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死闘、vsバッタくん

エルフの集落には貨幣はない。

いや無いことはないが、誰も使っていない。なぜなら基本は物々交換であるから。

だから金貨だろうが銀貨だろうが銅貨だろうが、貨幣と言う意味ではなく。

装飾してあるメダルと言う扱いである。一定の価値はあるみたいだが、銀貨一枚よりウサギ一羽の方が価値が高いと言う悲しい現実を突き付けられて、午後からは狩りに出ることにした。

ステラさんから聞いた話だが、集落の周囲では魔物以外の生き物を狩ってはいけないことになっている。

これは、集落の周辺に血の臭いを残さないようにするためだ。血の臭いは魔物を引き寄せる。だから臭いを分散させる為にも狩人は必ず遠くまで行くことになっているのである。

その結果、集落の周囲は生き物の宝庫である。たくさんの振動の反応がアタシを誘惑するが、郷に入れば郷に従え。

ダッシュして集落から距離をとった。

そんな事をしたら迷子になるのじゃないかって、それは大丈夫。短いベタベタ糸をお尻から飛ばして道すがら木に着けているのである。

そこで鑑定を使うと、ベタベタ糸が識別出来るのである。ただ効果は3日程度。完全に乾いて硬化すると識別出来なくなるようだ。

効果を考えると動物の臭いづけと同じようなことかもしれない。

ここはアタシのテリトリーなのよ。なんちゃって。

脱線したけど、帰り道は心配ないと言うことで、狩りに意識を向ける。

イノシシやシカなどが豊富に居るがアタシでは持っていけないので、何時もと変わらず、ウサギ狩りをしようと思う。

が、ウサギの反応がある場所に不明な大型の生物反応もある。

少し迷ったが行ってみることにした、積極的行動を心掛けているからである。

それでも慎重に風下に回り込み対象に向かってゆっくり近付く。


そこにいた生き物に身体が反射的に動いてしまった。だが精神力を高めることにより、初動だけでなんとか抑える。

そう。そこにいたのは、みんな大好き。みんなのアイドル。生きる食卓。バッタくんであった。

だがサイズがでかい。5メートル越えである。それは大空の王であるピィコが捕まえていたバッタくんなんて目じゃないサイズである。

しかも今度は、生きていて目の前で草を食べている。豪快に食べる姿は大迫力だ。ウサギの群れはバッタくんの回りでやはり草を食べている。だとするとバッタくんは巨大化したところで草食なのだろう。

バッタくんとウサギは共存しているとでもいうのだろうか。だとすればバッタくんはウサギの守護神である。

そんな事を考えていたら、狼の反応が近付いてきた。これはヤバいかもと思って振動感知を最大限にしたが反応は一頭だけであった。

狼は群れで生きる生き物である。よく言われる一匹狼なのか?

でも自然界において一匹狼なんていうのは格好の良い物ではない。なぜなら単独の狼は基本的に狩りがうまく出来ないからだ。一頭で居ると言うことは、群れからはぐれたのか、追い出されたのかしたのかもしれない。

そんな狼はウサギの匂いに誘われて真っ直ぐにここに向かってきている。

しっかり風下側から近付いてきているが、早くもウサギ達に気が付かれている。草を食べながらも、耳が狼の方を向いているのでわかりやすい。

そして、狼の姿が見えた。十分な食料を得られていないようだ。やはりと言うか痩せ衰えているように見える。

ウサギ達は耳を狼に向けているが、それでも草を食べている。根性座っているウサギ達である。それとも守護神であるバッタくんに対する絶対の信頼なのか。

狼は走り出した。早い。スピードが速いのではなく。走り出すタイミングが早すぎるのだ。もっとギリギリまで近付いてからでなければ、あの通りウサギは一目散に逃げていき各々の隠れ場所に飛び込んでいく。

ウサギは弱者である、だから呑気に草を食べているように見えて、常に安全な場所までの距離を把握している。逃げるときの動きに淀みはない。

狼がウサギの居た草むらにつく頃には、すべてのウサギの退避は完了している。

狼さん骨折り損お疲れ様でした。

だがここで思いもよらないことが起きた。

獲物のウサギに逃げられて意気消沈の狼かと思っていたのだが、巨大バッタがまだ居ることに気が付いたみたいだ。

唸り声をあげ、自身より大きな巨大バッタに飛び掛かった。

狼は肉食だと思っていたが、雑食だったっけ?これが遊びで昆虫に飛び掛かるのならわかるが、目がマジである。

飢えに耐えられなくなったのは想像できるが、バッタもここまで大きくなれた理由があるはずだ、簡単に殺られてしまう訳はないだろう。

バッタくんのお手並み拝見である。

狼が飛び掛かかった瞬間にバッタくんがその場から消えた。狼の先制攻撃は空振りバッタくんが居た場所で不思議そうに左右をうかがっている。あの巨体が一瞬で消えるなんて。しかも振動感知の反応も消えた。

だが次の瞬間、理解した。何せ狼も消えたからだ。だが、正確には違う。狼は消えたわけではない。ただ押し潰されていただけであった。

消えたバッタくんは先程居た場所に鎮座している。そして狼を食べ始めた。なんと巨大バッタくんは狼も食べる雑食であった。

アタシは自分の知覚と起こったことを整理して一つの結論に達した。

バッタくんは狼に飛び掛かられた瞬間に垂直にジャンプしたのではないのかと。

そして落下地点に居た狼はバッタくんに押し潰されたのではないのか。

体長5mなんて巨大昆虫であるバッタくんの体重はきっと300Kg以上もしかしたら500Kg近くあるかもしれない。

そんな重量物が降ってきたら普通は支えきれない。

それも驚異だが、それよりもあの巨体が消えたように見える速度でジャンプ出来る足の筋力がとんでもなく驚異である。

ウサギが一緒に草を食べていられるところをみれば、ちょっかいを出さない限り襲われることは無さそうだ。だがやっぱり巨大バッタに近寄るのは危険だ。ここに居るウサギは諦めるしかない。

狼の脅威が去ったことでウサギが隠れ場所から顔を出している。

鼻をビクビク動かしているので、まだ緊張しているのだとわかる。

狼の血肉の匂いが充満しているのだからしかたあるまい。


みんなの食料からランクアップした跳び跳ねる巨大バッタくんの勇姿。もう少し離れた場所から観察すれば良かったと残念に思ってしまったマッキーであった。



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