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記憶の回帰〜Oath of Karma〜  作者: 儚威
第1章 セイクリッド学院編
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第4話 観察者

 マルコが席に戻り、教室に静寂が戻った。


「セオン、お前も席につけ」


 ハレス先生がそう言い、僕は前の席に座った。

 周りの生徒たちは一定の距離を置き、毛嫌いするように避けていく。


 ……まあ、そうだよな。

 強くなって、夢を叶えて、みんなを喜ばせてあげたい。今の僕には、その思いしかなかった。


 ――――――――


 授業が終わり、教室がざわめき始めた頃、後ろの席から声がした。


「ねぇ、ソフィア。さっきのセオン君、なかなかだったと思わない?」


 飄々とした声だった。

 振り返ると、雪のような白みがかった髪の男子が頬杖をつきながら、どこか面白そうな目でこちらを見ていた。くっきりとした目が、値踏みするように細められている。


「……そうね」

 隣には、長い明るい茶色の髪をした女子が座っていた。背筋がまっすぐで、その目には真剣な光がある。だが、その表情はどこか曇っていた。


「私、さっき……“はい”って答えてしまった」

 彼女は静かにそう言って、膝の上できつく手を握った。


「仕方ないよ、ソフィア。あの状況じゃ誰だってそうなる」

 男がさらりと返す。

「仕方なくない」

 ソフィアの声は、揺るがなかった。


「将来この国を守る聖騎士を目指す人間として、あれは本当に不甲斐なかった」


「まあまあ」

 男子は少し間を置いてから、声のトーンを落とした。


「それよりさ……気になるね」

「どういう意味?」

「魔力の流れを見る訓練くらいは、僕もそれなりに受けてる。その上で言うけど、あの魔力量は普通じゃない」


 エリックが静かに言った。

「魔法さえ使えれば、マルコだって認めざるを得なくなるはずだ」


「……確かにそうね」


「うん。セオン君も気づいてるかどうかは分からないけど、あの目にはまだ光がある」

 エリックは少し笑った。

「諦めてる目じゃない」


「エリック、あなたって時々鋭いわね」

「“時々”は余計だよ、ソフィア」

 二人の小さな会話が後ろから聞こえていた。内容までは分からない。


 それでも――

 胸の奥が、少し軽くなった気がした。

 ――――――――


「ねぇ、マルコ君」

 エリックが少し前に座っているマルコに声をかけた。


「なんだ?」

「セオン君を退学させたい理由、どっちなの? 魔法が使えないからか、それとも自由民だからか」


「しょうもねぇ質問だな」

 マルコは鼻で笑った。

「まあ、どっちもだ」

 その言葉を聞いて、エリックが小さく呟いた。


「しょうもないのはお前だろ……」


「ちょっと…!」

 ソフィアが慌てて言った。


「あんたがどうこう言う資格ないでしょ。“はい”って答えたんだから」

「まあ、そうだね〜」

 エリックは軽く笑いながら前を向いた。


(セオン君が魔法さえ使えていたら、こんなことにはならなかったのかもしれない。)


 魔力の流れだけを見れば、あの量は明らかに規格外だ。一方でマルコは、技術は達者だが、流れそのものは細い。


(……妬んでる、とか。まさかとは思うけど。)


 考えたところで、今の自分に何かできるわけでもない。

 エリックは小さく息を吐いて、前に向き直った。

(せいぜい、こっそり見ておくくらいかな)

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