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道具作りと鐘の音

良く考えたら、チョコさんの住む人神宮の台所を借りる必要は無かった。

別に王都内の宿でも、それこそ外だって良かったのに。そうすればこんな事にはならなかったはずだ。

でもアタシは最近細かい判断ミスや短絡的な考えが多すぎる、油断や相手を嘗めている訳ではないのだが、正直に言えば自制が出来ていないとしかいえない。自制が出来ていない状態で生きていけるほど、この世界は甘い世界ではない。


ゴーン。

翌朝、早朝から何時も通り鐘が鳴った。時間は6時である。この鐘は1時間毎に鳴る。王都に来た初日にバーン家で待ち時間をカウントしていた鐘である。

気にしなければ気にならないのだが、一度気になると1日気になる不思議な鐘の音である。

チョコさんも同じ意見で、今日は気になると言う。アタシだけでは無いことに安心はしたが、1日中気になると言うのは集中が途切れると言うことである。その日は魔法を使わないでココアとカカオバターを作ることにした。前回は土魔法を駆使して抽出したから、比較するために魔法を使わない物を作ることにしたのである。これで違いがなければ次はカカオバターの抽出量を変えて見ようと考えている。

ゴーン。

7時になったようである。

ここまでで物作りの能力を駆使してカカオバターを抽出する道具のパーツを作った。

ゴーン。

8時になったようである。

パーツを組み立てて動作確認をしている。

ゴーン。

9時になったようである。

思ったような動作をしなかったので修正をしていた。

ゴーン。

10時になったようである。

修正したが上手くいかずにイライラが積み上がる。

ゴーン。

11時になったようである。

パーツの強度が足りなかったようで壊れた。作り直しである。

ゴーン。

12時になったようである。

再び壊れた。イライラも最高潮に達して。何でこんなに真剣に作っているのかと自問自答していた。

ゴーン。

13時になったようである。

今日はダメだと匙を投げた。本当にこの鐘は作業に邪魔である。昨日も一昨日も鐘が鳴っていることさえ気にならなかったのに、しかも防音が効いている人神宮で。

あれ?防音が効いている部屋に居るのに何故こんなにもはっきり聞こえるのだろう。

ゴーン。

14時になったようである。

今回は意識して鐘の音を聞いてみた。するとおかしな事に気がついた。

音とは空気を伝わる振動である。その振動が鼓膜を震わせることにより音として認識出来るのである。

今回、意識して音を聞いたのだが、この音は鼓膜を振るわせる事により聞こえていた訳ではなく。脳に直接伝わってきていたということに気がついた。

全身を集中させて振動を感知しようとしたのだが、反応を感じることが出来なかったからだ。

もしかして魔道具の類いか?鐘の音に不快音を混ぜて発振しているのかもしれない。

長期間この音を聞かせてこの王国に住む人々の冷静さを奪い。攻めやすくするための策略なのかもしれない。

もしかしたらアタシもこの音にやられていたのかもしれない。

どうでもいい。とか、まあ、いいか。とか王国に来てからのアタシは今までにあまり使ったことのない考えが良く出てきていた。

アタシはずっと王国や貴族に興味が無いのだろうと思い込んでいたが、そのように思考を誘導されていたのかもしれない。


その事に気がついたからと言って、王国や貴族に興味があるのか改めて考えたが、やっぱり興味が無いことがわかった。


アタシは王国には関係無く、鐘がどんな魔道具なのか興味を持ち見に行く事にした。

良く思い出してみると鐘の音が気になる日は3日置きのようだ。そうなると、鐘の魔道具は魔力を貯めるのに3日掛り1日で放出後にまた貯め始めるサイクルの代物だと考えられる。

だとすると、鐘の魔道具を仕掛けた者は、すでに近くに居ない可能性が高いチョコさんに聞けば1ヶ月以上前から気になっていたと言うことであったからだ。

アタシは魔道具を見たいだけだから、監視者なりがまだ居たら困ってしまう、だから居ない方が都合がよいのである。

見た後に、詳細をチョコさんに伝えれば、王国で処分してもらえるだろう。アタシは、さっそく現場に向かった。

時刻を報せる鐘は、鐘突堂にあった。特に高い場所にある訳でもなく、至って普通の建物である。


さっそく建物の外壁を登り鐘にとりついた。見た目は日本の鐘っぽく厚みもある。ちょくちょく日本とか東洋系のテイストが混ざっているのは魔王様ことヨミさんの教えなのかしらと思う今日この頃である。

さっそく調査だと意気込んでみたけど、それはあっさりわかった。だって、どう考えても後付けの物が付いている。しかも堂々と『闇』って書いてあるし。

アタシはまず鑑定を行う。

『闇の魔道具

 能力 不明』

いつも通りのクオリティーだ。やはりアタシが知らない物は相変わらずわからない。


アタシは魔道具には触れずに集中して待つ。何故ならもうじき。

ゴォォーン。

15時になったようである。

さすがにこれだけ近いと大音量により耳鳴りがする。

でも闇の魔道具が発動するところを見ることが出来たので、色々とわかった。

『闇の魔道具

 鐘の振動を取り込み闇の波動を発生させる。

 その波動は人の心に闇を産み、負の感情を増幅する。

 範囲が広い分、拡散されるので効果は低い。

 至近距離で聞いた場合、注意が必要である』


あ。至近距離で聞いてしまった。注意しなきゃ。注意?注意って何に注意すれば良いのよ!


その時に心の中に急速に広がり始める闇魔を感じた。これってヤバイ奴じゃないか。と慌てて魔道具を取り出して発動させる。

すると心に急速に広がり始めていた闇は小さくなっていき消えた。


危なかった。こんな事があろうかと考えて準備しておいて良かった。その魔道具はクラウさんに渡した『聖』の魔道具。

前回の闇魔との戦いは『聖』の魔道具を持ったクラウさんのお陰で助かったからだ。この魔道具は『闇』を祓うことに特化させている。使用したのは初めてだが魔力の消費が激しい。アタシの保持魔力の半分とは言わないが、かなりの量を使用してしまった。

今後、使用する場合は魔力の残量に気をつけないと、闇を祓えても倒れてしまうかもしれない。

そう言えば、クラウさんは見せたいものがあると言いながら探している間に寝てしまったとか言っていたけど、

もしかしたらアタシを助けるときに魔石に含まれている魔力だけでは足りずにクラウさんの魔力をごっそり持っていったのではなかろうか。

貴族はプライドの高い生き物だから人前では耐えていたが、一人で探し物をしているときに、気が抜けて寝落ちしたとか。

だとしたら、クラウさんのリストバンドを改良する必要があるかもしれない。

でもどうやってやろうか。

そんな事を考えていたら、うっかりしていた。

『聖』の魔道具を使った為に潜伏スキルが解除されていたのだ。それは、誰にでもアタシの姿が見えると言うこと。そうなれば当然。


「お前は何者だ。何をした」


やっぱり見つかった。

見つかったが。でもおかしい。


アタシは声がした方に、視線を向けた。



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