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次世界転生  作者: maron
第1章 第二世界編
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決壊

セレネ・センテリアが死亡したということは、瞬く間に王都中に伝わった。王の統制を失い、さらに跡継ぎも居ないことにより完全に王国は混乱していった。


セレネを殺害した人物の概要は全くもって不明である。また、殺害直前に死罪を宣告されたアイリス・ノアは犯人との戦闘後、逃走し行方不明となっている。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


重い体を引きずり、アイリスは地下道を歩いていた。海に飛ばされてから、アイリスを捕らえるために捜索隊が現れた。アイリスは下水道から地下道へと繋がる道を見つけ、そこへ逃げ込んだ。


アイリスに尋ねる当てはない。学園で最も信頼していた人物は自ら殺してしまった。学園でも沢山の人間から慕われていた人を殺したアイリスを、きっとだれも受け入れてなどくれないだろう。少なくとも、アイリス自身はそう思っていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


きっと私はもうすぐ死ぬ。見つかれば死罪。見つからなくても、こんな薄暗い地下で生き延びるなんて不可能。地上に出てもだれも助けてはくれないだろう。そもそも生きる気はない。もう無理だ。今までも何度も折れかけた。それでも、この世界に入れば千影に会えると、不安定な心を無理やり押さえ込んで来たのだ。記憶がなくても、会えた時は嬉しかった。なのに、それを目の前でまた壊された。


壁にもたれかかり、ずるずると座り込んだ。まただ。千影が死んだ時の光景が頭から離れない。さっき斬られたのも、第一世界で車に轢かれたのも、また思い出した。その度に呼吸が苦しくなる。それほどに、私は壊れていた。また涙が零れる。塞き止める機能を失ったかのように、涙は溢れる。地上の混乱が嘘のように静まり返る地下には、私のえずきと泣き声だけが反響していた。


「神様.....ぁっ...」


口が勝手に言葉を紡いだ。今にも消えそうで、自分の耳にすらかろうじてしか届かないような声。もはや頼れるものはなく、神頼みなどという不確かで意味の無いことだけを繰り返し始めた。


「千影を...っ...返してください...」


当然、何かが起きる訳でもなく。願いの一つも叶わない。他の全てを捨てる覚悟で願った1つすら、神は与えない。この世界全てが恨めしい。


「うぁぁ...っ...ああっ...」


唸り声のような、そんな声が勝手に漏れた。今までのことが全て無駄だったと、そう嘲笑うように記憶が流れる。もう嫌だ。久しぶりに、そんな感情を思い出した。


───ああ、死にたい。死んでしまいたい。楽になりたい。死んで千影に会えるならそれでいい。何もかも忘れて、消え去ってしまってもいい。辛いことが忘れられればなんでもいい。早く、早く開放されたい。


「誰か.....私を殺して.....」


神頼みでもなんでもない、ただの願いだ。もうこのまま、第1世界の時と同じように自殺でもしたい。それなのに、乱入者との戦いで魔力を使いすぎたのか、体は鉛のように重い。うずくまって泣くことしかできない。無様だった。


「───アイリスちゃん?」


後ろから声がした。うずくまったまま視線だけを向ける。そこに居たのは、シエラさんだった。


「よかった、やっと見つけたわ...!」


駆け寄ってくる彼女を、私は拒絶しようとした。それでも、彼女は私を抱き抱えた。そしてそのまま歩き出す。


「.....なん、で...ここが...」


「あなたの魔力を辿ってきたのよ。」


「.....おろ、して.....」


「どうして?歩けないでしょう。」


違う。歩けないんじゃない。歩きたくない。このまま死ぬまで1人にして欲しい。もう、これ以上私に構わないで欲しい。そんな私の沈黙を見抜いたのか、シエラさんはため息をついた。


「あなたが何を思って先生を殺したのかも、何も分からないわ。それでも、私達はあなたのことを信じてるから。」


離して欲しかったが、衰弱した体では敵わなかった。私はそのまま連れていかれ、シエラさんの家と思われる場所へと運ばれた。


「.....バレたら、シエラさんも殺されちゃいますよ。」


「大丈夫、魔力は辿れないようにしてあるから。」


ベッドに寝かされ、私はまた泣いていた。死にたいと願ったばかりなのに、この些細な優しさ、そしてまだ私を信じてくれる人がいた事への嬉しさでまた涙を零した。


「辛いことがあったのよね。分かるわよ、あなたを見れば。今はまだ事情は聞かないでおくわ。」


シエラさんに頭を撫でられる。いつの日か、千影に似たようなことをされた時を思い出して少し安心した。親にあやされる子供のように、私はそのまま眠りに落ちた。




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