超越
「今度こそ、あんたを打ち負かす。」
「負かす...ね。楽しみだわ。」
大口を叩いたはいいものの、正直どうなるか分からない。一応勝てるかもしれないやり方はあるが、それも成功するかは分からない。先程思いついたばかりなのだ。
「最初から全力で行かせてもらうわ。...零重世界。」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アイリスの体が中に浮き上がる。シエラはそのままアイリスへと蹴りを入れる。今回はアイリスも無重力の中でしっかりと防御した。
「シエラさん、あなたを超えてみせる。」
アイリスは体をよじると、何とかシエラの方向へと体の向きを変えて見せた。手に刀を生成し、そして足元にも氷を生成する。
(...何をするつもりかしら。)
シエラは今までのアイリスと様子が違うことを察したのか、少し距離を取った。アイリスは氷を固定し、シエラを見据えた。
「───流氷変化。」
アイリスが一瞬で加速し、彼女の刀がシエラの首元へと振るわれた。
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それを思いついたのは、さっきグランツ君に治癒してもらった時だった。彼の背中越しに、自らの氷が溶けるのを見た。その時、氷が溶けて蒸発するのを見てふと思った。元々私の魔力から生まれた氷なら、それが溶けた水も操作できるのではないかと。
水を一から生成するのは難しい。だから1度氷を生成し、それを自らの手で溶かす。溶かすのが出来るかは賭けだったが、氷を上手く扱えたのはよかった。
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アイリスは溶かして生成した水を噴射して推進力を得た。その勢いでシエラへと切りかかり、その首元に刀が触れた。
「ッ───!」
シエラはそれを間一髪で避けた。首元は浅く切れ、血が滲んだ。初めてアイリスの刀がシエラに届いた。
「...あなた、水魔法も使えたの?」
「これは水魔法とは言えないんじゃないかな。ただの真似事だよ。」
「...ふぅん。」
シエラは首元を抑え、手についた血を見た。別に動けなくなる量ではない。シエラは再び構えを取った。
「嬉しいわ、短期間でここまで強くなるなんて。あなたがせっかく奥の手を見せてくれたんだし、私も本気で答えるわね。」
シエラはアイリスに向かって走り出すと、無重力状態にした。アイリスは再び水の噴射で範囲外に出たが、またも無重力にされる。
「くどい...!」
アイリスは何度も水を噴射して範囲外に出るのを試みる。しかし1度氷を生成してから溶かすという行程が着実に魔力を消費する。アイリスの動きは次第に遅くなる。しかし対するシエラもまた奥義の連発に疲労が見え始める。
「こんなに連続で技を使ったことは無いわ...!やっぱり、あなたは最高ね...!」
アイリスは逃げ回りながらも手に魔力を集中させていた。そして一気に水として放つ。技を出すのに集中していたシエラはそれを避けきれず、服が少し濡れた。
「なんのつもり───」
その瞬間、アイリスはシエラの服に付着した水を凍らせた。氷から水にするより水から氷にする方が遥かに簡単だった。アイリスは地面にも水を撒き散らす。それらを全て凍らせ、シエラは完全に固定された。
「くっ...!」
アイリスはシエラに近づく。彼女はアイリスを無重力にしようと試みたが、先にアイリスがシエラの腕を凍らせた。アイリスの手には氷の刀。先程シエラの首元まで届きかけたそれは、溶けかけて水が付着しており、それが日光を反射して煌めいた。
「シエラさん、あなたは強かった。あなたのお陰で、私はここまで強くなれました。.....ありがとう。」
その言葉と共に、アイリスはシエラの腹部を貫いた。シエラは苦痛の表情を浮かべると、そのまま意識を失った。
「審判の方、あとはお願いします。」
アイリスはシエラをその場に残して立ち去った。その表情は勝利の嬉しさというよりも、努力が報われた達成感の方が大きそうだ。シエラは審判が呼んだ救護班によって治療を受けている。
こうして、シエラ・クローネは敗退となった。だが、まだ2人チームメイトが残っている。アイリスはレオンとグランツが相手をしているであろうラウル兄弟を仕留めに行くか迷ったが、先に魔法道具を見つけることにした。
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ラウル兄弟とレオン、グランツの戦いは終着へと向かっていた。全魔力を失うことを厭わないラウル兄弟がレオンの賭けに対して勝利を重ね、レオンとグランツは着々と追い詰められていく。
「───影牢。」
「ぐっ...!」
シオンの影がレオンを包み込むと、牢獄のようにレオンの四方を塞いだ。レオンの後ろには、気絶したグランツが倒れている。治癒魔法の使い手なため、先に潰されてしまった。
「終わりです。」
そして、レオンも意識を失う。レオン、グランツは敗退した。
残るは、ラウル兄弟とアイリスの3人。




