入学
私は医務室で目を覚ました。隣のベッドにはレオンが居る。レオンは私が起きたことに気づいたようだ。
「やあ、おはよう。」
「おはようございます。...その傷、大丈夫ですか?」
彼の足には私の槍が貫いた跡がある。治癒魔法で傷は塞がっているが、少し傷跡を残してしまったようだ。
「大丈夫だよ。生活に支障はないからね。それより、明日は入学式だ。改めて、合格おめでとう。」
「...ありがとうございます。」
私は微笑みを見せるレオンに微笑み返した。
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翌日、センテリア学園。私は1年A組となった。
周りの子は友達作りに勤しんでいる。だが、元より私は友達を作る気は無い。上位を取り、書庫に入れればそれでいい。上位になればある程度名が知れる。千影に前世の記憶があれば見つけてくれるかもしれない。
その時、教室の扉が開いた。
「おはよう。君達の担任になる、エリオット・アスターだ。」
彼は見たところ、穏やかな中年男性という印象だった。生徒の緊張を解すような笑み。
「私は魔法学を担当する。よろしく頼むよ。」
それから彼は、1人ずつ自己紹介をさせて行った。私は正直やりたくなかったが、好印象を残すのは大切だ。それに、教師と良好な関係を築くことも。
「私はアイリス・ノアと申します。氷魔法を扱うことができます。よろしくお願いします。」
必要最低限のことを述べ、微笑みながら一礼する。クラスメイトからの拍手を受けながら私は座った。
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入学式と初回の授業が終わり、皆が帰宅準備をする。誰とも話さず、黙々と準備をする私を見かねたのか、アスターが近づいてきた。
「君は友達を作る気がないのかい?」
「...必要、ありません。」
「そう言う人ほど、寂しがりなんだよ。」
その言葉が、私の心のどこかに沈んだ。寂しがり、そうなのかもしれない。千影がいなきゃ私は生きていけなかった。狂って、そのまま死を選ぶほどに。この教師を突き放したかった。私の心の内に触れないで欲しかったから。でも、私は良好な関係を築きたい。
「...大丈夫ですよ。」
「本当に大丈夫なのかい?1人でいてもそんなに楽しくないと思うけどね。何か、興味あるものとか無いのかい?」
「...王城の書庫を見てみたいです。」
私はこれを言うか迷った。だが結果として、私は口に出した。もしかしたら、この人が王城に入れる存在かもしれない。ほぼ有り得ない期待を、一瞬だけ抱いた。
「...王城、かい?」
彼は驚いた顔をしていた。まあ当然のことだ。
「そうだね...王城に入るには、ここを卒業した後に近衛兵になるか、この学園で特待生になるしかないね。」
「分かってます。だから、私は特待生を目指してるんです。」
「...いい目標だと思うよ。君の夢が叶うように、私も協力しよう。」
優しい言葉だった。たかが生徒1人、しかも初対面の人間に協力してくれるなんて。私は、この人に少しだけ興味を持った。
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それから、その言葉通りに先生は協力してくれた。1時はその場凌ぎの言葉では無いかと疑ったが、本気だったらしい。彼は特待生になるに当たって必要なことを私に教えた。
「特待生になるには、少なくとも学期末の考査で学園で10位以内には入らないといけないね。それに、魔法の才能も必要だ。」
やはり長い道だ。それでもやらない選択肢はない。今はこれが、何よりの近道なのだから。
「先生は...不思議ですね。なんでこんなに私を助けてくれるんですか?」
「.....私が個人的に君に興味を持っただけだ。それだけだよ。」
先生の目が、一瞬遠くを見た気がした。
「そうだ、来週模擬戦がある。そこで実力を示せば、私以外の教師が君に興味を持ってくれるかもしれない。」
「本当ですか?なら、頑張ってみます。」
「うん、いいと思うよ。君さえ良ければ、私に君の魔法を見せてくれないかい?」
「構いませんよ。」
私は訓練場で先生に氷魔法を見せた。先生は穏やかにそれを観察していた。
「君の魔法は綺麗だね。魔力の流れが繊細だ。」
「ありがとうございます。」
「その力があれば、君はきっと夢に届くよ。」
「...ええ。必ず、果たしてみせます。」
この人なら、信頼できるかもしれない。私はそう思い始めた。こんなにも協力してくれるなんて。
「...先生。これからも、よろしくお願いします。」




