ハンターの正体は
アタシが素直に立ち上がったのは理由がある。
それは、ハンターが近寄り姿がはっきり見えたからだ。
暗い森の中、人型の輪郭だけがわかっていたが、その時点では魔物の可能性もあった。魔物は基本、人間を見ると問答無用で襲い掛かってくるものである。
そんな相手に姿を見せるわけにはいかない。だから判別できる時まで待ち、そして立ち上がったのだ。
だと言っても100%魔物ではないと言い切れないのだか、自分の記憶通りの生き物ならば少なくとも問答無用と言うことは無いだろう。
髪の色は銀色、目の色は緑、仮面のように表情が冷たい、感情がわかりづらいのは美人さんの種族のせいか、身長180センチ程、ガリガリとは言わないが痩せ型で凹凸は薄い。それは長耳人の女性であった。
両手をあげて無抵抗をアピールしつつ立ち上がったところで、そう言えば人間嫌い設定のエルフだったら問答無用かもと思ったが今更仕方がない。
アタシは両手をあげたまま、射かけないでとお願いした。
耳長人の女性は草むらから急にアタシが立ち上がったことに驚いて短い弓を向けていたが、両手をあげているアタシを見て声を掛けてきた。
取り合えず問答無用と言うことは無くなったようだ。ひとまず安心したが、その後試練が待っていた。
仮面を被っているように表情を消したままであるので感情がわからない。しかも声も一本調子なので、そちらからも感情がわからない。
そんな相手から。
「なにそれ。超、真っ白なんですけど。あなた、マジウケる。空見たら超大きい鳥だし、人間だし、マジイラネ。ヤバヤバ…………」
えっと。長耳人さんが話しているのは何語でしょうか。って日本語か。しかも表情を変えることなく、とうぜん身ぶり手振りのジェスチャーも無く、ただたんたんと『マジ』とか『ウケる』とか言われても意味が咀嚼できない。
アタシはそんな世界で生きていないから、元の世界のテレビで見かけても、そっとチャンネルを変えていたしネットは流し読みしていた。
えっと『マジ』は『本気』って意味で『ウケる』は『面白い』とか『バカ』にしているだっけ。
感情がこもっていないから、どちらの意味かわからない。
言葉尻からすると怒っているような気もするけど、変な奴と蔑んでいるような気もする。
いったいどっちなんだ。『マジ訳ワカメ』である。
なんて自分でも何を考えているのかわからなくなるくらい一方的に捲し立てられていたが。やっと話しに介入する出来る言葉が耳に入った。
「…………って言う感じ。で、あんた何してんの」
だが質問の意図が読めない。
さっき飛んでいたことなのか、草むらに隠れていたことなのか、今突っ立って話しを聞いていることなのか。さっぱりわからない。
殺されそうになった相手だが、心の整理をする為にも自己紹介をすることにした。
簡素に「アタシの名前はマッキー。冒険者してるよ」と。
それに対して「超、ヤバ、白いのマッキーだって。冒険者、マジキモ。ステラ。鳥射ちのステラ。夕飯どうしてくれる」
あれ。話しの後半はまともに言っているように聞こえた。
今の後半の話しを通訳すると。鳥射ちのステラさんとしたら、折角射ったのに鳥では無く人間だった、なんてまぎらわしい奴だ、だから責任とれと言っているのかな。
そっか、アタシのせいなのか……って違う。なんて責任転嫁な発言だ。
でも、今は手をあげて無抵抗を表している状態だ。その程度の責任なら果たしましょう。
「ステラはウサギ肉を食べるのか」と聞くと
「マジ茶色い、ウサギ超跳ねる。マジウザイんですけど。食べると旨い」と言うので食べると判断して「狩ってくるからちょっと待っていてね」と返せば。
「ウサギ。超マジ、矢避けるって感じ。ウサギウザ。でもメシウマ。わかった」
何となく法則がわかった。
種族の問題なのか、ステラさんの問題なのかわからないが、頭の中で考えている事が口に出ているだけだと。
最後だけ聞けば会話になりそうだが、どこまでが思考なのかわからないところが問題だろう。話しは通じるのに会話が辛いなんて、なんて試練だ。
アタシは回復包帯を2回巻いて治療をすませてから振動感知で見つけたウサギを一羽捕らえて、ステラに手渡した。
「超ウサギだし。マジあり得ないし。ウサギウザ。ありがとう」
あら。お礼を言うなんて。しかも前フリが短くなってきた。これなら会話になりそうだ。
アタシは王都でも見掛けなかった長耳人さん達の生態を知るべく、殺されかけたことも忘れてステラさんに色々聞いてみた。




