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防具は身を守る為にある

こうなると、昨日また来るねと別れたばかりだが樹利亜(ジュリア)にも挨拶をしにいくしかない。

人間だって昨日の今日で国を離れると聞けば忙しないと思うのに、木である樹利亜からすれば、今さっきの早さであろう。

驚き過ぎているのか、二の句がつけないようだ。

それでも何とか絞り出したらしく、引き止めることもなく「また来てね」と言ってくれた。


樹利亜から若干寂しさを感じたが、意を決して空に舞い上がった。鐘事件の飛行でも、樹利亜に映像を見せて貰ったが、目撃者が多数居たけど白い鳥が飛んでるとしか思われなかったようだったので今回も問題ないと考えたのである。

サラバ。王都。もうお別れだ。

アタシは進路を西に定め飛行していく。森を越え、そして山に近付いたところで自分のミスに気がついた。

王都上空なら誰かに見られたところで、鳥が飛んでるとしか思われないだろうと言うことは間違いない。更に食料不足でもなければ捕まえようとする人間はいない。

でも森に居る生き物は、鳥だと認識すれば、まずは捕食可能か考える。

前回上空を飛んでいたときはペガヌスの速い飛行に多少は合わせていたので捕食者は諦めていたようだか、今回は王都から森に出ても目立たないように鳥の飛ぶ速度程で飛んでいたのが災いしたようだ、地上から矢を射かけられてしまった。

気が付いた時には矢は目前、気を足から急激に放出することにより、胴体への命中は避けることが出来たが足の『すね』に突き刺さった。

突き刺さる衝撃とあまりの痛みに飛行が維持できずに墜落してしまったが、地面との衝突寸前に気を全身に張り巡らすことが出来たので追加のダメージは無い。

アタシは、突き刺さる矢からの痛みを無視して、墜落地点からとにかく離れようと逃走した。

何故ならば、飛んでいる鳥を矢で狙うなんて普通は考えない。そんなもの当たるわけが無いからだ、当たると思って射ったのなら、それは何も知らない素人か、神業の技術をもつ玄人でしかない。

素人のラッキーショットであるなら恐れることは無いが、玄人であるならば2発目は確実にとどめを刺してくるだろう。

見つかって射られたら避けることなんて出来ないだろうから。

ズキズキと痛む足が振動感知を阻害するために、矢を放ったハンターがどこに居るのかもわからない。

自分は、ハンターから遠ざかっているのか、はたまた自ら近寄っていってしまっているのかもわからない。

初めは走れたがだんだん前に足が進まなくなる。それでも痛む足を引きずりながら、少しでも離れようと足を動かす。

これ以上は限界と思い草むらに飛び込み、慌てすぎて忘れていた潜伏スキルを使うも、矢には毒が塗られていたらしく、すぐに解除されてしまった。

そういえば、あのゲームでも継続ダメージ(大出血や毒)を受けると潜伏スキルが解除してしまう設定だったことを思い出した。

そんなところまで忠実でなくていいのにと悪態をついてしまったが、覚悟を決めて治療に取り掛かる。

見つかるのが先か治療完了が先かの出た目の勝負である。アタシはすねに突き刺さった矢に手を掛けて引き抜いた。



アタシは異世界は危険と言いつつも、圧倒的な力である気を使いこなせるようになって増長していた。それは素直に反省するしかない。

その為、安全対策を怠ったことによりこんな目にあってしまった。何故ならばこれは防ぐことが出来た怪我であるから。

樹利亜の戒めから脱出する為に、すね当てを溶かしてしまったのに、そのまま王都から飛び立ってしまった。

あれだけ縁の下の力持ちと自分で評価していたのにも関わらずにだ。

その為、王都から出て森に着いたときに地上に降りて歩く事をためらって近くに見えていた山まで空を飛び続けることにした。

そこでゆっくりすね当てを新調しようと考えていたからだ。森の生き物に狙われるかもしれないとも考えずに。

そして射かけられた矢を回避するために加速したのもミスである。あの場で気を厚くまとえば上空に打ち出された矢程度なら弾き返すことが出来たはずだ。

なのに緊急加速するために足にまとっていた気を足裏から放出してしまったことにより気が無くなり、結果、矢が突き刺さってしまった。

それでもすね当てがあれば問題なかったはずである。

すね当てを着けなかっただけで、簡単にピンチに陥ってしまう。いくら強くなった実感があってもアタシはこの世界で生きるには、まだまだ弱い存在であると自覚せざるを得なかった。


ゲームの設定通りならば毒の治療も包帯で可能である。ただ治療には時間がかかる。矢を抜いて包帯を巻き終えてから暫くして身体から毒が消えたようだ、下半身が動かせるようになった。

次に矢がささり痛みを訴えてきている傷を治療しようと包帯を巻いているところでタイムアップのようだ。

一回目の回復包帯巻きで痛みはなくなったが、完治には後2回巻かなければならない。

現状は痛みがないおかげで動くことは可能だが、高速戦闘は無茶である。

アタシは潜伏スキルを使い気配を絶つ。


ハンターは長弓を背中に背負い短い弓を手に周囲を見渡している。

緑濃く暗い森の中で暗い緑色の服装は目立たない。何となく輪郭が掴める程度である。

弓を持つハンターは少しずつアタシの隠れている草むらに近づいてきている。なんでだろうと思ったが、よく見れば一目瞭然である。アタシが逃げた軌跡通りに地面が荒れているからである。

どう考えても見つかってしまうのは時間の問題だ。なにせ潜伏スキルは、そこに居ると確信して調べられたら解除されてしまうからだ。

アタシは意を決して立ち上がり自分は鳥ではなく人間ですとアピールした。


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