破壊
「千影っ...!!」
アイリスは目の前に見える想い人へと駆け寄った。これがいくら幻であっても、夢見た再開には変わりない。だが、その夢はまたも、目の前の本人に砕かれる。
「私に話しかけないで。」
「え.....?」
アイリスの動きが止まった。千影は冷たく、軽蔑するような視線を向けている。それこそ、ルビーの狙いだった。アイリスの心の奥深くまで読み取り、アイリスの千影という弱点を見抜いた。そして、アイリスに千影の幻を見せた。
「...千影...?なん、て...」
「話しかけるなと言ったの。あなたみたいな屑に興味はないから。」
「.....なんで、そんなこと言うの?嘘だよね?ねえ、嘘なんでしょ?.....嘘って言ってよ!!」
アイリスは千影に縋り付くようにしながら、ぼろぼろと涙を零していた。千影は嫌悪を示し、アイリスの手を振り払おうとする。
「違う...違うでしょ.....?千影は、そんな事言わないって.....」
アイリスは絶望を押さえ込み、必死に頭を回転させる。そうだ、これは幻だ。あの、ルビーとかいう奴のふざけた魔法だ。そう言い聞かせ、苦しくも目の前の千影を無視することにした。
「.....ねえ、なんで私を助けてくれなかったの?」
「.....っ...」
無視を決め込んだはずなのに、振り向いてしまった。アイリスの呼吸がまた乱れていく。幻の効果か、目の前の千影が血だらけに見える。事故の時の、あの千影に。
「私、は.....助けたかったけど.....どうしようも、なくて.....」
「仕方なかった、って言いたいの?ふうん、私のことその程度にしか思ってないんだ。」
「違う、違う.....!」
アイリスの手が千影に伸びる。だが、千影によって弾かれた。
「ぁ.....」
「汚い手で私に触らないで。」
その言葉が最後だった。アイリスはその場に座り込み、涙を流す気力さえも失ったかのようだった。
「千影は.....」
アイリスが手に刀を握った。千影はそれに驚いたように目を見開く。
「千影は、そんな事言わないっ!!千影を、汚すな!!!」
アイリスが立ち上がった。そして、力任せに刀を振り下ろす。千影を切ると同時に、世界がひび割れた。そのまま世界が崩壊する。
「.....はぁっ.....はっ.....」
千影を切ることに、相当な迷いがあった。目の前の人間を千影ではないと割り切って、振り下ろすまでの葛藤は永遠に思えた。
「.....ごめん、千影.....」
アイリスはそう言って前を向く。魔法を破られて動揺したルビーが立っている。その手には、しっかりと刀が握られている。
「.....小賢しい真似を。僕の魔法は貴重なんだ。」
「黙れ。私の千影を汚した罪を償え。」
アイリスはそう言って踏み込んだ。そして、ルビーも構える。
再び刀が、激突した。




