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飛行実験。大空はアタシの舞台である

アタシは今、高度300m程の高さで快適な空の旅をしている。とは言っても飛行機に乗っているわけではないので気を使った自力飛行の旅である。

障害物もなければ、嵐を呼ぶような雲も見当たらない。青い空、白い雲、何処までも続いている。

そんな快適な旅には違いはないけど。実は非常にピンチでもある。なにせ。見える範囲に大地がないのだ。

そう、ここは海の上。前方は当然として、右を見ても左を見ても海、海、海である。


セントラル王国の南の森にある小屋から西に向かって飛び出したアタシはどれくらいの飛行性能があるのか、燃料である気がどれくらい持つのか、実験しながらの飛行をしていた。


結論から言おう。

良くわからなかった。


人間はそもそも空を飛ぶ生き物ではない。測定器等がなければ、どれくらいの速度で飛んでいたのか、どっちに向かって飛んでいるのか、どれだけ高く上がれたのか、さっぱりわからないのである。

だから、かなり速く飛べたし。かなり高くまで上がれたし。と、しかわからない。

鑑定では高度500mまではわかるが、それ以上の高さになるとわからなくなる。

この500mとは、世界の王が住んでいる岩山の高さである。何度も自力で登ったので経験により鑑定出来る様になったのである。

ただしこの数値は、元の世界での経験則による数値なので、この世界での基本の数値とは違う可能性が高い。

何しろ1mとは元の世界で言う地球1周分の距離である4万キロの4000万分の1であるからだ。

この世界も1周4万キロならば同じだが、違うと考えるのが普通だと思う。

でも、魔王様ことヨミさんが教えたのならば、この世界の1周の長さなど考えずに両腕を伸ばして「これくらい」とでもやっていそうである。

それならば基準は同じだけど、きっと科学技術が進歩したおりには矛盾が生じるに違いあるまい。

まあ。どうでもいいことではあるが。

話しを戻して。アタシは飛行と言えば旅客機を想像したので雲の上まで上がって飛ぼうとした。

雲海を下に見ながら飛ぶなんて、わくわくドキドキで心が踊るよね。

実行したがすぐに高度を下げることになった。

雲の上だから多分2000mくらいまで上がれば当然気温が下がる。その中をさらに高速に移動すれば。

いくら気をまとっているといっても寒いのである。長時間の飛行には耐えられなかった。

1000m上がれば6〜10℃気温が下がるのだから、地表で25℃だとしても2000m上空は5〜10℃くらいだ。寒くて当たり前である。

気を厚くまとうことにより風の抵抗を防ぐ事が出来るので一時的なら防熱防寒は出来るが、人間は呼吸しなければならないので、穴が出来てしまう。そこから熱を奪われてしまうと言う事がわかったのは、今後の糧になるだろう。

鼻がツーンとして口がカピカピになったのは些細な犠牲である。

そんな訳で高度300mくらいが巡行するのに良い高さだとわかった。

この高さなら、居ないことは無いけど鳥が飛ぶ高さよりも高いので安全に飛ぶことが出来るからだ。

速度に関しては鑑定してもわからないから省いて。方角に関しては途中で寄った岩山で土魔法を使い方位磁石を作ることによって進行方向を間違えることは無くなったが緯度・経度がわからない。かろうじて北半球である事がわかる程度である。

もしかしたらアタシの新しい旅の最大の敵はこれかもしれない。

気がついたら1周していたとかになりかねないからだ。1周して元の場所に戻れれば良いが、最悪の場合2周3周としてしまうかもしれない。

そうなればただの迷子である。空飛ぶ迷子の冒険者。そんなことになったらと思うと悲しくて涙が出そうだ。

そんな事にならないように都度鑑定を使い地形を把握している。2周はしても3周はするまい。


飛行する上で重要な燃料である気の消費量は、当たり前だが速度を上げることにより爆発的に増えることがわかった。

頑張れば音速を越えられそうな気がして実験するが無理だった。マントは風の抵抗を受けると思って影魔法にしまって。生身でやってみたのだが、加速の途中でハチマキが光って消えたのである。慌てて加速をやめたが、遅かったようだ。次の瞬間、包帯水着も光って消えた。と言うことは。


世界の王に見られてしまったヌーディストマウンテンに引き続き、次はエアヌードである。籠手とすね当てだけが残っているのだが、大事なところはどこも隠れていない。

知り合いのいない場所での一人旅である。誰にも見られていないだけましと思うことにした。もう二度とスピードチャレンジはするまいと心に誓いながら、地表に降りて包帯を巻き直した。

再びマントを着て無理のない速度で飛行することにした。

無理のない速度とは日中飛んで夕暮れ時にも、気をある程度残していられる速度である。以前の一人旅同様、夜間の移動はしない。そこは徹底していた。

空の旅も一週間が過ぎて、大陸の端に来たようだ。180度の大海原である。海と言えば白い砂浜で海水浴。包帯水着着用済みであるからには、休憩がてら砂浜で遊びたいところだが。

海こそ危険生物、巨大生物の宝庫であると考えているので、遊びなんて怖くて出来ない。

遠くに島が見える。取り敢えず、あそこまで行ってみよう。そう考えて到着した島で休憩した。

この島は砂浜に囲まれた小さな島である。200m程の山のような丘のような出っ張りがある。びっしり緑に覆われているところをみると、少なくとも活火山ではないようだ。自然災害に襲われないと言うことは安心である。ゆっくり休憩をとり翌朝、垂直ジャンプを行い先の状況を確認する。

大海原を当てもなくさ迷うなんて自殺行為である。かなり高く上がったところでかなり小さいが黒い島陰が見えた。他には海しかない。あそこなら昼過ぎには到着できそうだ。

アタシは黒い島陰に方向を定めて斜めに落下しながら次の目的地に向かった。

高高度では寒かったが海面付近は暖かい。高度300m付近を保って快適な空の旅をしていたのだが、おかしいことにいつまで飛んでも島が見えてこないのである。

上空からだったから目測をあやまったのかもしれないが、位置からして、すでに見えていてもおかしくないはずだ。

疑問を感じながらも飛行を続けたが、昼過ぎになっても島が見えないことにより決断を迫まれた。

朝出発した島に戻るか、更に進むかだ。

普通に考えれば戻ることを選択するアタシであるが、朝出発した島の上空から見た範囲では、黒い島しか無かったのである。

そうなると大陸まで戻ってから大きく北か南に進み、新たに島を探さなければならない。

それはそれでも良いのだが、せっかくここまで来たのだから黒い島陰をもう少し探そうと、南を向いた時に、黒い島が見えた。しかもわりと近い距離に。

こんなに近い距離の島を見落とすなんてアタシの目は節穴かって。


自分自身に突っ込みを入れながら島に向かうマッキーであった。


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