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大海原の孤島

次の目的地としていた島は、長辺は1キロ短辺は300m程の細長い形状をしている。残念ながら草木は一本もない。だけど休憩と、次の目的地を探すための足場にさえなれば細長かろうが星形だろうがどうでもよい。そんな思いもあり、見た目寂しくとも島に着地したのだが、すぐに違和感を感じた。

なんというか。すごく硬いのに柔らかいという、摩訶不思議な感じがしたからである。

しかも振動感知により未知の振動を感じて、頭の中では警報が鳴り響いている。

休憩するために降りたのだが、とてもでは無いが休憩なんて望み得る状況では無さそうだ。

これはとうぜん、アレであろう。でもアレならば悪さをしなければ大丈夫な可能性もある。

だが問題は残っている。実はこれ、移動しているのである。都合が良いことなのかわからないが、西に向かって移動してくれているのだ。

ここまで言えば理解してくれているよね。でもあえて言うね。

ファンタジー世界からは外れるけど海洋系冒険小説出没頻度トップ10があれば必ず上位に食い込むであろう。

島のように大きなクジラだ。

だって鼻があるもの。

時折海水を鼻から吹き上げながらこのクジラは速度を徐々にあげて西に向かって進む。波を切り裂き進む速度は驚きというよりおもしろい。まるで絶叫マシンのようだ。ノッタコトナイケド。

時折左右に激しく揺れたりしているがアタシには余裕のよっ○ゃんいかである。

そんなクジラにシートベルトもなく乗っていられるのは何故か?そんなの蜘蛛の能力のおかげである。

四つん這いになって身体を支えているので、この上も無く恥ずかしい体勢だが。両手両足でしっかり掴めば、この程度の揺れで滑り落ちることはない。例え急停止されても問題ない。それくらい吸着力には自信がある。でも念のため命綱代わりにベタベタ糸をクジラの背中に付けてあるから振り落とされても安心である。


そんなクジラの背中に乗って海を旅するファンタジー的な出来事であったが、お日様が西の空に消えていったところで、唐突にグジラが速度を落とした。残念。ここ迄のようだ。

でもここまで運んでくれたクジラ君に、感謝を伝えなければと思い口を開きかけたら。

「よくぞ耐えきったのである。勝負は俺様の負けである。マッキーよ」

えっ。勝負?負け?いったいなんのこと?ってなんでアタシの名前を知っているのよ。それよりこの声はいったい何処から聞こえてきたの?

突然聞こえてきた小さい声にアタシは驚きで四つん這いのまま何も言えないでいると。

「なんだ喋れないのであるか」と再び声がしたので、よくわからないけど相手の話しに乗っかってみた。

「聞こえています。はい。アタシの勝ちですよね」

と返事をした。すると。

「一言も喋らないから俺様の独りよがりかと思ったあるぞ」

と、足下から、いや正確には手足から伝わる振動が鼓膜を揺らすことにより声と認識出来るみたいだ。微弱な振動の為、声は小さくしか聞こえない。

もしかしたら、このクジラに着地した時に話しかけられていたのかもしれない。こんなに小さい声では意識して聞かなければ波の音に消されてしまうって。

「まあ。それは良いである。勝負の前にも言ったが、世界の王から真っ白の子供が来たらアノ場所に連れていってやってくれと言われていたのである。だが俺様は荷物運びではないのである。大海の王クータンである。ただの荷物運びにはならないのである。だから勝負を挑んだのである。日が沈むまで俺様の背から落ちなければアノ場所に連れていくと。今までに何度か背に乗せたが耐えきったものは、俺様の背中に傷を残した奴等だけである。お前は俺様の背中に傷を付けずに耐えきった初めての存在なのである。約束は守ろう。そして安全に確実に丁寧に連れていってやる。俺様は大海の王クータンである。ゆっくりしているがよいのである」

伝わる小さな振動を聞き取るのが大変で、長台詞を言わせてしまった。しかも名前を2回も言っているし。

突っ込みどころが満載だが、まずは。

「大海の王クータン。アノ場所にまで連れていって下さい。お願い致します」

と、アノ場所が何処だかわからないが丁寧にお願いしてみた。

「お前、いやマッキーは丁寧である。感謝の気持ちが伝わるのである。俺様の名前は大海の王クータンである。任せておけ安全に確実に丁寧に連れていってやる」


このクジラ。いや。大海の王クータンは完全に海の運び屋としてしつけられてるに違いない。名前を連呼する理由はわからないが『安全に確実に丁寧に』と繰り返している所なんて完全に運送業の人である。

それは置いといて。世界の王からの頼みだと言っていた。そう言えば他の王達も世界の王からの指示で、正確には違うがアタシを探していたと言っていた事を思い出す。念話か、それとも魔法通信器でも持っているのかしら。それにしてもアタシがここに来ると良くわかったものである。おかげで助かったけど、なんとなく世界の王の手のひらの上であることに不満を感じた。


そんな気分を変えようと別のことを考えた。この大海の王クータン。以前出会った、大空の王ピィコ。大地の王ミーヤ。

共通的な事を考えるとネーミングセンスが無いとわかる。まるで子供が付けた名前であるような。


そう言えばつい最近、ネーミングセンスの無い5千万歳の子供にあったばかりだったけど。まさかね。


再び静かに移動を始めた大海の王クータンの背中の上で、思考にふけるマッキーであった。



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