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名前を残すのも大変だ

ココアやチョコレートが魔力を吸収し蓄積出来る事がわかってから1週間経ちました。

あの時はシリアスに考えていたのだけど、悩んでも意味が無かったと言うより、王都の研究者達を舐めていた悩みであった。

チョコさんが若返ると言うか黒髪に戻り、しわが薄くなった事件の前日に甘い香りのする飲み物を飲んでいたことが、兵隊さん達からの報告に上がっていたようで、すでに調査されていたという。

研究者達が調査研究のターゲットにすれば、アタシのやったような実験なんて当たり前に済ませて、更にカカオバターの抽出量による魔力の吸収率や還元率まで調査研究済みであるという。

2週間でよくやったと言うべきか2週間も掛かったのかと言うべきかわからないが、とにかくアタシが、言うか言わぬべきか悩んでいる間にココアの効用をチョコさんに知られてしまっていたと言うことだ。

アタシが迂闊にココアを披露しなければ良かったのだけど、コーヒーの実と間違えただけとは言っても、カカオの実はすでに見つかっていたのだから、いずれは誰かがたどり着いていたのだろう。発見が早いか遅いかだけであったと思うしかない。

それとアタシが知らない間に、カカオの実に関してひと悶着あって。ここ最近、研究の成果を出せずに低迷していた研究者達は発見したのは自分たちだ、だから我々の手柄だと『魔力の実』とか『魔回復の粉』とかセンスの無い名前を付けて発表しようとしていたが、チョコさんが発表前に気付きこれは『カカオ』、『ココア』と訂正させた。

それは人神であるチョコさんが、研究所に乗り込み自分の知り合いが発見して命名したのだからと押し切ったらしい。チョコさんは多分『ココア』の事を『魔回復の粉』とは言いたくなかっただけと考えられる。

発見者は『人神の友』と言う形で申請、登録された『カカオ』『ココア』であるが、それは食材としてでしか認可されなかった。

なぜならチョコさんはリラックスできる甘い香りのする飲み物としか報告していないからだ。したがって魔力吸収還元の力を発見したのは王国研究者達の手柄であると。さすがにそちらはいくらチョコさんが人神であっても筋が通らないのでひっくり返すことが出来ずに王国研究者達の名にて申請、登録されたそうだ。


「ココアと言う名前を守れただけでも良かったね」と、チョコさんをアタシが慰める事になったのは謎である。

それを踏まえても、アタシはチョコさんが黒髪になった理由を説明しなかった。生あるものはいつかは死ぬ。それが早いか遅いだけである。気にしてはいけない。気にすると言うことは、しがらみが増えるということだからだ。王国にこれ以上関わらないつもりなので、しがらみは増やさないに限る。


話しは飛ぶが、ラーディッシュ王子とクラウさんの結婚の日取りが決まったらしい。それは3ヶ月後と言うことだ。でもアタシはそこまで居る気はないので見ることはないが、クラウさんのリストバンドの修正はしたいし。ラーディッシュ王子にも聞きたいことがある。何とかして両方済ませて、旅を再開したいところである。


そんなんでまずはクラウさんのリストバンドの修正しようと、バーン家に足を運んだら、えっと。

黒山の人だかり、じゃなくて黒マントの人ばかり。

なんと王都内で戦闘している。巻き込まれたらたいへんだと思いアタシは以前にもお世話になった高い木の上に登り様子をうかがう。


ちなみにこの高い木は、チョコさんから聞いたのだが、ここに王国が出来る前から存在していて、どんな屈強なきこりが切ろうとして斧を振るっても切れず。逆に弾き飛ばされてしまうらしい。更に魔法でも魔術でも火をつけても燃えず、火をつけた相手を燃やしてしまうらしい。木に登ろうと手を掛けても登れないという不思議な木らしい。

そんな不思議な木なので、いつからか王国を守る御神木として崇められていると言うことだ。どうりで貴族屋敷が連なる一等地に不自然に木が生えている訳だ。

その時は「不思議な木だね」とチョコさんに合わせていたけど、よく思い出してみればアタシ登れたよね。そして今も登れているし。

もしかして当時は不思議な木だったとしても今は通例にしたがってチャレンジする人がいないから知らなかっただけで。何年も経っているから、この木も力を失っているのではないのかと。


まあ。だからどうしたって事だけど単なる豆知識って事でご容赦を。

バーン家の状況を見てみれば。兵隊さん達と黒マント達が至近距離で魔術を撃ち合っている。黒マント達は口々に『闇魔』の為にと叫んでいる。

『闇魔』とバーン家になんの繋がりがあるとでも言うのか。そういえばクレーターの麓でクラウさんが黒マントに捕まった時に、生贄に選ばれたから感謝しろとか言われたと聞いた記憶がある。

そうすると、王子と結婚すれば住居は王城となる、黒マントが襲撃できる場所ではないから『やるなら今しかない』と言うことなのだろうか。


それにしても馬鹿正直にバーン家の正門から突入しようだなんて黒マント達も考えが無さすぎる。時間が経てば経つほど近隣貴族なり警備兵なりが集まり、どんどん不利になるというのに。

こういうのは、正面から一度大きくぶつかり兵隊をおびき寄せてからすぐに逃走して。屋敷内の兵隊を減らして。その隙をついて少数の人間での襲撃をかけるべきである。

って燐家から突入している黒マントがいるよ。正門と裏門に兵隊が多数いるので真ん中あたりに居る兵の密度が薄い。

気が付いた兵が黒マントに攻撃をしかけるも避けられて屋敷に取りつかれた。


黒マント達はとうぜん扉を叩き壊して屋敷内に侵入していったよ。


これってまずくない?




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