エルフ全滅?
アタシは家の中の部屋で、ある物を製作中である。
それは火急的速やかに作らなければならない。とうぜん鍛冶屋には行っていない。そんな事は後回しだ。
なにせ、エルフが全滅していたのである。今は、その対策に追われているのだ。
今、動けるのはアタシ一人である。孤軍奮闘、どこまでやれるかわからないが、やらなければなるまい。なにせ。
アタシは鍛冶屋に向かう道すがら、昨夜の宴の会場を見てしまった。そこには、倒れているエルフが50人。
そう、この集落に居るエルフ全員が酔い潰れて地面で寝ていたのである。
まさしく全滅である。
アタシは全滅エルフなぞ見なかったことにしようかとも思ったが、最長老さんもステラさんも折り重なるように倒れている。
取り合えず救出しようと思った。
だがアタシの腕力では持ち上がらない。エルフはスリムなのだが、身長が高いだけあって重たい。
アタシは重たい物を持ち上げられるように滑車の製造をしていたのだ。
出来上がった木製の滑車と棒を四本持って現場に戻ってきた。
誰か復活していることを期待していたが、誰も目覚める感じはない。
取り合えず多重に折り重なり下敷きになっている最長老さんを救出するために四本の棒を四脚の様に立てて滑車を使い、一人ずつ持ち上げることにした。
動滑車により半分の重量になったエルフだが、それでも重たい。慌てて良く考えもせずについ科学の力を利用しようとしたが、自分の体重が軽いことを失念していた。
とうぜんだが滑車では自分より重たい相手を持ち上げるなんて出来なかったのである。
アタシは無駄な物を造ってしまったようだ。
ファンタジーの世界で今まで殆ど使っていない科学を突然持ち出した自分の考えに悲しくなるが今は救出が急務である。
かと言って、魔法はお尻からしか出ないから、浮遊とかの土魔法は使えない。
そうすると魔道具しかないのだがエルフさん本人を魔道具にする事が出来ないから。
結局わずかでも持上げられないと魔道具も使えない。
自分の身体能力を上げるために、力の言葉で『力』と描けばパワーグローブとか作れそうな気がするけど、きっと使うと負担が肩や背中、腰にきてしまい怪我をするのが落ちだろう。
他に何かないか尚考えていたが、タイムアップのようだ。エルフさん達が復活してきたのである。
残念な自分の考えを振り切り、復活したエルフさんに下敷きになっている最長老さんの救出を手伝って欲しいと言ったら。
「マジ最長老。超ウケるし。マッキーマジ感謝。いつものことだから心配ない。放置を推奨する」
と返された。
どうやら色々考え、救出しようとしていたのだが、それこそ無駄な労力だったようだ。
アタシは次々に起き上がりコギャル語を話し始めたエルフ達に背を向けて家に戻った。
あの分だと今日は鍛冶屋に行っても無駄だなと考えて後回しにしていたすね当ての製作に取り掛かった。
材料は魔銀を使用する予定。魔銀は魔力と相性が良いはずだから、アタシが魔法を使う上で障害とはならないはずだ。
これがうまくいけば、装備を見直そう。その為にも鍛冶屋さんにアドバイスを貰いたいところであったのだが。
まあ。急ぎのことでは無いし、ゆっくりやりましょう。
包帯を使って自分の足の型をとり、イメージを固めて土魔法で作成。このくらいのサイズなら問題なく作れる。
ペガヌスに作った部分鎧はワンコの置物になるところがポイントのデザイン重視の鎧なので、実は必要なところが防御出来ていない恐れがある。
その程度の知識で作ってみただけなので、同じノリで自分用を適当に作るのは恐い。
なので、このすね当ては試作品である。自分の足に合うようにしたら、鍛冶屋さんに見せてアドバイスを受けようと考えている。
出来上がった試作第1号。さっそく装備して歩き回るがやはりアタシには重たい。
重量軽減の魔道具を埋め込んでも良いが常時発動させるのは魔石の性質からして無理だ。直ぐに砂になってしまうだろう。
残念ながらいきなり頓挫してしまった。
せめてもの思いで可能な限り薄い板で作って見たが、それでも堅い包帯の方が丈夫で軽かった。
楽しみにしていた、自分専用の魔銀鎧の構想は作ったところでスペックダウンにしかならない。こうなると魔銀を使うメリットは蓄魔力だけである。
アタシは初っぱなからこの世界で最強クラスの防具を身につけていたみたいだ。アタシは泣く泣く以前作った手順通りに包帯ミルフィールを作り始めた。
のだが。もしかして土魔法で成型出来るかもしれないと思い付いた。
堅いのと柔らかいのとを重ねた包帯をお尻の下に置いて、しっかり形をイメージすると。
あら、どうでしょう。今まで消ゴムみたいな、豆腐みたいな、とにかく白い長方形の固まりが張り付いていただけの、実用一点張りだったすね当てが、女性らしい美しく柔らかい曲線を描いている。縁は草の絡まる模様にしている。
魔銀を使いたかった一番の目的は、包帯ミルフィール(ケシゴム)からの脱却であったからだ。
次は籠手である。こちらはアゴカスリパンチや魔道具を埋め込んだりで役に立っているので。
すね当てと同じ様なデザインにするだけとした。
改めて装備を上から確認する。
肩を少し越えたところまで髪があるのでポニーテールに纏めている髪留めは回復包帯。
頭部を守るハチマキは回復包帯。
胴体を守るスクール水着は回復包帯。
両腕は硬く丈夫な包帯製の籠手。掴まえられて高い高いされないように『滑』の魔道具が埋め込んである。豆腐が乗っている様に見えるが相手のアゴ先を掠めるパンチをするのに適している。
両足のすねあても硬く丈夫な包帯製。野山を走り回っても鋭い葉やトゲから足を守れる。
足裏は丈夫な包帯を巻いた靴下の様な物。壁歩きや天井歩きをするときは指先を出している。
すぐに傷むので一日に一回は交換している。
後は『潤』の魔道具がフードに着いている白マント。アタシのトレードマークだ。
今夜は魔力をたくさん使ったので良く眠れそうだ。私は早めに眠る事にした。




