アイリス・ノア
第二世界で目を覚ましてから数日。私はベッドから動けなかった。もちろん、だらけている訳ではない。
「あー、うー」
これが今の私の限界。ベッドの上で産声を上げ、手足をばたつかせることしかできない。全てがもどかしい。早く千影と再会したいのに。そのために絶望を超えてここまで来たのに。まだ、あと何年も過ごさないといけないのか。
「どうしたの、アイリス?」
アイリス・ノア。これが今の私の名前だ。ノア家はそれなりに名家なのだそうだ。それは家の内装が私に伝えてくれる。そして目の前にいる母親、エリス・ノアを見ながら私は考える。そもそも、これが二度目の世界であり、千影もその輪廻の中にいるとすれば当然この人もそのはず。なのに何故本当に赤子を見るように接してくる?まあ、それは話せるようになればわかることだ。なら今するべきはこの世界のことを探ることだ。
今できる範囲で分かったのは、この世界が私が住んでいた世界と全く違うこと。まず本質そのものが異なる。俗に言う異世界なのだろう。まあ、世界管理人とやらも全く異なる世界だと言っていたしそこまで驚きはしない。気になるのはどの程度なのかだ。第1に、魔法らしきものがある。
エリスが言っていたが、私には氷の魔法が宿っているとか。全くもって実感は無い。氷を出すことすら出来ないのだから。成長するにつれて使えるようになればそれでいいが。
「うー、あーー、」
とにかく、今はこの何も出来ないもどかしさを全力で耐える他ない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
結構時間が経った。私は成長し、おおよそ12歳。この世界にはカレンダーなんてない。だから私は感覚と自分の体の発達くらいでしか判別できなかった。
そろそろ潮時だろうか。千影を探しに行くため、母親だけには私がこの世界にいる理由を説明しておこうか。
「お母様。」
「どうしたの、アイリス?」
「私は友達を探すために第二世界に来たの。だから探しに行かせて欲しい。もう既に前世を経験してるんだから、止めないで欲しい。」
「...?アイリス、あなた何の話をしてるの?第二世界?」
「...え?お母様も第一世界から来たんじゃ...」
「アイリス、あなたお母さんをからかってるの?第二世界に、前世?意味のわからないことばっかり言わないで。」
どういうことだ?お母様には記憶がないのか?
...そういえば、周りに誰も前世の話をする人は居なかった。私が話したくなかったからそこまで気に留めていなかったけれど...
もしかして、第一世界の記憶を持ってるのは私だけなのか?




