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しつけって飴と鞭だよね

数日掛けて検討したエルフの魔術である肉体強化の秘術の完成に目星がついた。

この魔術の肝はマイナス条件をあげてからプラスの条件をあげると言うことだ。

だから何か力を得るためには、何かを犠牲にしなければならない。

元のエルフの魔術は

『感情表現ヲ無クス代ワリニ倍ノ力ヲ得ル』であった。

当時は強い魔物が多く、生き残る事が最優先であった為、感情表現を捨て去ることに何の躊躇も要らなかった。だから問題は無いと判断されたみたいだ。

この集落のエルフも1万年前は百人規模にまで回復していたのだが、全身が黒く染まる病に倒れ。半分以下に減ってしまった。

元々繁殖能力の低いエルフにとって、人口の増減に関しては現状維持がやっとみたいだ。

それはエルフの事情なので置いといて。

エルフの魔術に話しを戻すと。

感情表現以外の犠牲に書き換えれば良いだけだ。

だが中々良いものが浮かばない。神様と言われる存在も悩みに悩んだ上の結論だったのだろう。

スピードとかの身体能力を犠牲にしたら意味がないし。元から多量の魔力が必要なのだし、それも犠牲に出来ない。

生きていくために要らないものなんていう物は進化の過程ですでに捨て去っているのだ。

今更掘り起こしたところで魔術の法則として成り立たないだろう。

一番簡単なのは泳げなくなるとか水に浮かなくなるだ。ここは森の中である。近くに川はあるが、泳げなくとも足がつく範囲なら問題は少ないと考えられる。

だがこの程度のことでマイナス条件として成り立つのか。

そこで気がついた。この魔術は実験も確認も出来ないということに。

ぶっつけ本番一発勝負。

しかも対象がいないというおまけ付き。

なぜなら現在妊娠中のエルフが居ないからだ。

いきなり頓挫してしまったのだが、良く考えたら対象をエルフだけにすると言う風に拘る必要がなかった。魔力を持っている生き物ならば対象は何でも良いのである。

アタシは最長老さんに外出許可を取り森に入った。もちろん実験の為である。

エルフに迷惑が掛からないように出来るだけ遠くに離れた。

そして森の中にある洞窟にたどり着いた。

そう。そこは。

「ペガヌス居るか」

そう。人間族を間引きしようとしている、魔王軍に所属しているペガヌスの家である。

「誰だ、俺の名前を気安く呼ぶや……げっ。白雪。どこからバレって違う。何でもない。今日は何の用事でイラシタノデスカ」

アタシも怪しいことをしようとしているが。ペガヌスの今の対応は限りなく怪しい事をした対応だ。

アタシは近くに落ちている棒を拾い上げペガヌスの股間に尖端を向けたあと折った。

ペガヌスは両手で股間を隠しながら内股になり、そのまま座り込んだ。

どうやらトラウマは抜けていないようだ。

座り込んだペガヌスに確認する振りをしつつ質問する。


どうやら、アタシの存在が魔王軍に広まってしまったようだ。

ペガヌスは人間族間引き計画の進捗を報告するために東方本部に行った。

その際に、鎧を着ていったそうだ。アタシに計画を潰されたことを誤魔化しながら尚且つ自慢するためだ。

すると当たり前だが、仲間から羨ましがられる。何せスピードを活かすために防具などというペガヌスにとっては足枷にしかならない重量物がほとんど気にならないくらいに軽くなる鎧なのだから。

その上、稀少金属である魔銀(ライトメタル)製なのだから防御力は高いのは当たり前、更に自動回復するは、観賞用の置物にもなるは、最強の防具である。

人間族まびき計画の失敗により能力不足を指摘され実力再確認試験を受けることなった。だがこの最強防具を身にまとったペガヌスは、相手の攻撃が、防具に当たるに任せて攻撃のみに集中することで圧倒的な攻撃力を手に入れた。

そして全ての対戦者を圧倒したことにより、実力を認められて現状維持では無く大昇格したと言う。

魔王軍は筆頭に魔王軍隊長。

東方、西方、南方、北方、を冠するそれぞれ4人の将軍。

将軍の幹部として東部、西部、南部、北部、中部の5人の部長。

そして残りは課長、係長、平隊員で構成されている。

今までペガヌスは233部隊、要するに隊員の中でも実力的に233位であったのだが、次期部長候補であった課長である隊員1位をも圧倒したことにより、部長に抜擢されたそうだ。

今まで部長としてオークキングが居たそうだが死亡した為に欠番になっていたらしい。

なのでペガヌスの肩書はは

魔王軍東方本部東部部長魔銀鎧のペガヌスだとさ。なんだか偉そうだ。

で、ここでペガヌスは、人間族まびき計画を失敗させた人物及び魔銀鎧の製作者として確かにアタシの名前は言わなかった。だが誘導尋問に引っ掛かり真っ白なマントを来た見た目人間に見える子供だとバレてしまったそうだ。

そんなことがバレたのならアタシが特定されるのは時間の問題である。

だったら白雪と言う名前しかわからないと言わせておけばよかった。

怒り沸騰のアタシを見て尻尾をお腹に回して腹を見せて寝転がっているペガヌスだがしつけ直さなければなるまい。

だがしつけとは飴と鞭。ならばチャンスも与えよう。アタシはペガヌスに起き上がるように指示をしてからひきつった顔をしているペガヌスを睨み付けた。

「ペガヌスよ貴様に機会を与えよう。成功すれば力が倍になり、失敗すれば不利益のみ被る。これは素晴らしい機会だと思わないか」

ペガヌスはYESマンのように首を上下に振るだけだ。

「何かを得るためには何かを犠牲にするしかない。なのでどちらか好きな方を選べ」

そうアタシは言ってから選択肢をあげた。

A感情表現が出来なくなる。

B海や川で泳げなくなる。

さあ。どちらが良い?



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