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パワーアップするにはきっかけがいるよね

バーン家に来てから5日経った。

約束ではバーン家に着いたその日はカウント出来ないのは解るので4日目にあたる昨日が無罪放免になる日だったのだが、

当主であるブラウンさんが王城から帰ってこなかった為にもう一晩延長となったのだが。朝が過ぎ昼が過ぎ、すでに夕方である。

ブラウンさんは、まだ帰ってこない。


アタシはこの4日間の殆んどをクラウさんと過ごした。それは別に苦ではなく、むしろゆっくり時の流れる居心地の良い日々であった。

ご飯は美味しいし、お茶も美味しいし、ゆっくり本も読めた。

この部屋から出られないことが唯一の不満だが必要な物は呼鈴一つで取り寄せることが出来るので引き篭り体質のアタシにはまさに天国である。

自堕落な生活がアタシを狂わす。クラウさんが現れては旅なんて止めて私と一緒に居て、そうすればこの生活が続けられるよと囁きかける。

クラウさんは悪気は無いと言うか、本気で誘っているのがわかっているから、なびきそうになる心を抑えるのがたいへんなのである。


夕方も過ぎて夜になったが音沙汰無し。

予定は未定との言葉があるが予定通りに事が進まないことなんてよくあることだ。多少延びたところで理由を説明してくれれば大人しく待つつもりではあるが何も言わないのであるならば大人しくしている理由はない。

怒り心頭の体のふりをして使用人さんにブラウンさんへの伝言を依頼した。

はたして返事は返ってきた。今は最終調整中で明日いっぱいでけりがつくから待っていて欲しいと言うことであった。

どうやらアタシの調査が難航している訳ではなく、ブラウンさんの仕事が忙しいだけのようである。

高貴族の当主が一介の冒険者相手に返事なんかしないと思っていたから意外だと感じた。

けど、返事があるなら今夜は家に居るんじゃないか。それならさっさと済ませてくれと内心思いながら夜を過ごした。


翌朝、意識して振動感知を行い逆監視をしていたところ、たくさんの反応があって解りづらかったが早い時間からブラウンさんは出掛けていったことは捉えることが出来た。

少なくとも忙しそうだと言うことはわかった。それならばしかたがない、今日も大人しく待ちますか。

相変わらずクラウさんが来たので相手をしている。相手をしてもらっているとも言うが些細な違いだから気にしない。

今日は昨日に引き続き魔道具を使う練習である。


実はアタシの鑑定能力がパワーアップしたのである。とは言っても知らない人に対して鑑定を行っても『人』としか判らない。名前を知ることにより個別認識が出来るのは前述の通りだが。話しをしたり接触することによってより情報が得られるようになった。

体力、魔力、怪我の有無である。

今までも何度か高い高いをされたり高い高いをされたり高い高いを……によって接触はしていたが、クラウさんによって何度も抱き締められたりだっこされたり抱き枕にされたりされたりで人との触れ合いが増えた為だと考えられる。

学習型鑑定能力さまさまである。

でも情報と言ってもゲームの様に数値化される訳ではなく。

体力:多い→ふつう→少ない

魔力:多い→ふつう→少ない

怪我の有無:○○に怪我


情報がパワーアップしたと言ってもこの程度。非常に大雑把ではあるが。疑問は基準になる『ふつう』である。どのくらいの力でふつうなのかが判らない。もしアタシ自身が基準であるなら説明が付かないことが多いので、いくらなんでもそれだけは無いだろうとは思うが。


そんな鑑定能力をクラウさんに使ってみると『多い』とでた。でもクラウさんは魔力が少ないので魔術師を諦めて剣士になったはずだ。鑑定結果と矛盾するのでその後、色々話しを聞いて仮説を立ててみた。

ポイントは小さな魔道具なら雑作もなくいくらでも発動するが戦闘用の大きな魔道具となると発動しないと言うことである。そのせいで魔力の回復力高いが量は少ないと判断されたと言うことだ。

ここで疑問点が浮き上がる、クラウさんはたしか魔法の大剣を使っていたはずだよね。その事を聞くと「あの大剣って軽くなるんだ」だって。能力を知らなかったようだ。

そうすると、クラウさん=達人は成り立たなくなる。やはりアタシの妄想の達人は存在しないのね。


そんな妄想は置いといて、クラウさんに魔法の大剣を持ってきてもらった。アタシには重い大剣もクラウさんは軽々と持つ。アタシは横に立って片手で大剣を触りながら魔力を通すと軽くなることを実感していた。

ならば答えは出たようなものだ。魔力が多いのに、魔道具が使えないのは魔力の出口が詰まっているのだろう。水樽は満タンなのに蛇口が先が何かで詰まっていて少量の水しか出せないのでは無いのかと言うことである。

それなら詰まりをとってしまえば良い。クラウさんと両手を繋いで輪になった後はアタシが毎日のようにやってきた身体中に魔力や気を循環させる方法で回してみる。初めのうちはうまくいかなかったが暫くやっていると詰まりが取れたみたいでスムーズに回り出した。

アタシは手を放してから「今の感じで魔力を流してみて」と大剣を持ってもらった。

クラウさんは目をつむり魔力に集中しているようだ。

アタシは心の中で「頑張れ」と応援しながら見ていると。クラウさんが身震いしたと思ったら大剣が輝きだした。

やった。成功した!と思ったが何かがおかしい。何がおかしいのだろう。輝く大剣を見つめ続けて漸く思い付いた。


なんで大剣が輝いているのよ。アタシが魔力を通した時には見た目に変化はなかったというのに。


それにその輝きは見たことがある。


その時クラウさんは目を開き、大剣を振り上げた。

うわっ。それ不味い。

「振り下ろしたらダメ!」叫ぶアタシの言葉はすでに遅く、クラウさんは大剣を振り下ろしている最中であった。



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