結論 魔法少女は子供の夢
「クータン。ここまで乗せてくれてありがとね」
アタシは笑顔でクータンの背中から目の前の地面に飛び移った。
この場所はクータンが接岸しても大丈夫なくらい垂直に深いみたいだ。
こんなに都合の良い場所がよくあるなと思ったが、あるのだからしかたがない。そんなことは考えても無駄なので置いといて。クータンを見ると。
クータンはアタシを無事に運び終えて嬉しそうだ。なにせ「安全に確実に丁寧に今日も配達完了である。これからも世界の王印のクミピィ宅配便を宜しくなのである」とホントに嬉しそうに話していたからだ。
くーたんは、やっぱり運送業の人だ、それは間違いないだろう。
だけど『クミピィ宅配便』ってなんのことだろう。アタシは疑問に思ったので聞いてみた。すると。
『大海の王クータン』『大地の王ミーヤ』『大空の王ピィコ』それぞれ一文字ずつ取って『クミピィ宅配便』なのだそうだ。因みに元締めは世界の王。
と言うことは、世界の王やミーヤもピィコも運送業の人なのか。これは良いネタだと思って話しを続けて貰った。
このごろ依頼は無いのだが、この場所とあっちの場所までの海上輸送はクータンがして、あっちの場所からはミーヤとピィコが陸上輸送をしていると言っている。取り扱い品目は多岐に渡り、生き物から道具までなんでも運んだことがあるそうだ。
そう言えばなんで王と名のっているのか聞けば。世界の王の元で荷物を、得意の分野で運んでいるので、それで王と名のっていると言うことであった。
と言うことは『大海の王』『大地の王』『大空の王』とは、敬称では無くて自称ってことか。
そう考えると王とは言っているが、クータンは尊大だけどのんびりな性格だし、ピィコは高ピーっぽいけど、憎めない性格だし、ミーヤは……。ミーヤは王の貫禄を出していたか。部下もたくさん居そうなことを匂わしていたし。
でも自称なのか。
哺乳類と鳥類が混ざっているからまとめづらいので仮に3王としておくかな。
3王(仮)は、昔は知らないが今は、それぞれが王と呼べるくらい力がある。だから3王(仮)の起源は、たとえ世界の王の運送屋であっても、今の実力ならば王と名のっていて問題はないか。アタシはそう自己完結させた。
その後、雑談してからクータンと別れることになった。
別れた後のクータンは凄かった、アタシを運んでくれていた速度なんて目じゃないのである。って感じであっという間に視界から消え去ったからだ。
アタシは、クータンとの別れを惜しむ手を振ることも出来ずに、しばらくの間、片手を挙げたまま立ち尽くしてしまった。
精神の再構築に時間が掛かったが、アタシは気を取り直して、クータンに教えて貰った通りに川沿いを上流へと進む。
そこに目的地であるアノ場所があると聞いていたからだ。
アタシは振動感知を使い、最大限に警戒しながら慎重に足を進めた。
何故ならば、クータンはクジラである。なので島の中にどんな生物がいるのか知らなかったからだ。だが何度も大きな黒い鳥が飛んでいるところをを見掛けたことがあると言う。
クータンが大きな鳥と表現するのだから、とんでもなく大きな鳥なのだろう。出会ってしまったら食べられてしまうかもしれない。
なので、ちょっとくらいなら大丈夫だろうと、上空偵察したくなる自分を抑えて歩いているのである。
そう言えば、あれだけアタシの感情を振り回し悩ませていた超稀少不破壊感応金属は、どれだけ感情を込めて念じても変身どころか形を変えることも無かった。
見た目は子供でも、精神がアラフォーでは、発動しないのではなかろうか。子供の頃の夢が叶うと、あれだけドキドキわくわくさせておいて『あなたは大人だから変身できませんよ』だなんて、悲しい現実を突き付けられた気分である。
もしこれが、子供特有の爆発的な感情がキーとなり発動するタイプのアイテムなのであるならば、アタシは大人だから諦めよう。と自分を納得させようとしていたら、悲しくなってしまった。なので悪足掻きかもしれないが、もしかしたらピンチに追い込まれれば大人でも発動するかもしれないと考えて、普通にブローチとして使いマントに留めておいた。
ピンチに追い込まれたくはないけどね。
警戒しながら進むこと1時間。無警戒なら海から30分でつく視界の広い場所にたどり着いた時に、目前に巨大な建造物があることに気が付いた。
いや。何かあることは実は海にいる時から知っていたのだが、あまりの巨大さに普通に山があるのだと思いこんでいた。だけど目前にまで近付いたことにより詳細がわかったので、それがただの山では無いと気付いたのである。
いくら岩や土を上から被せて山のようにカモフラージュしていると言っても、これはどう考えても宇宙船である。
だってこの巨大な山を地面で支えているのは一本の棒だよ。今のアタシだから落ち着いて見ていられるけど。この世界に来た頃に、こんな訳のわからない物を見つけたならば「なんだ天空に浮かぶ島が休憩しているだけか」と、スルーしていたに違いない。
そんなの当然でしょ。訳のわからない物には訳のわからない存在がセットでもれなく付いてくるものなのだから。
スルーしたらその後は逃げの一手である。そして二度と近寄らないし見た記憶を封印する。もしかしたら新天地を求めて、すぐに旅立ったかもしれない。
でも、この世界のこの星には宇宙人が居ることがわかっている。だからアレは間違いなく宇宙船だ。
でも宇宙船だとわかったからといっても。アタシはいったいどうしたら良いのさ。
巨大な山のような宇宙船とおぼしき物の前で呆然としているマッキーであった。




