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マッキー的、史上最大級のピンチ

今アタシは洗脳されかかっている。

今までの冒険史上最大級のピンチである。

常に自分を保つということが、大変なことだと知っているつもりだった。

トラウマに耐えて、孤独にも耐えて、闇魔からの侵食にも耐えた。だが、アタシは知っているだけの知ったかぶりであったようだ。

本当に恐ろしく耐え難い事とは、それが当たり前にあるということであった。


翌朝、日の出と共に目が覚めたので、ラジオ体操モドキをしてからリビングのソファに座って新しいすね当ての構想を練っていると。

玄関の扉がノックされたような気がする、小さい音が聞こえたからだ。でもあんなに小さい音では聞き逃してしまいそうだ。

エルフは耳長人と言うだけあって、とても耳が良いのだろうと思っていたら。アラームの様な甲高い音が部屋の中を響き渡る。

これはうるさい。でも止め方がわからないので耳を塞ぐしかない。そしてすぐにアラーム音は止まった。

アラーム音はタイマー設定なのだろうか。玄関部屋(ロビー)に出てみると、ステラさんがイスに座っている。

何となく昨日、最長老さんがしていたように対面に座ってから朝の挨拶をしたのだが。

ステラさんは少し不満そうだ。エルフのしきたりはわからないので、何か間違えたのかと思って聞いてみても、しきたりは問題ないと言う。

ただ物足りないと言うことであった。何が物足りないのか重ねて聞けば、生き物は何を考えているのかわからない。だからエルフは、相手に対して思ったこと、感じたことをはじめに伝えるのだと。

もしかして言葉に感情がこもらない、表情が変えられないから、自分の感情を言葉で伝えているとでも言うのだろうか。

言っている事は理解できるが、もしかして物足りないとは、アレですか?アタシにもアレをしろと言うのですか。

はっきり言えば勘弁してほしいのだが、郷に入れば郷に従えと言うのなら従わざるを得ないだろう。アタシは大きく深呼吸をしてから、意を決して挑む。

「ま、マジ元気。ちょ超ちょんまげ。ちょべりぐー。おはようございます。今日は案内して頂けるとのことで楽しみにしています」

一応、最後まで言い切ったが、初っぱなから変なことを言ってしまった気がする。だってステラさんが微動だにしずに、アタシを見ているもん。

でも困ったことに、なんと言ったかアタシは覚えていない。完全記憶の能力よ、どうしたのだ。

はやく思い出せ、思い出してフォローをするのだ。

考えてもわからない。ステラさんは涙を流しはじめている。無表情の涙、これはいったいなに?

アタシはステラさんが涙を流すほど酷いことを言ったのか?

何も思い出せないで一人で慌てている間にステラさんが返事した。

「マジあり得ないし。超ヤバいし。テラ感動。マジ。マジ。マジ。なんて心に響く素晴らしい言葉なのでしょう。こんなに感動したのは初めてです。新語発見。さっそく皆に教えなければ。さあ行きましょう」

そう言いながらアタシの手を掴み家から連れ出されてしまった。

何がなんだかわからない内に、最長老さんの家に着き、ノックをしてドアを開けイスに座る。

昨夜と一緒である。最長老さんが出てきて、いつもの切り出しから何用だと聞かれる。

確かに、今日はステラさんがエルフの集落を案内してくれる予定である。最長老さんには昨夜話しているので朝一に来る必要はないはずだ。

最長老さんの質問にステラさんが「ちょべりぐー。おはようございます」と返事をした。

すると、最長老さんも先程のステラさんと同じ様に固まり、涙を流し始めた。暫くして涙を拭い。

「マジあり得ないし。超ヤバいし。テラ感動。マジ。マジ。マジ。なんて心に響く素晴らしい言葉だ。ちょべりぐー。素晴らしすぎる」

どうやら『ちょべりぐー』と言う言葉がエルフの琴線にふれたらしい。

ステラさんと最長老さんの二人で盛り上がっている。聞くに耐えないコギャル語的美辞麗句をカットすると。

これほど自分がとても嬉しいと伝えられる言葉があるとは知らなかった。

聞いた瞬間に幸せな気持ちになる魔法の言葉だ。

これは、マッキーさんの言葉なのか。イノシシといい、ちょべりぐーといい、素晴らしい贈り物を頂いた。今夜は『ちょべりぐー』を祝う宴だ、全員参加の通達をする。

それまでは『ちょべりぐー』は言ってはならぬ。ああ。言えば言うほど幸せになれる。聞けば聞くほど更に幸せになれる。

今日はなんて日だ。

ステラよ大事な客だ、丁重に案内するように。

と、言うことであった。

アタシは頑張って二人の会話を聞いたよ。

幸せを感じている二人のやりとりを黙って聞いていたよ。でもダメージが大きい。元の世界のあの頃のコギャルたちは日常的に使っていたのよね。

でもアラフォーのアタシには耐えきれない。頭がおかしくなりそうだ勘弁してほしい。

すでにコギャル語に食あたり気味ではあったが、そんな物は序の口であった。

なにせステラさんにエルフの集落を案内してもらうと言うことは、住民たちに会うと言うことである。しかもイノシシとウサギをお土産に人間が来ていると言うことは、皆が知っている。その結果。皆がアタシを知っていて、話し掛けてくるのである。

「超イノシシ。激ヤバ。マジ人間。超子供。あり得ないし。お土産ありがとう。ゆっくりしていきな」

郷に入れば郷に従え。それに対してアタシも

「マジヤバエルフ。超感激。ゆっくりしていきます」

と返さざるを得ない。

(エルフ)と会えば会うほど心身にダメージが溜まってきている。

アタシはエルフの集落で何を得られるのか。もしかしてコギャル語と言う名の洗脳ではあるまいか。

折角案内してもらっているのに、コギャル語に集中せざるを得ないため、あまり頭に入ってこない。

コギャル語に負けるなアタシ。

これを切り抜ければ、きっとちょべりぐーな幸せが待っている。といいな。

それにしても超エルフってマジヤバいよね。


自分の回想にも、コギャル語が混ざっていることに気がついていないマッキーであった。



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