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鳴かぬなら鳴くまで待とう

巨大バッタくんに守られていると思われるウサギの群れは諦めて、付近を探索しているがなかなか手頃な獲物が見つからない。

ネズミやリスなどの小動物はあちこちに居るのだが、食べられるところが少ないので、小動物を狩るのは最終手段である。

狼(群れ)や大型猫科、キツネの類い、イノシシ、シカ等はたくさん居るのであるが今回の狩りには向いていない。

手頃な物々交換用の獲物が欲しいからである。

でもそんな森の探索中に嬉しいものを見つけた。鑑定しても結論は同じ、砂糖の原料である。サトウキビだ。

こんな森の中にサトウキビが群生しているなんて考えもしなかった。

王都でも売っていなくて、チョコさんからチョコレート作りの時にわけて貰った量しか手に入らなく。それも実験の時に使いきってしまったから、手持ちはなかったのである。

喜び勇んで収穫に行きたいところだが違和感がある。大きく深呼吸をしてから念入りに見渡すと。

違和感の原因はすぐにわかった。このサトウキビの群生地には、たくさんの生き物の骨が転がっているのだ。

念のためと鑑定で見直すとサトウキビ(?)と疑問文に変わっていた。

初めの鑑定でアタシが見落としたのか。いや流石にそれはあるまい。アタシの鑑定には『?』マークが良く使われるので、そこは注意している。

だとすると、今回はアタシが疑問に思った後に修正してきたと言うことになる。学習型の鑑定能力は初見は本気であてにならないのである。

そんなことは置いといて、動物の大量死の原因を考える。

こう言うとき、ファンタジーの世界において鉄則は真面目に考えるとバカを見る。である。

何せ樹利亜(ジュリア)の例もある。実を食べたら死んでも目覚めないとか麻薬の様に中毒にするとかで自身の回りに肥料を作るだなんて普通に想像できないからである。

今回もきっと例に漏れずにとんでも理由に違いあるまい。

サトウキビを食べすぎて、血糖値が上がって死んだとか。実はサトウキビは食虫植物で近寄ると襲い掛かってくるとか。

はたまた、サトウキビは囮で、近寄ると触手が伸びてきてがんじがらめにされてしまうとか。それってなんてエロゲー。

ファンタジーには良くあるネタだが、そんな罠に掛かるものですか。

不思議な状況を見掛けたら、ファンタジー世界ではスルーが推奨である。

でも普通のサトウキビの可能性もあるし、それなら欲しいし。暫く様子を見ることにした。


ここで物語の主人公であるかどうかはすぐにわかる。主人公なら、きっと様子を見始めてすぐに何かが起こり、結論を得ることが出来ると言うことだ。

だがアタシは主人公ではないらしい、何せ1週間ここで様子を見ているのに関わらず、何の変化も見られない。

それでも強いてあげれば、サトウキビ(?)が3センチくらい成長したかな。程度である。

もしかして、これがサトウキビ(?)の罠だとか。さすがにそれは無いとは思いつつ更に様子を見続けた。

様子を見続けて更に3日経った。アタシの警戒心も並みではない。急ぎの事が無いから出来たことであるが。

でもやっと待ち人が来たお陰で死骸の理由がわかった。

振動感知に若いイノシシの反応を得た。様子を見ている間も何回か動物の接近はあったが、近付くことなく通りすぎて行っていたことがある。今回も同じかと思っていたが、真っ直ぐにサトウキビ(?)に近付いて来ている。

そのままサトウキビ(?)群生地に入ったイノシシは茎に噛みつき引き抜いて咀嚼している。イノシシの表情なんて見比べた事がないからなんとも言えないが美味しいみたいだ。恍惚とした表情を浮かべている。

なんだ、普通のサトウキビだったのか、アタシの警戒心を煽っておいてそんな結末かと、油断していた時に、それが起きた。

始めに引き抜いたサトウキビを食べ終えたイノシシは2本目を引き抜くと。

サトウキビが何かを叫んだような気がした。

見ていたくせに気がするなんて表現がおかしいのは承知している。

だが、何かが聞こえた気がした直後の記憶がないのだから気がするとしか表現できない。

気が付いたらアタシは倒れていて、イノシシも倒れていた。周囲に居たネズミなどの小動物も倒れており、振動感知で調べた限り、サトウキビの群生地周囲に居た動物、虫も含めて全て死んでいたのである

何があってこうなったのか、本当にわからない。

アタシは起き上がり、鑑定を行ってやっと何が起きたのか理解した。


鑑定の結果。

ネズミの死骸。

イノシシの死骸。

鳥の死骸。

サトウキビ。

マンドラゴラ(サトウキビ擬態)。


ファンタジー危険生物上位に位置する伝説の植物。マンドラゴラが擬態して混ざっていたのだ。

イノシシがマンドラゴラの擬態に気が付かずに、引き抜いた事によりこの惨劇は起きてしまったのである。

アタシの立っていたポジションはマンドラゴラを中心にした死のサークルであるデッドゾーンの内側に位置していた。

なんでアタシだけ生き残れたのであろう。デッドゾーンに居た虫も死んでいると言うのに。

でもそれはすぐにわかった、耐性スキルのお陰であると。なんてご都合的なのであろう。スキルを取得してすぐに、こんな事件に巻き込まれるとは。

何はともあれ、生き残れて良かったと胸を撫で下ろした。


サトウキビとマンドラゴラは鑑定で見分けがつくなら、安心して採取できる。

その後、引き抜かれたマンドラゴラとサトウキビを採取した。

それと若いイノシシなら小さな荷車を作れば運べそうである。

出来るだけ軽くしようと土魔法で木製の部品を作る。

それを組み立ててからエルフの集落に向かって帰途についた。



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