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アタシと貴族とその関係

ちょっとやり過ぎたかな?

脱力してしまったかのように座り込んでいる二人を見ながらそう思う。

最近のアタシは、こんな事が多い気がする。

でも直接の暴力で解決している訳ではないから問題にはならないよね。


アタシは返答によっては容赦するまいと意思の力を前面に出していた。

そのため、ふと気が付いた時にはブラウンさんとマリアさんを威圧をしていたようだ。


二人して顔をひきつらせて座り込んでいる。そんな二人を見ているとなんだか悪者になった気分になる。ダメだ私は悪者ではない。

高まる気持ちの隅っこで冷静さが顔を出した。

よく考えればこの二人は実行者だとはいえ、お上からの要請により足止めをしただけに過ぎない。

この二人から罪を問うならばクラウさんにも罪を問わなければならなくなる。

この計画を知っているか知らなかったのか解らないが足止めをしたと言う意味では一番の活躍をみせていたのは間違いなくクラウさんなのだからだ。


そう、だから間違ってはいけない。計画立案したのはラーディッシュ王子だ。罪を問うならば元凶に、矛先はラーディッシュ王子に向けなければならない。

何の罪にあたるのか判らないけどアタシが憤りを感じているのだから罪に対する罰を下さなければならない。

アタシは大きく深呼吸をして威圧を解くと二人はあからさまにホッとした表情をみせて立ち上がった。

安心したところで申し訳ないが罪を問うことは止めたが確認はしないといけない。

書類上だけだと言っても、アタシの母親と保護者となった二人だ今後のことを話し合わなければならないからだ。

子供っぽく「驚かせてしまってごめんなさい」と言って。話しがしたいからと二人にも席に座り直してもらった。そして。


「ラーディッシュ王子様のことは解りました。伯父様。かぁさま。聞かせてください。バーン家としてはアタシをどうするつもりなのですか」

アタシは皮肉を混ぜて話し掛けた。


いやはや高貴族とは言え権力を振りかざすだけの鼻持ちの高いただの人、先程ひきつった顔をして座り込んでいたのにアタシの皮肉に簡単に沸騰してきた。

あまりに簡単に沸騰してきたので演技かと疑ってしまうくらいであった。

曰く、王族に頼まれたからしかたがなく貴族にしてやったのだから頭に乗るなと。

曰く、貴女にかぁさまなんて呼ばれたくないと。


まあ。それはそうだけど。アタシが煽ったからとはいえ、責任のある大人ならばもう少し言い方があると思うのだが。

その後も、子供は大人の命令に黙って従えとか養ってやるのだから感謝しろとか言いたい放題である。

権力を傘にして上から叱り付け、そうすることによって縛り付けることしか出来ないのではなかろうか。

どうでも良いことなのだがバーン家のゆく末が心配になってしまった。


アタシは煽った責任を取るため、黙って聞いていたのだが。その姿を二人はアタシが服従したと考えたらしく。

手のひらを返したように今度は懐柔しはじめた。

「始めからそうして大人しくしていれば良いものを。王族から自由にさせろと指示があったからな、悪いようにはしない。ある程度までなら我が儘も聞いてやる。バーン家の娘として教育もしてやる。嫁ぎ先も選ばせてやる。それに…………」


これって飴と鞭のつもりなのか、何も出来ない子供なら良い待遇なのかもしれないがアタシには鞭だらけにしか思えないのだが。

それにしても、貴族と言う生き物はやはりネット小説で読んだ通り傲慢な生き物なのであろうか。

実例が一つしか無いからたまたまなのかもしれないが、やはり関わってはいけなかったのね。


アタシには二つの選択肢しか無さそうだ。

二人の言うことを了承して、黙って旅立つか。

二人の言うことを拒否して、すぐに旅立つか。

バーン家に居すわる必要はないのだから、どちらにしても旅立つことには変わりはない。

強いて挙げればバーン家に居れば、クラウさんとの婚姻の流れからラーディッシュ王子により接触しやすいと言うことはあるが、そんなタイミングではクラウさんに迷惑を掛けることになるだけだ。

すぐに旅立つならクラウさんに別れを告げられそうもないな。

そうなるとこの二人のことだからクラウさんがアタシのことを聞いた時にナイことナイことを言い訳にしそうだ。

それはそれで憂鬱な気分だが、あとでこっそり手紙でも忍ばせておけばいいか。

そうアタシが考えをまとめたころ。

「……と言うことだ。これからはバーン家の娘として恥ずかしい行動はつつしみ。バーン家の繁栄に努めるのだぞ。わかったな」

ちょうどブラウンさんの話しも締まったようだ。

それなら都合がよい。異世界トリップ小説伝統の一言を放つチャンスだ。

「なるほど、良い条件ですわね。アタシのような一介の冒険者からしたら身に余る程の条件ですわね。だが断る!」


ふふふ。言ってやった。

従順に話しを聞いている相手からのまさかの拒否宣言。逆らう筈がない相手から突然突きつけられた思いもよらない一撃を受け、二人して目を大きく広げて驚愕している。

ここからはアタシのターンのみだ。


「話しを聞きましたがアタシにはまったくといってよいほど利点がございませんわ。王子様にも伝えてありますがアタシにはすべきことがたくさんあります。それは王都で出来ることではありません。先程、ブラウンさんも王子様から自由にさせろと言われたと仰っていたではありませんか。自由と言う言葉を履き違えていませんか?自由とは与えられるものではありません。自由とは自らが得に行くものです。生きるも死ぬも、楽をするも苦労をするも自らが選択して得るものです。自由にして良いと押し付けられた物はすでに自由ではありません。だからアタシは断ります。貴殿方とは書類上だけだとは言え縁が出来てしまいました。だから出来るだけ、本当に出来るだけ迷惑を掛けないように行動することがアタシが出来る最大の譲歩です。さようなら。当主様、マリア様、もう貴殿方には会うことはないと思います。クラウ様にはいつまでも御元気で居てください御祈り致しますと伝えて頂ければ幸いで御座います。それでは本当にさようなら」

アタシは二人の返事を待たずに窓を開けて外に飛び出した。

遅れて「待て」と聞こえたが、こんな状況で待てと言われて立ち止まる奴は居ない。

アタシは広い庭を駆け抜け、驚く兵隊さん達の脇を抜けて、高い壁を飛び越えて。屋敷の外に出てからあちこち走り回った。すると大木がある空き地を見つけたので、大木に昇り潜伏スキルを使った。

無事に姿を消すことが出来たからここに潜むところは誰にも見られていないようだ。

アタシは安心したところで、クラウさん宛の手紙を書き綴った。

出来上がった手紙を持ってアタシはすぐに潜伏スキルと忍び足を使って屋敷に戻りクラウさんの部屋の窓の隙間から手紙を差し込んだ。

再び大木の所に戻り高見の見物と決め込んだ。

屋敷内は次々と明かりが灯り兵隊さん達が右往左往しはじめている。

バーン家よ、精々慌てるがよい。そして自分達が子供を引き留めることも出来ない無能な存在だと王子に報告するがよい。

これが最大限アタシが譲歩したバーン家への罰である。


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