王都再び
神様こと魔王様の印を確認したあとに、最長老さんに報告した。
最長老さんが賭けた通り、あの印は飾りで周りに配置してある魔石は日焼けを促進するものであると。
『光紫外線』と読めた時につい視線を外したが、常時放出している訳では無いことがわかったので良く見てみると。
『光紫外線一日三十分点灯』と描かれていた。紫外線を浴び続けると皮膚ガンになる可能性があるから、その辺は考慮したみたいだ。
アタシがそう報告したあと、外出禁止令は解除された。それで集落の中を歩いている人が居なかったのね。
最長老さんに一応アドバイスらしき事を言っておいた。
神様から授かった印を外に置きっぱなしにするのではなくて、建物を造って魔道具とする方が良いと。
そうすれば黒くなりたい者だけが毎日来れば黒くなれる。でも気を付けなければならない事が一つある。
この印は神様から授かった物ではあるが特別なものではない、ただの道具だと徹底すること。
そうでないと、白いエルフは神様に祈りを捧げない者。黒いエルフは神様に祈りを捧げる身心高き者だと主張が起こり内部分裂する恐れがあるからだ。
そこまでアドバイスすれば後は丸投げである。エルフはどちらを選択するかしら。
選択ついでに、最長老さんに新エルフの魔術を教えた。
キーコマンドによりパワーアップして、魔力を止めれば解除できるが、筋肉痛に襲われると言う代物である。
デメリットは大きいが、通常時は感情表現をすることが出来るという事はエルフの未来にとって喜ばしいことではないか。
アタシはそう伝えたが、これもエルフに丸投げである。
選択肢があると言うことは未来があると言うことである。
アタシは最長老さんに、旅立ちを伝えた。1ヶ月振りに現れたと思ったら、そのまま旅立つなんて急すぎると思うかも知れないが、ここにいるとヨミさんに遭遇してしまいそうな気がする。
なのですぐに旅立ちたかったがステラさんと、モデムさんの二人が来るまで待てと言うことになった。
暫く待つと、二人が現れた。なんと小麦色である。これではブラウンエルフである。健康的に見えるが中途半端感がぬぐえない。
「超マッキー。マジ旅立ち。マジ。マジ。マジヤバ。マジあり得ない。お腰につけたチョコレート一つ私に下さいな」
ステラさんはチョコレートが欲しいらしい。
でもあげません。
「超ステラ。アンタばか。マジうけ。アタシよりチョコレートが欲しいなんて。あげません。あげません。これから長い旅に出るので着いて来てもあげません」
ステラさんは沈黙した。
代わってモデムさんが話し出した。
「超マッキー。マジ涙目。超ヤバ。ちょべりば。
モデムさんはの感情表現は、たしかに悲しそうに感じた。純粋に悲しんでくれていると思うと、もらい泣きしそうだ。
「もう、あの幸せな気分になれる食べ物が食べられなくなるなんて、なんて日だ」
訂正。モデムさんもステラさんと同じらしい。アタシは最長老さんに冷たい視線を送る。途端にそっぽを向いた。やれやれである。
なんだかおかしな感じがしたが、仕方がないかと思い万能薬10個を置き土産に渡した。
エルフの寿命は長い。そのうちチョコさんが広めるだろうからそれまで我慢しなさい。とまでは言わなかったが、匂わせるような事は教えてあげた。
なのでチョコレートはあげません。
エルフの未来に幸あれ。
アタシはエルフの集落を後にしてセントラル王国を目指して飛行中である。
用件は二つ。
一つは、ミルクの入手である。
チョコレートを作るためには必須の材料だからだ。エルフの集落にミルクを飲む習慣があれば置き土産として作り挙げることも出来たのに色々な意味で残念である。
もう一つは、すっかり忘れていたからもしかしたら勿体無いことになっている可能性もある。
登録時に言われていた生存証明として年に一度、商人ギルドでお金を下ろさなければならなかったのである。
王都を出てから二年は経っていないが一年半くらいは経っていると思う。
サクラの花びらを待つ間に一度行けば良かったのにと今更ながら思っても後の祭りである。
王都が見えてきたところで地面に降りて、ここからは歩きで向かう。
王都の壁の外は変わらず賑やかである。と言ってもあの時は馬車で駆け抜けたからじっくり見ることは出来なかったのだが。
でも賑やかであると言うことは良いことである。王様がしっかり行政しているという証拠であるからだ。
特に問題なく正門にたどり着いたので、門兵さんにギルドカードを提示して、王都内での用向きを伝えた。
アタシのギルドカードは商人&冒険者である。
商人ギルドに用事があると言うのは何の疑いもなく通ったのだが、一応と前置きされて。
「そこまで真っ白な服装をしているから間違いはないと思うが。なにせ奴等は白を嫌うからな。マッキーさんは闇教の信者ではないと誓えるか」
どうやら、闇教徒は入都禁止になってるみたいだ。まあ、あれだけ暴れれば、こうなることは当然だろう。
バーン家に襲撃していた真っ黒集団がいた事を思い出した。
アタシは闇教では無いので
「はい。誓います。アタシは闇教の信者ではありません。真っ黒の人達はしつこいから嫌いです」
と片手をあげて宣誓した。
「いや、そこまでしてもらわなくても……」
門兵さんは恥ずかしそうである。アタシもやったあとに恥ずかしくなってしまった。
棒読みエルフ相手に話すときに、つい身振り手振りをしていたから、その癖が出てしまったようだ。
でもコギャル語が出なかったのは本当に良かった。思わず胸を撫で下ろしたマッキーであった。




