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次世界転生  作者: maron
第1章 第二世界編
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苦しさ、その恐怖

アイリスの感情は、怒りしかないだろう。折角ここまで逃げてきた。千影と同じ場所で終わるために、人殺しも厭わなかった。それなのに、こんなところで、大衆の前で無様に殺されるなんて。屈辱もいいところだ。しかし彼女にそれを覆す術はない。彼女はもう拘束されているのだから。


「何か、家族や知り合いに言い残すことは?」


ルビーが問う。彼女は沈黙を貫こうとしたが、内なる感情を抑えきれずに絞り出した。むき出しの、彼女の今の感情を。


「......くたばれ......私の道を塞ぐゴミが...」


それは彼女が今まで思った言葉の中で1番強い怒りだったかもしれない。それほどまでに、彼女は怒り狂っていた。


「.....やはり、犯罪者に更生というのは不可能だな。」


その言葉に彼女は更に怒りかけたが、これ以上はやめておいた。自分を軽蔑して見る大衆の視線に、耐えきれなくなりそうだったから。だから彼女は、最大限感情を押し殺すことにした。


「.....私はどうやって死ぬの?」


「聞きたいか。絞首刑だ。」


「.....え。」


それは、彼女が知っている刑の中で、最も受けたくないものだったろう。なぜなら彼女は、この場の誰よりもその苦しさを知っている。足はつかず、地獄のような苦しみが続く、あの死に方を。


「.....っ、それ.....変えられないの?」


「犯罪者に選択権はない。」


初めて、彼女に恐怖が芽生えた。死ぬのも、そういう定めだと受け入れようとしていた。しかし、1度経験した苦しみが彼女の感情を叩き起こした。


思えば、彼女が死を恐れるのは初めてだ。1度目の時も、解放されると信じて多少の苦しさは消えていた。しかし、今となってはどうだ。千影に会える希望もなく、ただ消えようとしていた。まだ壊れかけで、壊れてはいない心は死を拒絶する。


「よし、準備が出来た。来い。」


「ま、待って.....ちょっと待ってよ...」


「なんだ。今更怖気付いたか?」


「っ.....こ、心の準備とか.....」


「黙れ。皆待っているんだ。極悪人の処刑をな。」


彼女は抵抗できず、台に立たされた。見下ろせば、大衆が嘲笑うような視線を向ける。彼女はそんなことより、目の前のロープへの恐怖が強かった。


「来い。」


彼女の首にロープが巻かれると、本格的に恐怖が体を蝕んだ。息が乱れ、指先が震える。顔面蒼白と言える、完全に恐怖に取り憑かれた格好だった。


「時間だ。あの世で悔いるがいい。」


彼女は咄嗟にロープを掴んだ。しかし、そんなことで未来は変わらない。執行官がレバーを引き始める。あれが完全に引かれた時、彼女は死ぬ。足元が開いて落ちる。今から訪れる苦しみを前に、彼女は吐き気を催した。


「.....はぁっ...お、ぇ...」


嗚咽が漏れる。もう時間が無い。なにか出来ないか、辺りを見渡しても当然何もない。魔法は使えなくされている。もう、打つ手がない。

レバーが引かれる。落ちる、あの苦しみが来る。いやだ、怖い。いやだいやだいやだいやだいやだ───


そんな願いも虚しく、彼女の足は虚空に晒され、彼女の体は落下した。

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