王都総合演習
王都総合演習。それは、王城近くの森で行われる訓練の一環。3人でチームに分かれ、森のどこかにある魔法道具を奪った方の勝利。「演習」と聞けば聞こえはいいが、結局は王族が次世代の魔法使いを見て楽しむだけに過ぎない。しかしながら、優勝チームの代表は王に謁見できる機会が与えられると言う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Aチームは私、アイリス・ノアと入学試験以来初めて関わるレオン・グレイス、そして初対面のエイル・グランツの3人。チーム分けは完全ランダムなので、特に文句はない。問題は対するBチーム。
シオン・ラウルとその兄のガレス・ラウル。この2人は二人で魔法を使った方が強いとの事で、特例で同じチームらしい。そして、最後の一人───シエラ・クローネ。
想定より早い再戦だった。けれど、前みたいに負けたりはしない。それに、今回は戦うことは目的じゃない。目的は魔法道具を手に入れること。
「君なら勝てる。頑張ってきなさい。」
「...ありがとうございます、先生。」
審判はアスター先生と他の先生2名。2チームは森の中のランダムな場所に転送された。
「それでは、初め!」
真っ先に私たちは走り出した。エイル・グランツ君については何も知らない。けれど、向こうはシエラさんと戦った時の私を知ってるみたいだった。
「...あんた、アイリス・ノアだったよな。」
「え、うん。そうだけど...」
「俺はエイル・グランツ。あんたとシエラってやつの対決、見てて楽しかったよ。よろしく。」
そんな会話を開始前にした。彼の魔法はまだよく知らない。
「さあ、来たよ。」
レオンの一言で前を向く。シオンとガレスが二人で向かってくる。シエラさんは見えない。隠れているか、先に魔法道具を取りに行く作戦か。
「僕が相手をしよう。君達は、あの魔女に気をつけながら魔法道具を取ってくれ。」
「「了解」」
私とエイルはレオンにその場を任せ、先に魔法道具を探しに行く。
「なあ、あんた。作戦はあるのか?」
「...考えてない。でも闇雲に探しても意味はない。魔法道具なら、ちょっとくらい魔力があるはずなんだけど...」
「そうだな。でも───」
「この森は、シエラさんの魔力で覆われてる。」
これが、シエラさんの作戦なのだろう。自身の魔力を広範囲に展開することで、魔法道具の微弱な魔力を隠す。
「どっちかがシエラさんの相手をするか、気を引かないと。」
「それを、あんたがやるってことか?」
「うん。私情になっちゃうけど、許して欲しい。」
「......まあ、俺もあのバケモンとはやりたくないからな。魔法大会を見て分かったよ。あいつはヤバいって。」
「よし、じゃあこの作戦で行こう。魔力が濃いし、シエラさんはここら辺に居るはず...」
その時、私に圧がのしかかった。いや、これは重力だ。魔法大会で私が為す術なくやられた、シエラさんの魔法。
「グランツ、先行って!」
「任せろ!負けんなよ!」
そう言うとエイルは走り去って行った。私は重い体を動かして魔法の圏外に出ると、シエラさんの魔力を辿った。草をかき分け、刀を手元に生成する。
「──はぁッ!」
人影が見えた瞬間、私は切りかかった。しかし、シエラさんはいとも容易くそれを避けて見せた。私の刀は空振り、私は舌打ちしながら着地した。
「またあなたと戦えて嬉しいわ、アイリス。」
「こちらこそ、ありがたい限りですよ。」
「前より強くなってることを願うわ。」
お互いに1歩踏み込む。私はそのままシエラさんの間合いの内側を目指す。シエラさんは重力魔法で私の動きを鈍くするのを狙う。私の踏み込みか、シエラさんの魔法の発動か。速さで全てが決まる。
「確かに、前より動きが良くなったわ。」
結果として、私は重力に押されることは無かったものの、シエラさんに刀が届くこともなかった。私の刀は再び躱され、カウンターで魔法を受ける。前と同じように私に重力がのしかかる。私は無理に抵抗せず、体を低くする。
「...どういうつもり?降服かしら?」
「そんな訳、ない。」
私は地面に氷を出現させた。地面を辿って、シエラさんの足元まで伸びていく。
「───白棘庭園。」
シエラさんに触れた氷から、棘が生える。彼女も流石に反応が遅れ、足を掠めた。その拍子に魔法が緩み、私は魔法の範囲外へと出る。その間も地面の氷を広げ、彼女を追うように展開する。
「なるほど...相手が触れた場所から棘を出す魔法ね...やっぱり、あなたは前より強いわね。」
この数日間で完成させたこの魔法は、多少魔力消費が大きいもののかなり使える。相手を追い詰め、誘導することもできる。私は壁にも広げ、次々と棘を打ち出す。シエラさんは避けるのに集中しているようだった。
「やるわね、なら私も少し本気で行くわよ。」
「───零重世界。」
その瞬間、私は中に浮き上がった。驚く暇もなく、魔法が溶ける。白棘庭園は地面に触れていないと発動できない。それよりも、体の制御が取れない。
「さあ、ここからは私の番。」




