第7話 奪取
煙が完全に晴れた。
その先に立っていたのは——ボロボロの体のまま、静かに立つ俺だった。
「な、なんで……生きてる……!!」
マルコの声が震える。手下の2人も、化け物を見るような目でこちらを見ていた。
「感謝するよ、マルコ。お前のおかげで、大事なことを思い出せた」
俺は静かに言った。
「それと——魔法にも目覚めたみたいだ」
マルコの目が、落ち着きなく泳いでいた。何か算段しているのが、手に取るように分かった。
「そ、そうか……!すごいじゃないか!そうだ、レウシにヒールしてもらえよ!」
マルコは早口で言いながら、一定の距離を保ったまま動かない。
「なんで距離を置いてるんだ」
俺が問いかけると、マルコの動きが止まった。
「今までずっと近くにいたお前が、急に距離を取るのはなぜだ。怯えてるのか?」
静かな声だった。
「その距離じゃ、いつものように俺を殴れないぞ」
「…は…調子に乗るなよ!!そんなボロボロの状態で何ができる!!」
マルコが怒りながら走り出した。右手に炎を纏い、魔法を撃とうとしている。
だが、俺は動じなかった。
(マルコの魔力はたかが知れている。片手で防げる。)
——いや。
うるさいだけだ。
ただ、不快だった。
早くこの世から消えてほしい。
その瞬間、頭の中にステータスのようなものが浮かび上がった。
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【スキル:魔法奪取マジックスティール】
自身が殺した相手からランダムで1つ魔法を奪い取る。
■奪取リスト
・悪魔の炎
■使用:悪魔の炎
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(なぜ、奪取した覚えもないのにある……?)
わからない。
だが、今は考えている暇はない。
——使ってみるか。
「死ね!セオン!『炎——』」
マルコが魔法を放とうとした瞬間。
それより早く、俺が手を前に出した。
「『悪魔の炎』」
紫黒色の炎が手から燃え上がり、猛スピードでマルコへ向かった。
「……!!?」
驚愕したマルコが飛び退く。
間一髪でかわした——が、左足の先に炎がわずかに触れた。
「マルコさん、大丈夫ですか!」
「危ねぇ……いきなりそんな魔法……何がどうなって……」
「当たらなかったか。初めて使うから、コントロールが上手くできなかったな」
だが——
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悪魔の炎
闇の力を宿す禁断の魔法。
触れた対象は、焼き尽くされるまで炎が消えない。
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「おい、マルコ・グリムウェル」
俺は静かに言った。
「燃え尽きて死ね」
「なんだとっ……!!」
「マルコさん——足!!」
手下の叫び声にマルコが足を見る。
かわしたはずの炎が、左足を燃やし始めていた。
「あっ、熱い!!!」
「ルキエ!水魔法を撃て!!」
「わかりました!『水の弾』!!」
水が激しくぶつかる。
一瞬、炎が消えたかに見えた。
「よし……」
しかし。
炎は再び燃え上がった。
むしろ、勢いを増しながら上へと這い上がっていく。
「熱い!熱い!!クソッ……セオン!!!」
「さっさと死んでくれ。この世のために」
「ふざけるな……!!なんで俺がお前に殺されなきゃいけないんだ!!クソがっ!」
炎は胸の辺りまで登っていた。
それでもマルコは走る。
「死ぬならお前も道連れだ!!!」
伸ばした手が、俺に届きそうになった——その瞬間。
マルコの足が、焼き焦げて崩れ落ちた。
「くっ……セオ……ン……」
一瞬、脳裏に浮かんだのは父の顔だった。
——(父さん、ごめん。)
体がみるみる灰へと変わっていく。
「マルコさん!!」
「マルコさーん……!!」
炎は顔へと到達し——
骨すら残さず、すべてが灰になった。
俺はその灰を静かに見つめた。
「ほんと……無様だな」
邪魔な存在が消えた。
だが同時に——自分の力に、わずかな恐怖も覚えていた。
人一人が、灰になるまでにかかった時間の短さ。それを見つめる自分の中に、嫌悪より先に浮かんだのが安堵だったこと。
その両方が、まだうまく整理できずにいた。
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◇奪取◇
◆炎の矢
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(殺したことで奪取したのか……)
スキルには、生まれながらに持つ者もいれば、特定の出来事をきっかけに覚醒する者もいる。
前世の記憶を取り戻したことが、その引き金になったのだろう。
——それより。
視界の端で、ルキエとレウシが青白い顔で立ち尽くしているのが見えた。
二人分の目撃者。
その考えが頭をよぎった自分に、俺は少しだけ驚いた。
ふと——母の言葉が蘇った。
『セオンの正義を貫きなさい。』
わかったよ、お母さん。
この力で、お母さんと村のみんなを脅かす存在を消す。
前世みたいな人生は、もう送らない。
ライトサイドを目指すという目的は変わらない。
でも——
邪魔するやつは、殺す。
それが俺にとっての正義であり、復讐だから。




