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お婆さんとセントラル王国

「そこに居るのは誰だい?」


そう問われてアタシの頭の中は真っ白である。

お婆さんと目が合っている。潜伏スキルは発見されると解除されてしまう性質を持っている。何故なのかと問われても、元のゲームの設定がそうなのだからアタシにはわからない。

視線から目が離せなかったが、お婆さんの目にアタシが写っている。完全にアウトだ。

諦めて両手を挙げた。

それを見てお婆さんは目を細めて微笑んでいた。

微笑んでいるのだが隙がない。アタシは動けずにいると。「もう一度聞くぞ。お主は誰だい?」

そう言われても正直に答えられるはずもない。

だがお婆さんは答えない限り、にらめっこを止める気はなさそうだ。身バレしない程度に話すしかない。なんとか乗りきれアタシ。

「頭上から失礼致します。アタシは王国に対して弓引く存在ではありません。名は身を縛り付ける言葉。本名は言えませんが格好が真っ白なので『白雪』とでも答えましょう」


アタシってば何を言っているのよ。いくら何も考えていないからと言っても『白雪』はないでしょう。姫を付けなかっただけマシだけど。本当にアタシったらネームセンスが無さすぎと、自分に突っ込みを入れていると。

お婆さんは『白雪』に反応していた。


「そうか『白雪』と言うのか。偽名にしては良い名前だ。ふむ。懐かしい感じがする。最後に聞いたのはいつだったかな。そうだ幼稚園のお遊戯で女子のほとんどが白雪姫で魔女役は男子だったな小人は3人しか……お遊戯?」


え?魔女が男子だったの。って驚くのはそっちじゃない。今、凄まじく重要な単語が出てきた。『幼稚園』で『お遊戯』をしたって。このお婆さんはもしかしてまさかの日本人なの?って事は『白雪』だなんて連想しやすい単語を振ったら聞いてくるよね。


ほら。やっぱり。

「まさか、お主は日本人か?」

連想ゲームを先に展開していたから余裕でいたけど、実際言われると同郷の念が心に刺さってくる。駄目だ落ち着けアタシ。ここで口を滑らせたりしたら、たいへんなことになりかねない。身バレだけはなんとしても防がなければ。


アタシには出来る。そう絶対に出来る。「ニホンジン?なんのことかしら。人は本では無いですよ」と惚けることが出来る。

実践せよアタシ。そして今こそ乗り越えよ。いくら元日本人だと判明しても、王族に関わってはダメだ。

急いで展開したそんな自己暗示は、掛かる前に霧散した。


「そうだ。白雪よ質問がある。大雪山、大雪とったら?」

「ただの山」


「なんだやっぱり白雪は日本人か」

しまった。つい答えてしまった。思いきり身バレしたじゃないか。どうしよう。異世界で日本人とバレたら。バレたら?バレたからどうだって?何か問題があるっけ?


落ち着いて考えれば自分から日本人と吹聴していたなら、変な人と思われて問題がありそうだけど、日本人に日本人だとバレても問題は無い気がする。


場所を執務室からお婆さんこと『チョコ』さんの部屋がある人神宮に移した。当然、アタシは警備の兵隊さんに見られないように移動中は潜伏スキルを使って忍び足でゆっくり着いていくことになった。


部屋に入り潜伏スキルを解いてからソファーに座りお互いの話しをした。

アタシは簡単に記憶だけこの世界に来てしまったので冒険者として生活していると説明した。

『チョコ』さんは『千代子』さんと言うのだが『チヨコ』とは発音して貰えずに『チョコ』と呼ばれてしまったそうだ。

元の世界ではゆとり教育のさなからしい。白雪姫(女)10人と王子様(男8人女2人)10人と小人(男)3人と魔女(男)1人でお遊戯をしていた帰りに。

ピカッと周囲が光ったと思ったら気がついた時にはこの世界に来ていた。当時の王子の部屋に。

訳のわからない状況だったが王子が匿ってくれた。大人達に見つかったあとも王子が庇ってくれたお陰で何度かあった命の危険も乗りきることが出来た。

その後風魔法が使える事が分かると手のひらを返すように大事にされて王子と結婚する事になり子を産み育て、孫がまで出来た。王子は王様にり供に立ち並び執政を支えた。その王様が亡くなった時に次代に任せて表舞台から下がり地方で隠居生活をすることにした。

しかし100歳になっても200歳になっても見掛けは若いままで身体に不調もない。

数年に一度様子を見に地方から王都に来ることを繰り返していたら、その度に悩み相談を受けたり執政の方向を指し示したりしていたが。

我が子も孫も曾孫もみんな先立っていく。気が付けば300歳以上となっており数年前から一気に白髪となり老化が見えはじめた。子の世代も30を越えて、すでに居て当たり前である人神の存在であるらしい。

時代の王はある一定の敬意を払ってくれていたが徐々に比率も下がり数代前の王からは、目の上のたん瘤らしき扱いをしはじめた。

その事自体は気にしていなかったが現王は更に傲慢な考えを持っているので何度も言い聞かせていたがそれでも改心させることが出来なかった。

改心しない現王を早々と諦めて次代の子供達に期待をしたが、第1第2王子は現王に似て傲慢で好き勝手に権力を振るい続けている。

そんな王子達の中で幼い頃から聡明で期待していたラーディッシュ王子ではあったが。2ヵ月くらい前から今度は高慢な考え方をするようになってきたらしい。己の事より国の事を第一に考えているので上の二人の王子よりもまだましだが。普通に考えると次の王は第1王子だ。影になり支える事を選ばずに国が乱れる事は覚悟の上で排除の方向で動いているらしい。

王国に直接関与出来ないチョコさんは忠告をし、戒め続けている日々だと言うことだ。

とうぜん上の二人の王子にも忠告はしているが、やはり聞き入ることはなく、邪魔者扱いされている。更に自分が王になったら世界統一をするとか言っているしまつ。

伝説のエイヨウさんのお陰で周辺国家とも仲良く出来ていたので、少しずつでも長年の干渉により国のシステムは凝固に出来たと自負しているが、頭が駄目な考えを持ったらいくら手足が頑張っても国は死んでしまう。


「どうしたら良いと思います?」


チョコさんは元日本人だと言っても、幼稚園の頃にこの世界に来たのだから現代知識なんて殆ど持っていないのだろう。

更に言えば、この世界に来て300年。知識も教養もこの世界で覚えた物。もう完全にこの世界の人だと言えよう。

アタシとの繋がりは元日本人と言うことのみ。

同情はしよう。同じ立場となった時に、はたしてアタシはチョコさんのように根気強く国の為に尽力出来るかと言われれば答えはNOだ。すぐに匙を投げて逃げていたであろうから。

薄い繋がりの中でアタシはチョコさんに対して何処まで干渉するべきか、距離が測れないでいた。


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