魔法大会
「来週に、王家開催の魔法大会がある。王家の方から実力を認められるチャンスだ。存分に頑張りなさい。」
アスター先生はそう言って教室を出ていった。期待にクラスメイトが沸く中、私は計画を練り続けた。入学試験もギリギリだったし、私の魔法はそこまで強くないのだろう。それでも私はやらなければならない。その為には工夫が必要だ。王家の人の目に留まり、学園でも実力を認められる工夫が。
授業が終わり、皆が帰路に着いている頃、私は1人訓練場で魔法の練習をしていた。しかし何度やっても成長した実感がない。レオンに打ち勝った「氷河の槍」はそこそこの威力があったが、それ以外の技を思いつかない。
私は一気に氷を出現させたり、体の周りにバリアのように張ってみたりと、色々な使い方を試した。
「あなた、面白いことをしているわね。」
後ろから突然声をかけられ、私は振り向いた。そこにいる人物を私はよく知っていた。学園内でも有数の実力者、シエラ・クローネ。貴族の跡取りで、学園内での「強者」の基準を作ったとまで言われる、時間魔法の使い手だ。
「あなた、魔力の制御が上手いのね。それなのに、勿体ない。もっと応用すれば強いのに。」
「...どうすれば強くなるか。教えてくれませんか。」
私はそう言って頭を下げた。この人なら的確なアドバイスをくれる。絶対的な強者であるこの人なら。
「そうね...あなたの魔法、氷よね?氷って、硬いから鈍器みたいに使う人が多かったり、鋭くして槍みたいにする人が多いのよ。あなたみたいに。」
「なら、私の使い方は在り来りって事ですか?」
「そういうことになるわね。でも、私はもっと違い使い方があると思うの。例えば、氷って滑るじゃない?自分の魔法にどんな特徴があるのか理解するのも、いい修行だと思うわよ。」
氷は滑る、か。当たり前の事だが以外と気づかないものだ。やっぱりこの人は、物事を色んな視点で捉えるのが上手だ。
「ありがとうございます。参考になりました。」
「いいのよ。今度の魔法大会、頑張ってね。」
そう言って彼女は去った。私はその背中を見つめ、やがて鍛錬を再開した。彼女に教わったことを応用に使い、何度も試行錯誤を重ねる。気づけば、日は完全に落ちていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
魔法大会当日。この魔法大会はトーナメント制で、1対1の魔法勝負。私の1回戦の相手は、同じクラスのアルマ・セレネ君。全く持って知らないが、あまり強くないことを願った。観客席にはこの学園の生徒がほぼ全員揃っている。それに加え、王家の人間も数多く観戦している。
「アイリス・ノア対アルマ・セレネ!開始!」
アルマ君は私が動くのを待っているようだった。私はそれに乗った。刀を生成し、彼目掛けて突く。すると彼は私が近づいた瞬間に走り出し、そのままカウンターを放ってきた。私はそれを刀で受けたが、刀はそのまま砕けた。私は距離を取り、刀を作り直す。
「...身体強化の魔法?」
「その通り。俺の魔法はシンプルだけど、かなり強力だと思ってる。」
「...確かにそうね。ちょっと苦しいかも。」
アルマは笑い、今度は自ら突っ込んでくる。私は防御に周り、彼の拳と蹴りを避け続ける。
「避けてばっかりじゃ勝てないぞ。」
反撃の隙を伺うつもりだったが、かなり早くて隙がない。防御で手一杯だ。段々と私は押されていく。その時、足元をすくわれた。私は体勢を崩し、そのまま彼の膝蹴りを受けた。
「うっ...!」
痛みに顔が歪む。私は鼻血を拭い、なんとか体勢を立て直す。彼はすぐにまた攻撃を仕掛けてくる。それでも、私は隙を伺い続ける。
彼の拳をあえて大きく避け、彼の攻撃を誘う。私はその瞬間、彼から距離を取った。
「...さあ、来てみて。ここからは私も本気。」
「今まで本気じゃなかったと?舐めんなよ!」
彼が私目掛けて走り出す。その瞬間、私は彼の足元の地面を凍らせた。
「なっ...!?」
氷は滑る。シエラさんから言われた時、私はすぐにこれを思いついた。相手の足元を凍らせれば、滑って隙が生まれるのではないかと。
想定通り、彼はその場で滑って大きく体勢を崩した。その隙に、私は彼の懐に入り込む。私の殴りはそこまで強くない。彼なら耐えるだろう。ならばどうするか。
私は氷を拳に纏わせ、メリケンサックの要領で殴りつけた。彼に氷がめり込み、彼が苦痛の声を上げた。
「ぐぁっ...!」
そのまま腹を抑える彼に、私は同じように氷を纏って蹴りを入れる。彼はその場に倒れ込んだ。
「そこまで!勝者、アイリス・ノア!」
観客から歓声と拍手が上がる。私は息を整え、控え室へと戻った。私の2回戦は明日。私は控え室を出ると、観客席へ座った。
「1回戦突破おめでとう。私の言ったことを使ってくれて嬉しいわ。」
「っ...シエラさん。」
隣にシエラさんが座っていた。私は少し驚いてしまった。
「ありがとうございます。あのアドバイスが無かったら負けてたかもしれません。」
「いいのよ。次も頑張ってね。」
私は次なる2回戦も勝ち抜いた。2回戦の相手は思ったより弱かった。1回戦が強すぎただけかもしれない。それでも、この調子なら好成績を残せるかもしれない。そうすれば王家の人の目に留まり、学園の評価も上げられる。そう思っていた。
しかし。世界はそう甘くない。トーナメント表を見て、私は言葉を失った。
3回戦の相手───シエラ・クローネ。




