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真っ黒マントはすごい

潜伏スキルが解除されていたから、見つかったのは仕方がない。

なにせ、こんな目立つ鐘の側に真っ白なマントを着た如何にも怪しい者が居るのだから。

白マントで見バレしそうだが誰だと聞かれたからって素直に答える必要はない。空でも飛んで逃げてしまえばよい。だが逃げるをすぐに選択できない理由がある。


それは『何をしている』ではなく『何をした』と聞かれたからだ。

鐘に付いている『闇』の魔道具はヒビが入っている。アタシの『聖』の魔道具の余波により壊れたのだと想像できる。

このヒビは至近に居るアタシだから見えるが、少し離れれば見えない程度にしかわからない。

なのに『何をした』と聞かれたと言うことは、『闇』の魔道具が壊れたと知っている存在としか考えられない。

アタシが視線を向けると、そこには真っ黒なマントを着た何かが宙に浮いていた。

サイズはアタシより一回り大きいくらいか。それほど大きくない。

空中に居られると振動の反応はとても鈍い。不明な存在に対して闇雲に対応するのは危険でしかない。

この世界には空中に浮く魔術は無いことを知っているアタシからしたら、こんな事が出来るのは魔王の関係者だとしか考えられない。

でも元から魔王ことヨミさんと喧嘩する気は無いので「答えても良いけど。ここは目立つから場所を変えませんか」と質問に対して提案をする。


すると暫く考えていたようだが着いてこいと手振りをして、『闇』の魔道具を鐘から取り外して北の方向に飛んでいった。

おい。当たり前のように飛んでいったが。そんな飛行術は普通出来ないぞ。

置いていかれた感満載だが、地面を走って移動なんてしていたら見失うと思い。アタシも飛んで着いていくことにした。


着いていく間に、真っ黒マントは飛行速度を加速したりしていた、アタシの実力を探るためだろう。だけどその手には乗らない。マイペースで着いていったら暫くして諦めたようだ。同じ速度で飛び始めた。今の速度は全力の1割程度だ。せいぜい過小評価するがよい。

いくらヨミさんと喧嘩する気が無いと言っても、情報漏洩は最小限に留めておくべきである。

真っ黒マントは王都の北にある森の中にあいた草原を指差した。

これで真っ黒マントは人型であると確信出来た。異形な生物だったらどうしようとも思っていたから少し安心出来た。

草原の真ん中で少し距離を取り同時に着地する。アタシは飛行中にホウキを取り出しておいた。

先ずはご挨拶からだ。お約束を使わなければなるまい。

「ここまでの案内。ありがとうございます。では先程の質問なのですが、先ずは人の名前を聞く前に、己が名乗るのが常識ですよ。と解答致します」

やっぱりこれをやらないとね。お約束と言うのは筋が通っているから使われるもの。良く使われるからお約束なのである。


「それは失礼した。私の名前は『ペガヌス』魔王軍第253部隊所属疾風のペガヌスである。

もう一度聞こう、お前は誰だ。『闇』の魔道具に何をした」


えっと。情報供給ありがとうございます。でも色々と突っ込みどころ満載なのですが。でも今はヨミさんの関係者だとわかればいいか。

「御丁寧にありがとうございます。アタシは『白雪』と言います。一介の冒険者です。アタシには鐘の音が耳障りだったのでつい反射的に壊してしまいました。申し訳ありません。魔王様とは縁があって知己であります。御元気でいられますか」


魔王様の知り合いと言えば、いきなり戦闘ということはあるまい。

と、思っていたのだが。

「魔王様は元気かだと。おかしな事を聞く。魔王軍に魔王様と呼ばれる存在なぞいない」


えええ。魔王軍なのに魔王様が居ない?じゃあヨミさんは何なの。お供の二人が魔王様と言っていたはずなのに。おかしいな。もう少し情報を得るためにも。

「魔王様ってヨミ様では無いのですか?」

質問をしてみた。

「ヨミ様?誰だそいつは」

失敗した。ヨミさんとは関係ない軍隊だったのか。そうなると。

「この嘘つきめ、世界の平和と均衡と調和を得るために賜った闇の魔道具を壊した責任はとって貰うぞ」


やっぱりそうなるよね。


これは不味い逃げるか。

と、全身に力を込めた瞬間。

「逃がしはしないぞ。私は疾風のペガヌス。私からは誰も逃げられない」と真っ黒マントを脱ぎ捨て全身があらわとなる。


ちょっと待て、真っ黒マントの時はアタシより一回り大きいくらいしかなかった筈なのに、せめて脱いだらアタシ凄いのよと前振りが欲しかった。

だってこの生物、身長2mは越えているよ。そしてどう見てもコボルト君である。デカ過ぎてあのワンコ感はまったくなくなっているけど。

鋭く長い爪、むき出し牙と、つぶらな瞳、赤毛と他にも突っ込みどころが満載である。

鑑定結果は

『コボルトキング・グランド&エアマスター』

すごく強そうな名前と称号だ。

しかもこんな強そうな称号を持った魔物が少なくとも253部隊いると言うのだから魔王軍とはいったいどんな強力な軍なのであろう。


真っ黒マントを脱ぎ捨てた時のインパクトについ鑑定してまって留まってしまったことにより。逃げるタイミングを失った。

「魔王軍にあだなすものよ。私の爪に引き裂かれるといい」


そう言い放ちつつ突っ込んできた。


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