刈り取る刃
「アイリス・ノアだな!覚悟しろ!」
「......しつこい、どけ!」
アイリスの刀が次々と兵士を薙ぎ払う。もう、人殺しに躊躇はない。彼女の刀は正確に、ただ命を刈り取っていく。何かに取り憑かれたように刀を振るい、そして歩き続ける。王城に近づくにつれ、兵士は多くなる。流石のアイリスでも、数が増えれば劣勢に追い込まれる。
「......邪魔、邪魔.....どけ.....」
うわ言のように繰り返しながら、とぼとぼと歩く。当然、そんな事をしていればより多くの人員を割かれる。死罪の人間を放っておくほど、この国は甘くない。しかしながら、統率も取れていない。王のいないこの国に未来はない。
他国が軍事介入するのも時間の問題かもしれない。今死のうとするアイリスには関係の無いことだが、まもなくこの国は崩壊する。早く次世代の王を見つけなければ、間違いなく。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「.....そうか、事実なのか。」
シエラの家。グランツ、そしてレオンはシエラからアイリスについての報告を受けていた。アイリスがアスターを殺したのは事実だと認めたこと。そして、そのまま兵士も殺して逃亡したこと。
「あいつが何で先生を殺すんだ?俺は信じられない。」
「僕もだ。彼女は先生を信頼していたからね。」
「何か...アイリスちゃんの大切な人を奪ったって言っていたわ。」
「どういうことだ?先生も人殺しって話か?」
「私もそう聞いたんだけど、関係の無いことだって言われちゃってね...」
暗い表情をするシエラに、2人は黙り込んだ。アイリスはまだ逃げ続けている。そして、死ぬつもりだ。
「今はとにかく、彼女を死なせる訳にはいかない。僕たちで見つけないと。」
「でも、どこに行くつもりなのかしら...」
「彼女は以前から王城に執着していた。もしかしたらるかもしれない。」
「動かないと意味がないもんな。行くか。」
そうして3人は王城に向かうことになった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
1人、また1人。アイリスの後ろに死体が転がっていく。数え切れないほどの人の命を奪った。血に塗れた手が、気持ち悪かった。
「許して...千影...」
あなたと一緒になるためなんだ、と自分に言い聞かせている。そしてついに、王城が見え始めた。
「.....千影...今度こそ、そっちに...」
届きもしないのに手を伸ばす。当然空を切る。その前から、また兵士。アイリスに奪われる命。アイリスは顔を引き攣らせ、刀を手に持った。
「.....もう、いいでしょ。私は今から死にに行こうとしてるんだからさ。.....わざわざ、私の罪を増やさないでよ。」
悪人に染まるほど、千影に会うのが怖くなる。貶されるんじゃないかという恐怖。いくら記憶がない状態、セレネとしてでも、千影に「更生の余地はない」などと言われたことがアイリスの脳裏に強く焼き付いていた。あれは別人だ、と言い聞かせる。あれは千影じゃない。きっと。
「もう.....いやだ.....」
数多の命を刈り取り、アイリスはその場にへたりこんだ。
「誰か.....私を助けて.....」




