カードの更新と預金額
高見の見物を決め込んでいたアタシであるが、騒ぎが広まる前に済ませられることは済ましておこう。
よく考えれば時間が経つにつれて行動がしづらくなるだろうからだ。
まずは商人ギルドに向かった。場所がわからない上に夜も遅いから難儀するかと思えば、城門近くの兵隊さんに聞いたら目と鼻の先にあった。
ギルドは基本的に24時間営業である。それは地方の小支店であっても同様である。
冒険者ギルドは常に魔物の襲撃に対応するためであるし、商人ギルドは新鮮な情報が命である。どちらも絶えず対応するためには24時間営業はとうぜんの成り行きである。
アタシは早速商人ギルドでギルドカードの更新をした。ついでに金貨10枚と銀貨50枚を引き出し生存確認と共に預金高の確認も行う。
はたして、金貨は10万枚を越えていた。
この3〜4ヶ月の間で厳密には違うだろうが単純計算で「氷」の魔道具が10万個売れた事になる。
それくらいなら、生活に直結する道具だから、一般化すればいずれは売れる数量だとは思っていたが、こんな短期間の内にだなんて生産がよく出来るなと購入する金持ちがたくさん居ることと二重に驚いてしまった。
魔道具を生産する為には魔石が必要である。新型水筒で使用するゴブリンの魔石なら10万個くらいすぐに用意できると思うが、それなりに効果を発揮する程度のサイズの魔石なんてオークを根絶やしにするつもりで狩らなければなるまい。
それとももっと効率の良い獲物がいるのだろうか?
まあ別にいいや。
そんな事よりまずは調味料を買っておかないといけない。旅に出る時には必須の重要なアクセントだからだ。
美味しい料理は心を広くするからね。服は自前、住は旅には不要、食が一番大事なのである。
と言うことで商人ギルドで夜でも営業しているお店を聞いてみたら、さすがは王都である。
深夜でも営業している店があるとはと驚いていたら酒屋を兼ねていた。
寝酒の購入や酒が足りなくなった飲食店からの追加が見込まれる、なるほど納得である。
早速、店内に入り調味料だけを購入していく。
知らない調味料があればどんな料理に合うのか教えてもらった。
都度メモを取りつつ鑑定もして記憶していく。
夜中に子供が一人で酒屋に来たので始め店長さんは『子供が寝酒かあ?』と何も売る気はなかったそうだ。
だか購入しようとする物は調味料だけのうえ、そな調味料の使い先を熱心にメモを取る子供に興味が湧き売ることにしたそうだ。
危ない危ない、遅くまでやってくれていた酒屋さんに感謝しようと酒の売上を伸ばす為に料理酒を買っておこうかと思っていたけど塩コショウ以外に多くの調味料があって後回しにしてしまったのが幸いしたみたいだ。
でも最後に料理酒も買ったよ。
別れ際にアタシの職業を勘違いしたのか「小さい料理人頑張れよ」と応援されてしまった。
今更、冒険者だとは言えずに「ありがとうございます。頑張ります」と思わず返してしまった。
酒屋の店長さんごめんなさいと心の中だけで謝って店を出た。
後は冒険者ギルドである。ギルドは門の近くにあることは見ていたので迷わず着くことが出来た。
因みに各種調味料は一部を除いて影魔法に収納済みである。
暗がりに身を潜めて潜伏スキルを発動させ、お着替えタイムである。
バーン家では白マントを着て過ごすことが出来なかったので緑の作業着を着ていた。さすがのアタシも貴族の屋敷の中で包帯水着でいられるほどの肝はすわっていないからだ。
元の世界でのアニメとかでは平気な顔して水着鎧とかいう防具の体をなしていない身体の線がくっきりなうえ、露出の多い格好をして街中だろうが王城だろうが関係なく歩き回っていたけど恥ずかしいとは思わないのだろうか?
しかも誰も文句を言わないのは何故だろう。対する王族や貴族はしっかり着飾っているのにね。
まあ、それも別にいいや。
包帯水着に着替えて籠手、すね当てを装着。頭に鉢巻き巻いて白マントをかぶる。冒険者モードの完成である。
潜伏スキルを解除してギルドに入った。
王都のギルドは外見は地味であったが、中も地味であった。
世界各地にある冒険者ギルド。その中でも重要な王都にあるギルドがこんなにも地味なのは訳があった。
ギルドカードの更新を依頼した後。待ち時間の間に受付の人に話しを聞いて知ったのだが。
その理由は王都では仕事がない為だというから単純明快である。
王都周辺では魔物が現れても兵隊さん達がすぐに対応するので討伐依頼はほとんどない。その為、本気で冒険者になるなら王都以外の他所に行く。
ここでは、殆どの場合書類の手続きだけしかすることはないと言うことであった。
それでも24時間体制とは、お疲れ様です。
ギルドカードを返却してもらい「こんな早朝に更新して下さって。ありがとうございました。」と受付の人にお礼を言って建物から出たところで暗がりに身を潜めて潜伏スキルを発動させて移動をはじめた。
今やれることはここまでかな。なんてのんびりしていたら正面から兵隊さん達が走ってきた。
ぶつからないようにゆっくり忍び足で右手の建物に添う。
兵隊さん達はアタシに気が付くことなく前を通過していって冒険者ギルド駆け込んでいった。
そしてすぐに出てくると「まだ近くに居るはずた探すぞ」と言って一人はアタシを追い抜いてバーン家の方向に走り去り。
残りの兵隊さん達は周囲を探すべく散っていった。
かなりギリギリだったらしい。兵隊さんと鉢合わせしなかった幸運に胸を撫で下ろして、アタシは忍び足でゆっくりセントラル通りを進んでいった。




