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知らない天井……

あれ。アタシは、寝ていたのかな。それとも気を失っていたのかな。

暖かく軟らかい何かに包まれた感触に意識が浮上してくる。

この感触は、きっと布団かベッドだ。そういえばお風呂で頭を洗われていたところから記憶がない。

もしかしたら、久し振りのお風呂に湯中りしてしまったのかな。だとすると女神さんにお礼を言わなければならないな。「介抱してくれてありがとう」って。

でもその前にやらなくてはいけないことがある、なぜならば、これはチャンスだからだ。

普通、こんな状況なのだから悠長にやっていられないのがあたりまえだ。気が付いたのならば周囲をすぐに確認して迅速に対応するなりしなければ、待っているのは死なのたがらだ。そうでないと、もしかしたら次の瞬間に意識が途切れるかもしれないからだ。

でも、今ならば悠長にやっていられるはずである。都合の良いことに仰向けなのだから。

さあ。やろうか。

アタシは目を開いて。お約束の言葉を呟く。

「知らない、天井……がない!」

呟くのに失敗してしまい、つい叫んでしまった。いくら薄暗いとはいえ、アタシは夜目が効く。なので外でもない限り、天井が見えないなんてありえない。ありえないのにもかかわらず天井が見えないなんてと疑問に思っていると。

「あら。マッキー目覚めたのね。この世界の生き物は、ほんと細かく睡眠を取るよね。でも頭を洗っている最中に眠るなんてびっくりしたわよ。洗っている最中に頭をポンポンしたら気持ち良さそうな顔をしたから、ついおもしろくて何度もやってしまったといってもね。そうそう質問に答えるわよ。天井はあるわよ。明かりを灯しましょう」

女神さんが、そう言った瞬間、周囲の壁が下から上へと淡く光出す。そして500m程の高さかに来たときに、直角に曲がり推定天井が明るく輝きだした。

要するに天井が高すぎて、見えなかっただけのようだ。なんでこんなに天井が高いのかと考えれば。そういえば、世界の王はドラゴンだったと思い出した。それならば天井が高くてもしかたあるまい。

取りあえずベッドから起き上がると、薄々わかっていたがやっぱりアタシはハダカだった。

女神さんは服を着ていたから常識(?)がある人だと思っていたのだが。まあ。アタシの服は包帯だから着せることは出来なかったのだと。そしてアタシが着れるような服は、ここには無かったのだと思うことにした。

そのわりに、このベッドは人間サイズである。不思議に思いながらも。女神さんに、アタシの服の所在と、ここは何処なのか聞いてみた。

アタシの服や装備は、すぐ脇の机の上に置いてあり、そしてここはヨミさんが暫く居た部屋だと言うことであった。

アタシは肌を見せないようにベッドの中を移動して机に手を伸ばして包帯を取った。そして身に付ける。もちろん、包帯を取ったのは擬態だ。なので身に付けるのはお尻から出した新しい回復包帯である。その後、装備をし直した。ひと安心である。

ここがヨミさんの部屋であると聞いたので、話しを聞いてみると。

今から半年(5千万年)程前に、世界の王(父)の実験により産まれた生き物だと。低脳でビビりな生き物だが産まれる前の記憶を持っていて、おもしろくて可愛がっていたそうだ。発展した宇宙人からすれば人なんてペットくらいの感覚なのだろう。


そんなヨミさんが、珍しく我が儘を言いだした。何かと言えば、お風呂に入りたいと。可愛いペットからのおねだり。すっかり仲良くなっていた女神さんは、ヨミさんから話しを良く聞き、聞いたままの物を作ってあげた。

大喜びするかと思ったら、身体を震えさせて「あんたバカ?」と。

お風呂とは熱くない程度のお湯に全身を浸して身体の汚れを落とす物であり。空が見えれば露天風呂みたいで楽しいと聞いて作ったのだが。

ヨミのサイズのことを忘れていて、自分達のサイズで作ってしまったと。

実はあの大穴は、宇宙人(ドラゴン)用の風呂だったわけである。上流の川から水を得て貯めて下流に流す、排水は真空ポンプみたいなもので組み上げているらしい。水の摩擦をなくすとか、地殻の圧力や真空水分子制御を利用しているとか、専門的な言葉が出てきたが理解できないので、真空ポンプを使っていると言うことにした。

ヨミさんが入りたかったのに、入ったら最後、溺れるだけだと理解したので、隅っこにヨミさん用の小さい風呂を作ったそうだ。

ほの暗い穴の底に作られた、だだっ広い場所の隅っこにある小さなお風呂を見て、ヨミさんは「洗い場が広くて開放的だね」と誉めてくれたので女神さんは安心したそうだ。


アタシはそれを聞いて。絶対に嫌みだと思ったが口には出さなかった。知らなければ良いことなんていっぱいあるしね。


楽しそうにお湯に浸かるヨミさんを見て女神さんも一緒に入りたくなったので人化の魔法を作ったそうだ。

基本ボディのデザインはヨミさんである。始めは同じ様な体型にしたのだが、女神さんの方が年上でしょと言われてあちこち変更させられたそうだ。

言っている意味は良くわからなかったが、どうせなら『ボンキュッボン』にしようと言うことで、この身体になったらしい。

確かに『ボンキュッボン』である。『ドカンキュッボン』かもしれないが。

そんなこんなで、一緒にお風呂に入ることが出来て、それから楽しい日々が続いたそうだ。


少し前に、この星にも知的生命体が現れたと聞いてヨミさんは、ちょっと見に行って来ると出掛けた、原人だ、石斧だと喜んで帰ってきて、また出掛けてを繰り返していた。何が嬉しいのかわからなかったが、ヨミさんが楽しそうだったからよしとしていた。


ここで話しは変わるが。

世界の王は隠れながらも定期的に、この地に生きる動物を使い、研究の成果を送ってきていたのだが、ヨミさん以外、ろくな物を送ってこない母のイライラが頂点に達したことを知ったのか。ある時を境に成果が届かなくなっていた。

ただ待つことに腹がたち、業を煮やした母は、あたりをつけて、探しにいき、一度見つけることに成功した。

母の折檻によってズタボロの父は半死半生状態。母と二人で引きずって連れ帰ろうと思っていたのだが、隙をつかれて逃げられてしまった。

それからは完全に行方不明である。

話しを戻して、ヨミさんが、この星のあちこちによく出掛けることに目をつけた女神さんの母は、どうせ出掛けるならついでに世界の王(父)を探して来て欲しいと依頼した。

クータンにより運ばれてきた世界地図に調査済みを示す塗り絵によって、少しずつ場所が特定されてきていたが、ある時を境に塗り絵が届かなくなった。

女神さんにとっては半年くらいであっても、この星の生き物にとっては、5千万年なのだ、ヨミさんは長生きした方であると考え、可愛がってはいたけど自然の摂理であるからしかたがないと諦めた。

そしてここ最近は母の手伝いをしていたのだが、時間が取れたのでヨミさんの冥福を祈ろうと、ヨミさんが好きだったお風呂場に来てみたら、服の色は違うが気配も背格好も同じ生き物がいる。

ヨミさんが生きて帰ってきたのだと思い。感極まって抱きつこうとしたのが、お風呂場での話しであると言うことであった。


気配や背格好、服は色違い。もしかして、マッキーはヨミの子供とか孫かと聞かれてしまい、首を横に振って違うと答えるしかないマッキーであった。



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