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アタシと王子と観察と

深夜、夜警の兵士が廊下を歩き、角を曲がった。その時、誰も居ない筈の部屋の扉が開きそして閉じた。暫くして夜警の兵士が再び廊下を歩き角を曲がると合わせるように再び扉が開きまた閉じた。

こうして誰にも見咎められる事もなく、怪現象は起こるものである。現代日本では24時間監視カメラが設置されており、ごくたまにこうした怪現象が記録されるが、殆どの場合、記録された事も気が付かれずに新しい監視データに上書きされてしまっているのである。実は怪現象とは常に起こる身近なものなのであった。


なんてホラーっぽく始めたが、怪現象を起こした張本人は能天気にラーディッシュ王子の執務室でやったことを思い出しながら微笑んでいる。

昨夜仕掛けたイタズラのうち半分は元の位置に戻されていた。要するに戻された物は使用頻度が高いものであったと言うことだ。

なのでその備品は狙って僅かに動かしておいた。あまり極端に動かすと作為を感じられてしまうだろうからだ。例を挙げればペーパーナイフである。昨日はA引き出しに入っていたのをB引き出しに入れておいた。今日はA引き出しの左隅に合ったのでA引き出しの真ん中に置いといたと言う感じである。

そんな嫌がらせをしてから人神宮に戻り開けておいた窓から台所に忍び込み気分良く眠ることが出来た。

眠ったのは3日振りかな?


いくら夜遅くても朝日が昇る前に目覚めてしまう。そういう癖をつけたから良いのだが。アタシは台所で音を立てないように朝の体操をしてから保存食を口にした。

今日は朝から執務室で観察である。ラーディッシュ王子は無事にブチ切れてくれるでしょうか、とても楽しみである。


アタシはさっそく執務室に侵入し本棚の上で待機していた。朝日が昇り城内は慌ただしくなり始めた。王子は早朝から執務室には来ないようだ。まあいいや。のんびり待とう。アタシは朝の柔らかな日差しがゆっくり動いていく様を見ていた。


執務室の時計は7時を指している。元の世界ならまだ仕事の時間では無いがこの世界では日がある時間が主な仕事の時間である。日の出から2時間以上経っている事をから今日は寝坊助らしい。腹ただしい事である。

だが通常のスケジュールを知らないから王族の仕事とはもしかしてそういうものかもしれないが。


待っている間に2回ほど扉が開いた。その度に積み重なる書類。どうやら決済待ちの書類のようだ。

中々来ない王子に腹がたっていたが。仕事が貯まって行く様を見て気分は上々である。

8時を過ぎ9時も過ぎ10時になった時に、待ち人が来た。1時間置きに貯まる書類はすでに3山になっている。それを見た王子はげんなりしている。朝サボるからそういう目に合うのだ、自分の愚かさを自覚せよ。

ラーディッシュ王子は席に座り。書類の山の隣に置いてある封書を手に取り引き出しを開けた。

引き出しに手を突っ込んでいるが目は封書を見ている。

嫌がらせ成功である。

王子は引き出しに手を突っ込んで音を立てている。そして目線が下がった瞬間に ムッとした表情を見せた。昨夜整理し直した筈なのに有るべきところに有るはずの物がない。煩わしい。その表情から、そううかがい知れた。


小さな深呼吸をして気を取り直したようだペーパーナイフを取り出し、封書を開け内容を確認しはじめた。

内容に納得がいったのか大きく頷いて、羽ペンにインクを着けてサインしたが、途中で手が止まった。

昨日寿命が来たのであろう、ゴミ箱に捨てられていた羽ペンを拾い綺麗に汚れを落としてからペン入れに入れておいたのである。良く見れば先が短くなっているので使う前に気が付く筈だが、思い込みと言うのは見ただけでは気がつかない物である。

でも使えば違和感を感じる物。別にペン先を潰すとか割るとかはしていないから綺麗にサイン出来なかった訳ではない。だから実質的な被害は何もない。使い古しの短い羽ペンでサインさせただけである。再び ムッとしたようだ。羽ペンを折ってゴミ箱に投げ捨てていたもの。

次々に襲いかかるアタシの嫌がらせに耐えながらも書類の山は夕方には姿を消していった。

悔しいが己を律して、処理しきったことは天晴れである。事務処理能力が優れていることだけは認めてやろう。

だが、その顔はなんだ。まるで鬼の形相だぞ。あとひと押しで爆発するのではないのか?


日が落ちて新たな書類が来なくなり、今日の仕事をやりきった感を醸し出している。残念ながらいつものクールな顔に戻ったところを見ると今日は爆発しないみたいだ。


だが1日放映が早まったが十分にお笑い番組を楽しめたから大満足である。後は深夜まで仕事をしないことを祈ろうと思っていた時に、事件が発生した。


それは、王子が何やら書き物をしていた時に、急にペンを止めて。何やら考えはじめていた。そして何かに気がついたのかアタシの居る方を見出した。

今までそんな挙動はしたことはない。もしかしてアタシが居ることに気がついたのか。と思い、自分の姿を一応確認する。大丈夫見えない。

見えていないのに、こちらを見ながら尚且つ立ち上がり寄ってきた。

まさか、チョコさんのように特殊な能力持ちなのか。それで異常を感知したのか。王子はアタシの真ん前に来た。

そしてアタシを捕まえるように手を伸ばして。


本棚の扉を開けた。


なんだ資料を取りに来ただけか。

アタシは本棚の上で ホッとしていた。


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