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嫌がらせは隙と共に

ラーディッシュ王子は本棚の扉を開いて佇んでいる。

まったくなんて人騒がせな。どんどん近寄って来たから緊張の余り、自分から姿を現してしまいそうになったじゃないか。


でも本棚の上から足を投げたして居なくて良かった。そんな体勢であったら扉が開かれた時に足がぶつかって潜伏スキルが解除されていたに違いない。

そんな事で、ほっとしている時に突然。


「昨日からいったいどうなっているのだ!」


王子がキレた。もう落ち着いていると思って油断していたところでキレだしたからアタシも驚いてしまった。驚いたからと言っても声を出すほど驚いてしまったわけではないが。のげぞるように動いてしまっていることを自覚していた。

これは不味いと自分の姿を確認すると、やっぱり見える。ってことはスキルが解除されているってことだ。慌てて潜伏スキルを掛け直す。

運良くと言うか、ラーディッシュ王子はアタシに背中を見せて地団駄を踏んでいる。地団駄を踏むって。素で本気でやっている人って初めて見た。


余りにも大きな音で床を踏みつけているから、異常を感じた人が集まってくる。扉の向こうの廊下に人の振動が集まって来ている。これは。騒動になるかと期待していたら。「如何致しましたか」と声とがした時に冷静さを取り戻したようだ。

「何でもない。騒がせた」

と王子は返事を返していた。


ブチ切れたまま醜態を晒してくれれば最良の結果だったのに本当に残念である。


何がラーディッシュ王子に止めを刺したのかと考えると。そう言えば一番単純な嫌がらせだが本の入れ替えをしておいたことを思い出した。

大々的にはやっていない。背表紙が磨れている本を隣の本棚に移しておいただけだ。磨れていると言うことは使用頻度が高いと言うことだからだ。

今回は短期決戦である。いつ読むか分からない本に罠を仕掛けてもアタシの滞在中に読む可能性が低い。だから確率が高そうな物を選んでピンポイントに仕掛けたのだが、それで正解だったようだ。

ラーディッシュ王子よアタシはこれで本当に満足したよ。嫌がらせの性質上反省は促せないが、これに反省して高慢な態度を改めてほしい。ってやっぱり無理かな。


落ち着きを取り戻したかのように見えるラーディッシュ王子だが動きが荒い。見付からない本に内心はイラついているようだ。反対側の本棚を探しているため見付からないのは当然なんだが。

そんな様子を眺めていると、再び扉をノックする音がした。

「何だ!」

イラつくのはわかるが落ち着け化けの皮がはがれているぞ。ほら、扉を開けた侍女さんだか使用人さんだかが怯えているぞ。

「悪い。何か報告があるのか」

お。謝ってる。王族がそんなに簡単に謝ってはダメだぞ。女性には優しく接するタイプなのか?

「国王がか。わかったすぐに行く」

どうやら国王様からの呼び出しがあったようだ。今日は残業しないで済んで良かった。アタシは、もうラーディッシュ王子にこれ以上の用は無いから、これでさようならだ。

楽しい1日をありがとうございました。くれぐれもチョコさんに迷惑掛けないように兄弟喧嘩はやめてくれたら嬉しい。

そうだ。予定より1日早いから離れる前にチョコさんにお別れの挨拶をしてから、この国を出ていこうと、王子が出ていったあと、昨夜と同じ様に警備の隙をついて脱出した。

人との接触を避けるために天井に張り付き移動して無事に人神宮に戻ることが出来た。

出来たのだが、なんだか騒がしい。チョコさんの身に何かあったのだろうか?アタシは台所の窓から中に入り、チョコさんの居るであろう部屋の様子を振動感知で伺う。


チョコさんの部屋には沢山の人がいることがわかったので扉に耳をあてた。

沢山の人が話しをしていることはわかったが、相変わらず聞き取れない。防音効果の高い扉が憎たらしい。

とは言っても、雰囲気的に喧嘩や切羽詰まった状況ではないみたいだから早くみんなが居なくなればそれでいい。だってチョコさんにちょこっと別れの挨拶をしたいだけだからね。

王国はチョコさんの決断しだいでどう転がるかわからないがアタシに直接関係があるわけではないしね。

台所にいても良いけど、いつ誰が入ってくるのかわからないからのんびり出来ないし、少し出ておこう。

アタシは打合せなのか会議なのかわからないが騒がしい場所の近くから場所を移すことにした。

あんまりうろつくのは良くないし。かと言って知っている場所は無いから近くの木に登った。ここなら誰かと出会すことはない、強いてあげれば気が付かずに近寄って来るのは鳥さんくらいだろう。

アタシは今日一日の事を振り返り一人で、にやついていた。きっと人見の悪い顔をしていたに違いないが、その表情はスキルのお陰で見られることはない。

そんな時に、見回りの警備をしている兵隊さん達が通り掛かる。

「……見たか。神人様が……」「……だなんて」「そう……だから神殿から急遽呼ばれそうだぜ」「大丈夫なのか。なんだかんだ言われていても、あの方は女神様なんだからな」「いくらお歳を召していようが。この王国を支えてきてくれていたお方なのだから」「だけどあんなことになって……」「……心配だ……」「……」


何があったのだろうか。立ち止まって話しをしてくれればいいのに、最初の方はアタシが聞いていないのと遠くで話していたから聞き取れなかった。

だんだん近付いてきたから話しが聞こえてきたけと中途半端にしか耳に入らなかった。

後半は建物の影に曲がっていってしまったからすぐに聞こえなくなってしまった。


チョコさんの身に本当に何かあったのだろうか。昨日はあれだけ元気でいたのに心配である。この世界の医者は神殿である。そんな人達が来たと言うことは深刻な状態なのかな。

こんなのんびり思いだし笑いなんてしている場合ではない。アタシは部屋の様子を見るために木から降りた。



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