシはたぶん暴れるよ。


このハムスターハウスは、宇宙人であるドラゴンが踏んでも潰れないという堅牢さを誇っている。

だからこの中にいる限り、世界の王が怒ったとしても問題無いらしい。

元の世界でアタシも持っていた、象が踏んでも潰れない筆箱みたいだ。


ハムスターハウスは日が昇らない速度で移動している。仮に、ここが地球であるなら、赤道上で円周約4万キロ、約24時間で自転するので、時速は1700キロである。

この星の大きさも、自転速度もわからないからなんとも言えないけど軽く音速を突破していることは間違いないないだろう。

とは言え、中距離移動型のハムスターハウス単独では、こんな速度は出せない。

この速度を出しているのは、なんと女神さんの母親がドラゴンとなりハムスターハウスごとアタシを運んでくれているからである。行き先はとうぜん世界の王の居場所だ。

因みに女神さんの母親の名前は『バズドギュウジュウノシイ』だった。アタシ的に何故か負けた気がしてならないのだが何故だろう。

まあ。そんな感想は置いといて。

ここでもやっぱり発音が違うと言われてしまい、結果的に『女王様』と呼ぶことになった。

『女王』と『女王様』では天と地ほどの差がある。いずれその理由は日の目を見ることになるだろう。

女神さんもドラゴンとなり女王様と並走して飛んでいる。なんでアタシも一緒に行くことになったのかと言うと。アタシが正確な位置を指し示すことが出来なかったからだ。宇宙からの画像をみてもさっぱりわからなかった。

なので、まずはアタシみたいな人が沢山いる場所を目指してもらっている。

そこまで行けば世界の王が潜む岩山まですぐであるからだ。


固定されていたお日様が少しずつ登り始めた。

急減速なんてされたらアタシが死んでしまうとわかってくれている女王様が少しずつ減速をはじめたのだと思われる。



後は世界の王の居る岩山まで案内すればアタシの任務は完了である。直接対決する必要はないから、何処かに降ろされるだろう。

覚醒して強くなったと自負していたが。上には上がいて、やっぱりアタシの仕事は戦闘前で終わりなんだと、今頃気が付いたマッキーであった。



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