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次世界転生  作者: maron
第1章 第二世界編
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あの日の幻想、あの日の恐怖

こんな声は誰にも届くはずはない。どれだけ辛くて、弱音を吐こうと今の私に寄り添う者はいない。シエラさんの手も振り払って、これから孤独に死を迎えるだけ。


それなのに、邪魔をする。私を王城に入れたくないのか、兵士が群がるように私を追い詰める。邪魔な、害虫。弱いくせに、私に勝てないくせに束で襲ってくる。いい加減諦めて欲しい。これ以上、人を殺させないで欲しい。


.....ああ、まただ。また、私の行く手を阻む害虫。だけど、今度は1人だけ。


「.....こんにちは、アイリス・ノア。僕はルビー・レイノン。君を捕える。」


「だから.....自分から死にに行くって言ってるのに邪魔しないでよ.....」


「.....死にたいなら、逃げる必要はない。」


「だから.....もういい。あなたも死んで。」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


先に動いたのはアイリスだった。刀を生成し、斬りかかる。対するルビーも、刀を抜く。2振りの刀がぶつかる。距離を取りながらアイリスは地面に手を着いた。


「白棘庭園。」


地面から無数の棘が広がる。ルビーはそれを刀で砕きながら進む。進路を塞ぐように、アイリスは作り続ける。しかし、ルビーは容易くそれを突破し、アイリスの懐へと入り込んだ。至近距離で振るわれた刀をアイリスは仰け反って避けたが、バランスを崩した。


「うっ───!」


足を薙ぎ払われ、アイリスは転倒する。目を開ければ、眼前に振り下ろされる刀。転がって避け、立ち上がる。すかさず目の前に突きが襲い、アイリスは咄嗟に刀身を掴んだ。


手から血が流れるのも構わず、アイリスは力を強める。ルビーは刀を引き戻そうと引っ張り、その度にアイリスの掌は切れていく。苦痛にアイリスの力が抜けそうになるも、アイリスは逆に引っ張り返そうとする。


両者は膠着し、刀の引っ張り合いが続く。やがてアイリスが反対の手から氷を打ち出した。ルビーはそれを避けきれず、脇腹を掠める。その拍子に手の力が緩み、アイリスは刀をルビーの手から引きずり出した。


「っ...!う...」


刀を後ろに投げ捨て、掌の痛みに顔をゆがめる。武器を失ったルビーが取れる手段は、魔法以外残されていない。しかしながら、ルビーの本領は魔法だった。


「幻像。」


その刹那、アイリスの目の前の景色が変わる。見覚えのある信号、交差点。アイリスの脳が警鐘を鳴らす。ここは───


「っ.....あああぁっ!!」


アイリスは頭を抑えてその場にしゃがみ込んだ。事故の光景が頭を埋め尽くす。ここは千影が跳ねられた、あの場所だ。それに気づいてしまった瞬間、アイリスのトラウマが牙を向いた。


追い打ちをかけるように、幻想は続く。しゃがみ込んだアイリスの横から、2つの人影。それは、あの日の2人。まだ氷室零だった頃のアイリスと千影。そして、あの日と同じように千影が足を踏み出し───


グシャ、と言う音。アイリスの脳が思い出すのを拒み続けた光景を、強制的に目の前で引き起こされた。


「千影ぇぇぇっ!!!」


零とアイリスの叫びが重なった。そして、現実へと引き戻される。アイリスは倒れ、涙を流していた。そこへルビーが歩いてくる。立たなければ。立たないと、捕まる。


アイリスは無理やり身体を起こした。涙を拭う。ルビーは立てないと思っていたのか、立ち止まった。しかしアイリスも手が震え、息が荒い。過呼吸に近い状態のアイリスに危険性はないと判断したか、ルビーが再び距離を詰める。


「ふざ...けるなっ!!」


それでも、アイリスは拳を振り抜いた。目の前のトラウマを破壊するように、ルビーへと一直線に。


「なっ───」


流石に反撃はないと踏んでいたか、防御が間に合わずにルビーはその拳を顔面に受けた。吹き飛ばされ、地面に倒れる。


「.....千影をっ.....弄ぶなっ.....!」


アイリスはルビーの元に近づき、蹴りを入れた。ルビーの体が地面を転がる。ルビーは蹴られた場所を抑えて立ち上がる。口に滲んだ血を拭い、ルビーはアイリスが投げた刀の元へ向かおうとする。アイリスはそれを氷で止める。ルビーは再び魔法に手段を切り替えた。


ルビーの魔法は強力だが、些か魔力消費が大きい。現に、一度アイリスに幻を見せただけで息が上がっている。それでもルビーは、アイリスに向かって走り出した。


「っ、何を.....」


ルビーの手が、アイリスに触れた。


「たった今、僕が君の心を覗いてやろう。」


ルビーの纏う魔力が変わった。アイリスのものと近い魔力へと。それはアイリスの内側へと入り込む。脳の情報を読み取り、正確にアイリスの弱点を見つけようとする。


「やめろ.....やめろやめろ.....!」


アイリスは抵抗しようとするも、体の内側で起きていることへの対処は難しい。体をばたつかせ、ルビーを振り払うことしかできない。やがて、ルビーが解析を終えた。


「.....ごめんね。」


ルビーが呟いた。そして、魔力がアイリスの意識を奪う。


「───夢幻侵食。」


アイリスの意識が、闇の中へと堕ちる。現実のアイリスはそのまま地面に倒れ、動かなくなった。対するルビーも、アイリスへ見せる幻像を操作するために動かない。


やがてアイリスが目を覚ますと、真っ暗な闇の中にいた。どこを見ても、闇しかない。そんな時、アイリスの目の前に誰かが現れた。靄が晴れる。そして、再びアイリスを絶望へと突き落とす準備が整った。


目の前の人影、それは───


「っ.....!千影.....!」



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