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次世界転生  作者: maron
第1章 第二世界編
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永遠の夢

アイリスの刀は不安定だった。怒りや悲しみの感情に支配され、シエラにその刀が届くことはない。しかし、シエラにとって脅威なのもまた事実だった。不安定だからこそ動きが読めず、シエラの思考が乱される。


「くっ...!」


シエラの頬を掠めた。彼女は距離を取る。シエラは魔法を使うのを躊躇していた。アイリスをなんとか停めたい。ここで本気を出せば、それは完全な決裂の原因になる。なんとか、彼女を止められないだろうか。このまま、一度も傷つけずに。それとも、このまま彼女の刀を、感情を全て受け止めれば止まってくれるだろうか。


「アイリスちゃん.....お願い、やめて...」


「っ...うるさい!私は自分の望みを叶えたいだけなんだ!望みの為に戦って何が悪い!」


アイリスの叫びは夜の闇に溶けるようだった。シエラは視線を落とした。もう、止められないのだろうか。彼女を力づくで止めるか、このままみすみすと死なせるか。そもそも、自分は止められるのだろうか。一度負けた、この自分が。


「アイリスちゃ───」


シエラの動きはそこで止まった。アイリスの頬を伝う涙を見て。ぐちゃぐちゃの感情、その全てが涙として溢れ出している。子供のように、止める方法を知らないように。


しかし、その時。


「見つけたぞ!アイリス・ノア!」


怒号が響いた。それは、王城から逃げたアイリスを追ってきた兵士。アイリスの周りを取り囲み、さらに増援も押し寄せる。


「待って、待って!お願い!」


シエラの懇願は誰の耳にも届かない。全員でアイリスを拘束しようとする。アイリスは殺しこそしなかったが、躊躇なく切り刻んでいく。シエラ達を何度も相手するうちに、並の兵士では歯が立たないほどにアイリスは成長している。氷、加えて水まで制御が可能なアイリスに、中々抵抗できる者はいなかった。


「...っ!ごめんなさい、アイリスちゃん...!」


シエラも加勢し、アイリスを攻撃した。その瞬間、アイリスの周りの兵士が吹きとんだ。


「ぐぁぁぁぁっ!!」


悲痛な叫びが重なる。飛んで行った兵士の合間を縫って、シエラは見た。アイリスの、悲痛に歪んだ顔を。そして、そのアイリスの足元から止めどなく溢れる水を。


「アイリスちゃん、何を.....」


水は、兵士達の足元やシエラの足元まで流れる。兵士達は雨が降っていることもあり、大して重要視をしていない。シエラもまた、それが予兆だとは気づいていなかった。


しかしその瞬間、アイリスから魔力が溢れ出した。流れた水を追いかけるように広がり、その全てを覆い尽くす。


「...!?なに、これ...!」


水の流れは止まり、水滴となって浮き上がる。その全てが、アイリスの意志のままに。広範囲を覆い尽くす水滴。


「なんだ、この魔力!」


「おい、早く捕らえろ!」


兵士の怒号が飛び交う。シエラは全てを無視し、ただアイリスに向かって突き進んだ。


「お願い、待って!アイリスちゃん、お願い!」


シエラには分かっていた。これを受ければ、もうアイリスを止めることはできない。だから、絶対に撃たせてはならない。それでも、懇願はアイリスに届かない。


「...ごめんなさい。本当に、止まれないんです。」


それを聞いて、シエラの足は止まった。もう、アイリスに言葉は届かない。その全てを、受け止めるしかない。


「...っ.....そう。でも、最後まで抗わせてね。」


シエラが魔法を発動する。体の周りに反発する重力を作ることで、全てを弾くシエラの防御手段。しかしながら精密な魔力操作が必要で、その場から動くことが難しい。防御に1点特化した、重力の盾。

それは、アイリスのことを真正面から受け止める合図でもあった。


「.....お願いです。もう、私に関わらないでください。.....これが、私の全てです。」


水滴が凍りつく。凍てつき、浮き上がる。これが、アイリスの全て。


永遠の夢(エターナル・ブレイク)


凍りついた水滴から、棘が現れた。避けられる場所など存在しない。水滴一つ一つから四方八方に棘が飛び出し、大地を埋め尽くす。魔力放出に近い、アイリスの奥義。アイリスの慈悲か、シエラの周りだけ甘くなった。兵士は串刺しにされ、断末魔を上げる余裕もないまま、その全てが沈黙した。


「くっ、う...!」


シエラも致命傷は避けられたとはいえ、腕や足を刺され、迂闊には動けなくなっていた。


「.....もう、私に関わらないでくださいね。」


アイリスは歩き出した。振り返ることはしない。


「待って、お願.....い.....」


氷が消える。シエラは地面に倒れ込んだ。這いつくばるように、アイリスに手を伸ばす。それでも、アイリスの歩みは止まらない。


手が力なく地面に横たわる。もう、アイリスは見えなくなっていた。

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