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鍛冶屋とちょべりば

朝起きてラジオ体操モドキをしてから、昨日行けなかったエルフの鍛冶屋に来た。

「超マッキー。マジチビッ子。朝から超感激。ちょべりぐー。マッキーさんおはよう。何か探し物かい」

やっぱり、何か耐性が着いたみたい。精神にくるものは何もない。だからアタシは余裕をもって。

「マジ鍛冶屋。イカしてそうろう。マジビックリたまげたもんざえもん。鍛冶屋さんおはよう。今日はアタシの手製の防具に問題がないか見てもらおうと来ました」

コギャル語となんか違うような気もするけど。うん。すらすら出てくるから問題なし。

あれ。鍛冶屋さんがなんだか戸惑っている気がするけど表情が変わらないから良くわからないや。

「もんざえもん。マジウケる。超イミフって感じ。マッキーさんは鍛冶見習いか、良いだろう見てやる」

戸惑っているように見えたのは気のせいか。

アタシは装備している状態から見てもらおうとマントの裾をめくりあげた。

鍛冶屋さんは無表情でアタシのすねあてを見つめている。そして無表情のまま顔をあげて。

「超マッキーバカ。マジイミフ。たくしあげるなんて、あり得ないし。普通に装備を外して見せてくれ」

わかりづらいがエルフの感情がわかってきた。どうやら怒られてしまったみたいだ。

「マジ反省。反省だけなら猿でも出来る。ごめんなさい。宜しくお願い致します」

そう言いながら両足のすねあてを外して手渡す。

「超真っ白。マジ軽い。俺、師匠って感じ。マッキー弟子って感じ。ヤバヤバ。ちょべりぐー。そうだな。造形は美しくできている。必要最低限な部分は守れているぞ。だがな」

と言う言葉と共に近くにあった大金槌を振り上げて、そのまま振り下ろした。

そんな暴挙に出るとは思っても見なかったので、止める間もなくアタシのすねあては大金槌の下敷きにされてしまった。

「マジ鍛冶屋。このバカちんが。ちょべりば。アタシのすねあてに何をするのよ。ほんとマジこの鍛冶屋。超サイアクって感じ。マジちょべりば。超ちょべりば」

エルフ語の話し方を無視して『ちょべりば』を連呼していたら。鍛冶屋さんがうつむいていた。良く見ると頭のあるあたりの地面に水滴が落ちていっている。更に小声で「ちょべりば。ちょべりば」と繰り返している。

アタシは驚いて連呼を止めたが、水滴は落ち続け地面に染みが広がっていく。

エルフって、こんなにも水分を持っているものなんだと感心していたところで我に返った。

これって激ヤバ? マジやっちゃったってやつ?

って、アタシ落ち着け。まず深呼吸して。

その間も染みは広がり続けているが気にしたら負けだ。どうしてこうなったのか整理しよう。

鍛冶屋さんに、アタシのすねあてを見てもらおうと渡したら、大金槌の下敷きにされた。

……泣きたいのはアタシの方じゃないか。

鍛冶屋さんめ、アタシになんの恨みがあると言うのだ。そのまま泣き崩れているがよい。

と言っても限度がある。身体中の水分が出きって、干からびるのではないかと心配になる量が涙として地面に吸い込まれている、

さすがに心配になったので、普通に「大丈夫?何があったの」と、自分の言った事を棚にあげて声を掛けるが反応は変わらない。小声で「ちょべりば。ちょべりば」と繰り返し呟いている。

そう言えば。何気なく言った『ちょべりぐー』で幸せな気分になれると宴会までしていたのだから。対義語である『ちょべりば』と言われて不幸な気分になったのだと想像できる。

想像できるが、何百年も生きているようなエルフが不幸な気分になる言葉だけで、ここまで落ち込むのか。

エルフってメンタルが弱すぎである。

アタシは『ちょべりぐー』を連発して鍛冶屋さんをなんとかドン底から復活させることが出来た。

通常状態には、ほど遠いがそこまで付き合う必要はないだろう。

アタシは何で大金槌で、すねあてを下敷きにしたのか聞いてみると。

頭の悪い回答が返ってきた。

アタシが鍛冶の出来を見せると言うことは、アタシは鍛冶屋さんの弟子扱いである。

そうなるととうぜん鍛冶屋さんは師匠だ。

師匠の仕事とは弟子を鍛えることである。

初めて弟子が一人で完成させた出来の良い防具を、見せにきたら。

それがどんな物であろうが壊すことがエルフの師匠に受け継がれてきた秘密のしきたりであると。

そして「話しにならぬ」と決め台詞をして奥に引っ込むのが美学であると。

この鍛冶屋さんも先代の鍛冶屋にやられたらしく、最高の出来栄えだと思って見せたのに大金槌で潰されてしまった。

初めは先代を恨んだが、もっと上を目指せと言う愛の鞭だと気がついてからは必死に修行をして先代を越える鍛冶になれたと言う。

なので弟子が出来たら、必ずやろうと考えていたが、未だに弟子入りしてくるエルフは居ない。

愛の鞭をふるいたいのに対象が居なかったところで、防具を見せにきた人間が現れた。

見たことも聞いたこともない真っ白な素材で出来ている、しかも軽い。木製の防具かと思ったが、手触りが違う。素材はわからないから造りから確認した。強度がわからないのでなんとも言えないが必要最低限の部分をカバー出来ている。

デザインは人間の子供用なのかわからないがずいぶん丸みをおびており、模様が描かれている。

エルフには無いデザインであるが、間違いなく良いものだ。

しかもこれは手製であると、なれば結論は一つ。

師匠の勤めを果たすだけだと言うことであった。


さすがはファンタジー生物であるエルフである。アタシには持ち込み品を壊すなんて出来ない芸当である。

壊した理由はわかった、でも納得したわけではない。だが『ちょべりば』連呼は必要以上の罰となったようだ。

表情は変わらないが鍛冶屋さんの顔色は悪い。身体もふらふらしている。かわいそうな気もしたが、大金槌をどかしてもらうことにした。アタシのすねあての救出である。

助け出されたすねあては、ぺしゃんこに潰れていると思っていたが、なんと床の方が凹んでいた。

これには鍛冶屋さんだけでなくアタシもビックリしてしまった。

鍛冶屋さんが手を伸ばし拾い上げようとするところを先回りしてアタシが拾い上げる。

鍛冶屋さん的には真っ白で木製のように軽いのに大金槌で潰れないほどの強度を持つ謎の材料が今更ながら気になったようだ。

でも、これは材料含め完全自家製なので調査など必要なし。しかも、どんなに硬くて丈夫であろうと弱点があるからには、調べられる訳にはいかない。バレたら防具ではなくなってしまうのだから。

アタシはさっさとすねあてを装備してから歩き回る、違和感は特にない。

ひとまず安心した。

とんだことであったが、防御力が判別できたのは嬉しいことである。これは、今後の旅に安心感と共に生かすことが出来るからだ。

先程の謝罪に何か気に入ったものがあったら贈呈すると言うので、見てみたがエルフ用のアタシには重たい武器防具しかなかったので、材料を少しわけて貰った。

特筆は魔綱(ミスリル)と言われる鉱石である。魔銀(ライトメタル)と同じ様に魔力と相性がよく堅い。その上、薄くしても脆くならないので刃先に向いているが重たいと言うことであった。

これは、世界の王から授かった知識とだいたい同じである。

気軽に小石大サイズの塊を渡されたがあまりの重さに落としそうになったのは鍛冶屋さんの手前秘密だ。


小さいのに超重量って似たような物を以前見たような気がするけどなんだっけ?

そんな事を考えながら鍛冶屋をあとにした。


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