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勝負はウエスタン式が格好いいよね

結局筋肉痛に、たいした対処はできなかった。

エルフの魔術は回復や治療をプラス条件にしても発動さえしなかったからである。

もしかしたらマイナス条件を満たしていないだけなのかもしれないけど。

因みに筋肉痛で動けなくなっても『せたっぷごー』すれば動けるようになるがパワーアップまでは望めない。普通に動けるだけであった。

あと『せたっぷごー』の間もパワーアップ分の力を使わなければ筋肉痛にはならないこともわかった。

結論として筋肉痛に関しては回復薬とか聖水とか別の治療方法で対処してもらうしかなさそうだ。

とは言っても、エルフならその辺りのアイテムを持っていそうだが、ペガヌスには回復の手段が無さそうである。

怪我したらどうするのか聞いたら『舐めて治す』と胸を張って言われてしまった。聞くだけ無駄だったようである。

こうなれば、ペガヌスが自身で回復できるように特訓である。アタシも回復包帯があることですっかり忘れていたのだが、効果は弱いが属性魔法には回復魔法がある。本には応急処置程度の事しか出来ないとあったが、ものは考えようで筋肉痛の応急処置が出来れば良いのである。

この際だからアタシも修得するために、一緒に特訓した。

火の魔法は聖なる火で傷口を焼くことにより出血を止める(速効)。

風の魔法は聖なる風で傷口を包むことにより化膿を止める(速効)。

土の魔法は聖なる土で傷口を塞ぐことにより出血を止めて治りを早める(遅効)。

水の魔法は聖なる水で傷口を洗うことにより化膿を止めて治りを早める(遅効)。

鑑定スキルで読んだ本の記憶のページをめくり、回復魔法の効果はわかったが、やり方がどこにも書いていなかった。

そう言えば、普通の人間には魔法は、ほとんど使えなかったのだったっけ。

ブラン砦でお世話になった『青い閃光』パーティのキャサリンさんやジェニファーさんも魔法を使うと1日動けなくなると言っていたのだよね。

そう言えばアランさんもケニーさんも元気にしているかな……

って感傷に浸っていても意味がないか。

魔法、魔法っと。

はっきりとやり方がわからなくても経験則から、何となく方法が推測できる。

回復する方法を思い描いて魔法を使えばよい。言葉にすれば簡単だが実践は苦労しそうだ。正解を探す訓練と言う名の実験をペガヌスと一緒に行った。

意外でも何でもないが、アタシは筋肉痛を回復する魔法を簡単に習得することが出来た。聖の魔法が効果を発揮したからである。

自分自身に対しても効果があるので肉体疲労の回復には困らなくなったが、アタシの魔法は相変わらずである。

ペガヌスを回復させるためには、お尻を向けなければならない。

お尻が触れていなくても回復できるだけまだましだが、手当てならぬお尻当てである。

魔法で他人を回復させるのは絶望的である。

「これはひどい怪我だね。すぐに治療するからアタシのお尻を触ってね」

いったいどんな痴女を演じなければならないのだろう。

それならいくら不思議がられても回復包帯の方がよっぽどましである。

自分の魔法に改めて落ち込みはしても、ペガヌスにはそんな縛りはないはずだ。引き続き特訓を行う。

まずは『聖』魔法のレクチャーから始めることにした。

聖の概念を覚えたら次に覚えるのは治療回復の概念である。血や肉、骨、内臓、それぞれがどこにあるのか肉食獣であるペガヌスは知ってはいたが何の為にあるのかまでは知らない。

血や肉の役割に関しては理解してくれたが、骨や内臓は食べると美味しい所と食べてはいけない所としか理解してもらえなかった。

結果ペガヌスが疲労回復魔法を覚えるまでに1ヶ月の期間を要した。

治療関連はスリ傷や、小さな切り傷などの外傷のみ回復出来るようになった。

治療魔法習得の切っ掛けが体毛が生えてくるように皮膚も体内から生えてくると教えたらうまく出来るようになったのである。治療魔法で体毛が生えることに気がついたペガヌスは魔力の限界まで絞り出して訓練したので今では元の剛毛である。

せっかくのコスプレワンコ状態がもったいなかった。

でもそのおかげで、聖の回復魔法も自然回復を促進するだけの効果しかないことがわかった。

ついでに効果が目に見えてわかるレベルに回復するには魔力量が多くないと駄目だということもわかった。ほんと魔法は不遇である。


色々実験や特訓をしていたが、そろそろペガヌスを解放しよう。

「本日をもって、特訓課程は終了である。ペガヌスよ。良く頑張ったな。この事を糧にして、魔王軍でのしあがれ。期待している。以上」

何となく軍隊チックに締めてみたら。

ペガヌスは泣きそうである。特訓と言う名のしごきから解放されるのが嬉しいのだろうかと思ったが。

白雪と別れるのが寂しいと言っている。

そうは言ってもアタシにはアタシの、ペガヌスにはペガヌスの進む道があるのだから、それは仕方がないことである。

犬系は群れの中で主従関係を形成して生活する生き物である。だから(あるじ)であるアタシがいなくなるのは寂しいのだと思うが、そもそも魔王軍の将軍や隊長がペガヌスの主だろ。

あんまり泣かれると去りづらくなるので最後に発破を掛けることにした。

「良く聞け、ペガヌスは走攻守に回復、すべてに於いて強くなった。だが知っているか。お前よりすべてに於いて上の実力を持つ生き物が世の中にはいるってことを。その名はミーヤ。黒豹だ。お前の実力は未だ猫族にも劣るのものなのだ」

この話しを聞いて泣いていたペガヌスは涙を拭いて立ち上がった。

「ミーヤ。黒豹。猫族だと。俺の実力が猫にも劣るだと。誇り高き犬族が猫族に劣るだと。そんなことはゆるされない。ゆるされるわけがない。だが白雪が言うのだから本当のことなのだろう。悔しいが俺の実力と猫の実力の差はどれだけあるのだ?」

単純ワンコが乗ってきた。大地の王であるミーヤの本当の実力は知らないけど、せっかくだし過剰に言ってやろう。

上があると知ると知らぬでは実力の伸びが違う筈だし。

「三倍。そう三倍は違う。スピードもパワーも技術もね。信じられない? なら」

アタシは細長い棒をマントの中から出してペガヌスに渡して先に包帯を巻いて遠くに投げるように指示をだした。

細長い棒は、もちろん影魔法でお尻から取り出したのだけどね。

ペガヌスはその事にはまったくふれずに棒を槍投げのように投げた。棒は見事に地面に突き刺さり、包帯が風にたなびいている。

近くに落ちている石を拾って「この石が地面に落ちた音がしたら、走っていきあの棒を先に取った方が勝ち。簡単でしょ。ミーヤはアタシと同じくらい速いから目標になるよね。どちらが速いか勝負よ」

「白雪はそんなに強くない。スピード勝負なら俺の方が速いから余裕で勝てる」

なるほど、ペガヌスは魔法のせいで負けたと思い込んでいるのか。それでは、その長い鼻面をへし折ってあげましょう。

「一回しかやらないからね。油断したとか。見くびっていたとか言っても聞かないから。負けたら死ぬ覚悟でやりなよ。いくよ」

アタシは背後に落ちるように石を上空に投げた。

久し振りにあの技を使う。いつぶりかしら。両足に気を集中させて音が聞こえるのを待つ。

音が聞こえた瞬間。アタシは『最速の一歩』を踏み出した。その瞬間景色が歪んで、背後に流れ消えていった。

結果は圧勝。ペガヌスは道半ばで呆然としている。

「ペガヌス。今のお前の実力とはその程度だ。だがお前はまだ限界にまできていない。鍛えろそしてもっと上を目指せ。バイバイ。頑張れよ」

アタシは、呆然としているペガヌスを置いて、この場から離れた。

やっぱり別れはあっさりさっぱりが良いよね?


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