超稀少不破壊感応金属
大空を見あげると。スイスイとカモメが飛んでいる。
カモメが飛んでいるということは、大地が近いということだ。なので前方を見れば、遠くに大陸が見えている。もしかしたらただの大きな島かもしれないけれど。
大海の王クータンが、そこに向かって真っ直ぐ進むところを見ると。世界の王が指示した目的地であるアノ場所とは、この島だか大陸なのであろう。
でもたとえ見えてきたと言っても、後1日くらいは掛かるので、クータンの背中に貼り付けた簡易テントの中で今日は1日くつろぐことにした。
治療も全て終えて、クータンは1万年振りに味わう体調の良さに嬉しさを隠しきれないのか、頻繁に塩水を吹き出している。その塩水をかぶらないようにするためでもあるが、日焼け防止の為でもある。
エルフの集落を出たのは、日焼けしたくないと言うのも理由のひとつである。でも純粋なお日様で焼いてしまったら意味がない。
このテントはオール蜘蛛糸製だから白い。なので紫外線をよく弾くことを期待出来る。とは言っても完全に防ぐことは出来ないのはわかっているので、テントの中でもマントは脱げないのであるが。
そんなテントの中でくつろぎながらも、金色の物体を鑑定している。何度かやっているが情報はただひとつしかわからない。使いこなせばきっとアタシの力になる、でも使うのは怖い。どうしよう。
それは、先日のパニックが落ち着いた翌日、再びクータンにお腹を見せて貰った時に見つけることが出来た物である。
なぜ翌日になったのか。前日の後半の記憶がアタシに残っていない。そんな風に記憶が飛ぶなんて完全記憶も当てにならないものである。
クータンに聞いても「記憶にないならば幸いである。思い出すのはやめて欲しいのである」と、ほっとした感じで言うだけであった。
それを聞いたアタシも、何故かクータンが言うように思い出したくない気持ちでいっぱいになったので、その事は気にしないことにした。
たとえ、クータンの周りにたくさんの魚が集まり、何か得体の知れないものを争うように食べていたとしても、世の中には思い出してはいけないことはたくさんあるのだから。これもひとつの例なのであろう。
話しを戻して。
クータンのお腹に刺さっていたものは、金色をした杖であった。話しを引っ張った割りに大した物では無くてがっかりだと思うが。ここからが本題である。
この杖。刺さって出来ていたイボに包帯を巻いたら他の武器同様、抜け落ちたのだが。抜け落ちたその瞬間に光輝き、服に付ける装飾品であるブローチになったのだ。
その変化を見て形状が変わる物質なんて知らないと思ったのだが、その時に頭の中のページがめくられて知らない記憶が呼び出された。
その記憶は、世界の王から授かった物作りの知識であった。そこには、超稀少不破壊感応金属と記載されていた。
超稀少不破壊感応金属は感応金属と命名されているように、持つ者の感情によって姿形を変える金属であると記載されている。
感情によるなんて、すごくファンタジーっぽい気がしたが、良く考えてみると、元の世界で漫画やアニメに出てくる、魔法少女が使っている金属のような気がするのは気のせいか。
普段は目立たないと言いながらも、やたらと目立つ可愛いブローチが、少女の強い想いにより変身すると、魔法のステッキや杖に変わり戦闘終了と共に変身も解けてブローチに戻る。
考えれば考えるほど、このブローチの元の持ち主は魔法少女に憧れた少女であると思えてしまうのはアタシの偏見か。
それにしても不破壊金属なのに何故ブローチになっているのだろうか。こう言う設定の物を見るといつも疑問に思ってしまうのだが、今回は答えが書いてあるので、すっきりである。
『超稀少不破壊感応金属は始めから指輪や腕輪、ブローチ等の装飾品の形で見付かる』と書いてある。
要するに、何億年も生きる宇宙人の知識でさえもわからないと言うことだ。アタシがいくら考えても無駄だとわかりすっきりである。
テントの中でブローチを見ながら鑑定しても超稀少不破壊感応金属のブローチとしかわからない。
アタシは頭の中でメトロノームの様に、実験『する』『しない』を繰り返し考えている。
世界の王の知識を裏返すと超稀少不破壊感応金属は、誰の手によって、何の為に作られた物かわからないのである。
感情によって形を変えると書いてあるが、杖にしかならないのだろうか。もしかしたら、物凄く重たい大剣となりアタシが支えきれなくて落としてしまい、クータンを刺し貫いてしまうかもしれない。流石にそんなことはしたくないのでクータンの背中では実験はしない。それは決定事項である。
もし、そんな形状の変化だけなら、島だか大陸に着いたときに実験すれば良い。最悪、そんな重たい大剣となり、アタシが落としてしまっても、伝説の剣であるエクスカリバーの様に次代の勇者の手によって引き抜かれるのを待つ存在として放置すれば良い。
問題は、感情によって形状を変えると書いてあるが、元の持ち主である魔法少女の始めに込めた感情だけで杖の形状を保ち。クータンに刺さっていたのであろうか。この形状を維持するためには、他にも何かを消費しなければならないのではなかろうか。そのあたりがまったくわからない。
子供用の漫画やアニメでさえ、始めは主人公である子供でさえ、変身アイテムは得体の知れない物と警戒するくらいである。だから魔法少女の始まりは殆どの場合、可愛らしいサポートキャラが現れて、ピンチを乗りきるためだと、少女を追い込んで兎に角使えと強迫して変身アイテムを使わせるのである。
その結果ピンチを乗りきる事が出来て『私凄い。これが有れば無敵』と、その後常用していくことになる。
でも当人もサポートキャラも何を犠牲に(消費)して変身して力を得たか曖昧にしか触れない。
と、つい屁理屈を並べてしまった。考えに沈み込むとアラフォーは屁理屈を並べたくなるのが悪いところだと反省する。
アタシは最近子供のフリが板に付きすぎて、行動が子供っぽくなってきてしまっているが、アラフォーだ。
要するにアラフォーは大人だからゴチャゴチャ考えてしまうのだけど。
デメリットがわからないのに使えないと言う大人の考えと、
魔法少女になってみたいと言う子供の考えとで、
板挟みになっているのである。
ほんと。どうしようかな。
世界の王から授かった記憶には、何処にも変身出来るなんて書いていない。それなのに魔法の杖なのだからと思い込んでしまい、変身できると妄想しているマッキーであった。




