掌の上
本当だったらどうしよう。ルビーが私に見せた幻の中で千影が言っていたあのことが本心だとしたら。私はもう生きていけない。だから、自分に言い聞かせるんだ。あれは本心じゃない。そして、千影を弄んだこいつを、私は絶対に許さない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「死ねぇっ!!!」
アイリスが力を込めて刀を振り抜く。ルビーはそれを受け止める。しかしアイリスの力は思っていた以上に強く、ルビーはそのまま押し切られる。
「くそっ...!」
当然、アイリスがその隙を見逃す訳がない。刀を持ち変え、下から振り上げる。ルビーの顔を狙ったそれを、ルビーは横に避ける。だが、ルビーの左手が宙を舞った。
「がぁぁっ...!!」
苦痛の声を上げ、ルビーは傷口を抑える。左手は無惨にその場に落ちる。アイリスは何事も無かったかのようにそれを見ていた。
「お前...!僕の腕をっ...!」
「黙れ。千影を弄んで、腕1本では済まさせない。これからだ。」
ルビーは残された右手で刀を構え、アイリスのものを受け止めた。片腕を失ってなお食らいつくのは、流石と言えるだろう。しかし、ルビーといえど片腕ではアイリスに敵うはずもない。
「はぁっ!!」
ルビーの右手が宙を舞う。両手を失い、ルビーはその場で立ち尽くす。
「...っ...あ...」
やがて、ルビーの膝が折れ、その場に崩れ落ちた。
「立てよ。まだ終わってない。」
アイリスは切っ先をルビーに向け、淡々と言い放つ。ルビーにもう、戦う気力は無いようだ。
「死ね。私の道を塞ぐな。」
アイリスが刀を振り上げ、下ろす。ルビーの首が宙を舞い、その場に落ちた。
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私はルビーを始末すると、再び王城を目指した。ルビーとの戦闘により少し整理がつき、足取りは少しだけ、ほんの少しだけ軽い。
それにしても、ルビーを殺してから全く私を捕まえようとする兵士と出会わない。今までは少し進む度に妨害を受けていたのに。ルビーが死んで、怖気付いたのだろうか。
何にせよ、邪魔が少ないに越したことは無い。私は近くに迫った王城を目指して歩き続けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「彼女が王城を目指しているとすれば、この辺りに来るはずだと思ったのだけれど。」
レオン、グランツ、そしてシエラはアイリスを探していた。王城の近辺を捜索しても、中々見つからない。
「なあ、あんた。アイリスはあんたの魔力で場所を察知してた。あんたはアイリスの魔力を読めないのか?」
グランツがシエラに問う。シエラは首を横に振った。
「あの時は私から魔力を流して阻害していたから分かりやすかっただけ。意図的に漏らしていなければ読み取れないわ。」
「.....そうか。」
その時、レオンの耳が音を捉えた。
「.....待ってくれ。何か音がしないか?」
「.......確かに、何かしら。」
それは、金属が打ち合うような音。それは、刀同士がぶつかる音。誰かが、戦っている。
「これは...!アイリスちゃんかも。行きましょう。」
音を頼りに走り続ける。走っていると、前方の地面から何かが突き出ているのが見えた。それは、氷の棘。シエラには、見覚えがあった。
「あれ、アイリスちゃんのものよ!」
「つまり、彼女はあそこに...!」
やがて氷が溶けた頃、3人はそこに辿り着く。そこに居たのは───
「やあ、君達。この子の仲間かな。」
ルビーだった。




