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チョコさんに起きた事件

アタシは驚愕している。

そんな事が本当に起こるのか?

いや、現実にそれは起こったことだ。そのことは受け止めよう。でもそもそもアタシは色々とスルーし過ぎているのかもしれない。だって……。


アタシは明かりが灯っているチョコさんの部屋を覗いた。その姿は潜伏スキルを使っているので見られることは無いが、もし見られていたなら白い巨大なヤモリがへばりついていると思われるだろう。窓の位置が高いのが悪いからスマートに覗けないのだ。それは仕方ないことである。


だがおかしい。部屋にチョコさんがいない。部屋に居るのは司祭か何かわからないが、きらびやかな服を身にまとっている男性と、サポートしている女性。警備の兵隊さんと小さな黒髪の女性しかいない。

背格好から黒髪の女性がチョコさんに思えるけどチョコさんは加齢により白髪である。だから違うはずなのだ。はずなんだけどチョコさんの部屋で司祭らしき人が見ているのは黒髪の女性である。

意味がわからない。人神宮のチョコさんの部屋で他人が治療なのか検査なのかを受けるなんておかしいと思って見ていると、司祭の指示で黒髪の女性がその場で一回転した。

アタシはその顔を見て驚いた。シワが無かったがチョコさんの顔であったからだ。アタシはヤモリのように張り付いたまま固まってしまったが気を取り直すために深呼吸をする。

チョコさんに似ているだけできっと別人。そう。娘だ。きっとそうだ。隔世遺伝か何かで、そっくりさんがたまたま来て。何かしらの体調不良が起きて。司祭さんが呼ばれたのだ。うん。きっとそうだ。そうに違いない。


でも、そうすると先程の兵士達の会話と繋がらなくなるよね。黒髪の女性はチョコさんなのだろうか。

黒髪になりシワのない姿は、背が低いこともあいまって少女にしか見えない。これが本当のロリバ……、いや最後まで言ってはいけない。その言葉は必ず未来の自分にも言われる言葉なのだから。少なくともアタシは言ってはいけない。

チョコさんと思われる人物は文句を言っているように見える。その剣幕に司祭さんらしき人は後片付けをしはじめた。

全員を見送った後、最後に兵隊さんが一礼をしてから部屋を出ていった。チョコさんらしき人は大きなため息をはいている。

本当にチョコさんらしい、アタシは台所から侵入して念のために振動感知を行う。よく知っている反応が一つだけであるからやはり黒髪の女性はチョコさんで間違いないみたいだ。

アタシは台所の扉をノックして三三七拍子で叩くと、同じく三三七拍子が返ってきた。これはチョコさんと決めた信号である。日本人なら誰でも知っているが異世界では謎の信号であると思う。


アタシが扉を開けた瞬間に黒髪の女性が抱き着いてきた。その動きは見た目通りに機敏で、とうていご年配とは思えない。その後、チョコさんの話しを聞いた。

チョコさんの話しは良くまとまっている。原文のママで良いくらいだ。

チョコさん曰く、朝起きたら、こうなっていた まる

さすがに、纏めすぎなので詳細を聞くと。

昨夜、夕飯を食べた後にチョコレートとココアを飲んで寝た。懐かしい元の世界の味であるので少しずつ味わいたかったが、日持ちしないとも聞いていたので一日限りの夢ではないと証明できるように1個だけ残して食べてしまった。

そして朝起きたら最近感じていた老いによる身体のダルさが無くなっていたので不思議に思い鏡をみたら若い頃の自分になっていた。300年以上生きてきたからには、老いは当たり前だと思ってはいても美しくいたいと言う女性の本能は変わらない。鏡を見て「これが私?」と思っていたら、侍女が扉を開け放って呆然としていた。それからは兵士は集まる、国王や王妃や王子も代わる代わる訪問してくる、しまいには神殿長が来訪してセントラル王国の女神様が若返ったと崇めてくるしまつ。

でも目的は原因を究明するためだと気がついたので先程追い払った所だと言うことであった。

チョコさんはココアもチョコレートの話しもしていないそうだが、ココアの事は兵隊さんが知っているので、いずれ報告としてあがってしまうだろうと考えられる。

だからと言ってココアやチョコレートを食べたら若返るなんて、思いも付かない事である。

しきりに特殊効果がバレてしまってごめんなさいと謝るチョコさんに文句を言う気はさらさらない。

そもそもアタシが食べたところで何にも起きていないのだから。偶然としか思えない。逆にこれが広まればチョコレートの開発が進むのではないかと期待できるので、チョコさんに渡したレシピを公表しても良いと伝えておいた。


それにしても、アタシがあの時疑問にも思わず、スルーしていたのが悪いのだが。世界の王はここ数万年は干渉していないと言っていたのに、

アタシが1年前、チョコさんは300年くらい前に、この世界に来ている。それは何故なのだろう。

3千万年後の約束を守ってくれた世界の王がそんな詰まらない嘘を付く訳がない。

それに、この世界に生きて来ることができた生物は数十年くらいしか生きていないと言っていた。それが300年以上生きているとは、世界の王の科学技術からすると誤差としては大きいような気がする。

更に300歳以上ってなに?

異世界転移の特典でもしかして元の世界でも架空の生物であるエルフとかの種族にチョコさんはなっているのか。耳は長くないけど。


まさかと思うけど、世界の王が知らない場所で元の世界への干渉が続けられているのかも。


そう考えれば理解は出来なくとも納得は出来る。

やだなあと思いつつもアタシはまだ見ぬ元凶の存在を感じていた。



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