1歩目
どうやら、この世界では私以外の人間に前世の記憶はないらしい。だとしたら、私にとって相当まずい状況だ。
何故なら、千影に記憶がないかもしれないから。それでは再開したところで千影が私を受け入れてくれるか分からないし、受け入れてくれてもそれは私が会いたかった千影じゃないかもしれない。
「お母様...本当に分からないの?お母様もここに来る時、誰かと話さなかった?」
「アイリス...あなた、前世の記憶があるとでも言うの?」
「...その解釈でいい。」
「...一概に否定しきれないわね。あなたの話が本当だとして、聞いたことがあるの...稀に、前世の記憶があることを訴えて、あなたと同じように、第二世界がどうとかって言う人が居るって。」
どういうシステムなのだろう。単に偶然なのか。それとも、明確にこの世界が記憶を残す人間を選んでいる?第一世界でも前世の記憶があるとか言ってる人はいた。私は信じなかったけど、正直少しそそられていた。。 母は今、その時の私と同じ感情なのだろうか。
「...信じなくてもいい。でも、どうしても会いたい人がいるの。会いに行かせて。」
母の沈黙が長く落ちる。当然だ、まだ10歳前半の娘が親である自分の目を離れて安全かも分からない場所に一人で行くなんて迷わない方がおかしい。
それでも───
「...あなたは今までわがままも言わなかったわね。そんなあなたがそこまで言うなんて、きっと本当のことなのかしら。」
「...じゃあ、お母様...」
「...ええ。行ってきていいわよ。絶対に、生きて帰ってくると約束してくれるなら。」
「...ありがとう。」
「私にとってあなたは幼子同然だけれど、前世の記憶があるならきっともう大人なのでしょうね。それでも、あなたを愛しているわ。」
「...私も、だよ。」
数日後、私は荷物をまとめた。母は私に多すぎるほどの金貨を持たせてくれた。私は歩き出してから、振り返ることはしなかった。私を一から育ててくれたあの人を見たら、足を止めてしまいそうだったから。
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王都センテリア。そこは、現在28代目女王セレネ・センテリアに統治された都。センテリアの魔法術の発達速度は異常と言われるほどで、初代王の時代から世界有数の魔法大国だという。千影がそこに居るかどうかは分からないが、少しくらい情報があるかもしれない。
千影に記憶があるかどうかは分からない。ただ、母は稀に記憶を持ったまま来る人間がいると言っていた。それが千影であれば奇跡に等しいが、今の私にはそれを祈る他無かった。
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まず、私もだが第二世界に来た時点で名前は違うものとなった。なら、「白石千影」という名前では通用しない。そのために、まずは王城の書庫、国民全員の顔写真が乗っている禁書を探らねばならない。
今の私は、第一世界にいた同じ頃と顔が全く同じだ。同じ成長過程を辿っているのだろう。なら、千影も同じであるはず。顔写真から探し出せるはずだ。
その為には、王城の中に入れるようにならなければならない。一般人は当然立ち入り禁止。ならどうするか。王城に入れる権利があるのは、上位貴族、近衛兵、王家、そしてセンテリア学園の上位実力者。
私に可能性があるのは学園だ。私の魔法がどの程度かは分からない。それでも母は私を強いと言っていた。それを信じるしかない。
となれば、まずは学園で上位成績者になる。
たった一人の大切な人ともう一度会うため、私は長い旅への1歩目を踏み出した。




