王子と魔王様との関係
アタシの木の上生活は3日目に突入だ。
ペガヌスに聞いたことで、疑念を感じたアタシはラーディッシュ王子に直接確認しようとしていたが、樹利亜に聞けば事が足りることに気がついた。
聞いてみればやはり正解であった。
王都に魔王様ことヨミさんが立ち寄って、ラーディッシュ王子に闇の魔道具を差し出して言ったそうだ。
「私は神と同じ様な存在だ。この国は破滅に向かっている。この国を破滅から回避したいのならば、私に忠誠を誓え。
さすればこの国は破滅から救われた上に、尽力つくしたソナタの物になるだろう」と。
ここで音声が途切れた、映像は続いているのだが。
突然自分の私室に現れた神と名乗る黒マントの子供。怪しいあからさまに怪しいと感じたらしく、ラーディッシュ王子は抜刀してまで拒絶したがあっさり剣を弾き飛ばされベッドに押し倒されていた。
ベッドの上では体術による格闘が続いていたが、ヨミさんが勝利したようだ。マウントポジションをとっている。
その後、敗者であるラーディッシュ王子は最後にビクリと大きく動いた後、動かなくなった。
そして闇の魔道具をラーディッシュ王子の首にかけるとヨミさんはお辞儀と共に何かを話してから部屋の窓から出ていった。
音声は復活したが、ラーディッシュ王子の荒い息継ぎだけだ。こんなもの聞きたくもない。
途中の音声が無いのは、ヨミさんが防音の魔術か何かをしていたと考えられる。
樹利亜も会話が聞こえなかったことをしきりに残念がっていたが、ラーディッシュ王子は抜刀までして戦っていたのだから、そのままでは兵隊が物音に気がつかないはずがない。さすがはヨミさん、対策はしっかりしてからの強襲のようだ。
そして、ペガヌスに闇の魔道具はどこで手にいれたのか聞いた時に、黒のマントと共にアタシと同じくらいの神の様な者と名乗る子供から貰ったと言っていた。
これですべてが繋がった、二ヶ月前に復活したヨミさんは西に向かうと言っていた。そして力あるものに忠誠を誓わせろとも。
クレーターから西にあるこの大きな国に立ち寄ったのは間違いないだろう。そして力あるこの国を手中に納めるための布石を打ったと考えられる。
そうすると、この国に入ればヨミさんに会えるかもしれない。
会って話しをしたい気持ちはあるが闇魔の魔王様として動いているのであるならあまり関わりたくない。
アタシはアタシでいたいからだ、下手に接触すると取り込まれてしまうかもしれない。せめてヨミさんと同等になれる力をつけてからでないといけないだろう。
ってアタシは勇者ではない。ただの冒険者であり旅人である。ヨミさんを止めるのは、この世界の勇者に任せよう。
うん。それがいい。
アタシはそう結論付けて、樹利亜にこの国から出る前に一度挨拶に寄るからねと約束して、長々といた木の上生活から地に降りた。
そして元の目的であるクラウさんのリストバンドのバージョンアップをするために、潜伏スキルを使いバーン家に侵入した。
今の時間は19時過ぎである。バーン家にいた頃のスケジュールならばクラウさんは自室に居るはず。振動の反応もあるから間違いないだろう。
アタシはクラウさんの部屋を外から覗くことにした。
振動の反応の通り、一人でベッドに腰かけて、うつむいている、なので予め用意していたメモ紙を窓の隙間に差し込んで、窓を軽く2回叩いた。
叩く回数に拘りは無いけどコンコンがセオリーでしょう。
因みにメモには『窓を開けて欲しい。こっそり来ましたから騒がないでね。マッキー』と書いてある。
クラウさんはメモを見るなり窓を勢いよく開け放ち周囲を見回している。
アタシは窓の上にヤモリのように張り付いていたから良かったけど、左右にいたら窓と壁の間に挟まれていたよ。まったく。騒いだら駄目って書いたでしょぅに。
そんな事をアタシは口には出さずに、クラウさんの部屋に侵入を果たした。
その時に、廊下側の扉がノックされて「何かありましたか」と声が掛かった。
クラウさんが「部屋の空気を入れ換えようとしただけ。すぐに閉めるわ」と返事していた。
すぐとは言っていたが、なかなか窓を閉めなかったので、潜伏スキルを解除して声を掛けた。
振り返ったクラウさんの目に涙がたまっていく。慌てて世界共通言語である、人差し指を立てて口に当てて「シー」と言った。異世界でも通じるか心配であったが杞憂のようだ。
クラウさんは目に涙をためたまま両手で口を塞いでいた。
アタシはこんなこともあろうと準備していた消音の魔道具を部屋の四隅に置いて小声で「クラウは元気にしていたかい」と呟くと、クラウさんはいきなりアタシを抱き締めてきて大きく深呼吸しだした。
すごく鼻息が荒いけど大丈夫かしらと心配になったが「元気だよと答えたいところだけど、体調不良なの」と小声で返してきたので『騒がないでね』は覚えているようだ。
って体調不良とは心配である。どうしたのかと聞くと。
状況と症状からすると闇の鐘の音にやられてしまっていたと判断せざるを得ない。
やはりアタシの渡した魔道具は効果を発揮できなかったようである。
その為に来たのだから、まずはしっかり仕事をしよう。
クラウさんにリストバンドを見せて欲しいとお願いした。




