第21話 火花散る
「さぁ!Aブロック第1試合は、実技試験で満点を取り出場を確定させた氷使い、エリック・フロストフォード選手!対するは、常に前へ出る勢いのある動きが持ち味の土使い、ネイサ・ホウン選手!」
会場は歓声に沸き、誰もが開幕の瞬間を待ちわびていた。
エリックとネイサが、選手用の入場口から舞台へと歩いていく。
「改めて、勝敗の判定基準をご説明します。相手を戦闘不能に追い込むこと、相手が降参を宣言すること、そして場外に出るか、審判が致命傷の危険ありと判断して試合を止めた場合――このいずれかで勝敗が決まります。
なお、会場には結界が張られており、想定以上の威力の魔法は自動的に減衰される仕組みになっていますので、選手の皆さんも観客の皆さんも、どうぞご安心ください」
「では試合開始!!!」
ネイサが不敵な笑みを浮かべながら、戦闘態勢をとった。
「余裕ぶっこいてる奴を負かすのが、一番気持ちいいんだよなぁ!!『土煙乱舞』!」
ネイサの放った魔法がエリックをそのまま直撃する。
「おっとー!ネイサ選手の土煙乱舞が、エリック選手を直撃したー!あの威力は……普通なら立っていられないはずですが……!」
土煙が晴れていく。
だが――エリックは、そのまま立っていた。
「なるほど。だいたい実力はわかったよ。魔力を薄く纏う程度で防げる――その程度、ってことだね」
その言葉に、ネイサの顔から余裕が消えた。
「は、はぁ?さっきの程度で全力なわけないだろ!『岩塊乱打』!!」
巨大な岩塊が、うなりを上げてエリックへ迫る。
エリックは体を沈め、瞬時に氷の霧を纏って姿を消した。
「なんだ!?どこにいる」
気づいた時には、エリックがネイサの背後に立っていた。足を払われ、体勢を崩したネイサの首元に、鋭く尖った氷の切っ先が突きつけられる。
「ま、参った……」
ネイサが震える声で降参を告げ、エリックの勝利が決まった。
「何が起こったんだー!?あまりに一瞬の出来事でしたが、見事という他ない、エリック選手の冷静な立ち回りでした!ということで、Aブロック第1試合、エリック・フロストフォード選手の勝利です!」
興奮の残る中、舞台がすぐに整えられていく。
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「さぁ続いては、Aブロック第2試合!凄まじい闇魔法を操るグラディス・エバフォール選手!対するは、丁寧かつ優秀な剣技を得意とするドルフ・ライネン選手!」
二人が舞台に上がり、互いに向き合う。
「試合開始!!」
開始と同時に、グラディスが一気に間合いを詰めた。ドルフは怯んだ様子を見せながらも、腰の剣を抜こうとする。
しかし、それより早く――グラディスは闇の魔力を全身に纏い、加速したままドルフへ体ごと叩きつけた。
ドルフの体は舞台の壁まで吹き飛び、そのまま意識を失って崩れ落ちた。
「試合終了ー!勝者グラディス選手!!」
会場が、あまりの決着の早さにどよめいた。
「雑魚に無駄な時間を割く暇はねぇんだよ」
グラディスはそう吐き捨てると、振り返ることなく舞台を後にした。
「ということでAブロック決勝戦は、エリック・フロストフォード選手対グラディス・エバフォール選手に決定しました!Aブロックの決着に胸が熱くなるところですが、決勝は全ブロックの準決勝が出揃ってから行います!続いては、Bブロックの試合へ移りましょう!」
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「Bブロック第1試合!気高い使命感を胸に秘めた花の貴族、ソフィア・ムーンハート選手!対するは、素早い身のこなしが持ち味の風使い、キエイ・ミルファン選手ー!!」
二人が舞台に上がる。どちらも、真剣な面持ちを崩さない。
「試合開始ー!!」
「花の破裂!」
ソフィアがキエイに向けて花弁を放つ。だがキエイは、風を身に纏い、跳ぶように上空へと逃れた。
「危ないな〜」
キエイは余裕の表情で、宙からソフィアを見下ろした。ソフィアは、わずかに眉をひそめる。
「それが、いつまで続くかしらね」
風による浮遊は、魔力の消耗が激しい。そう長くは持たないはずだ。
「僕は、器用だからね〜」
キエイが両手に風の魔力を込め、次々と風の刃を放つ。ソフィアはそれを紙一重で躱しながら、距離を詰めていく。
「花棘乱舞!」
いくつもの花が地面に咲き、無数の棘が宙のキエイへと降り注ぐ。
「くっ……!」
次々と襲う棘に体勢を乱され、キエイの浮遊がふらついた。体が、地面へと傾いていく。
「はぁっ――!」
その隙を、ソフィアは逃さなかった。落下してくるキエイへ向け、もう一度、花弁を叩きつける。
「試合終了ー!勝者ソフィア・ムーンハート選手!!」
歓声が沸き起こる。観客席の中で、エリックが小さく微笑んでいた。
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「続いていきますよー!Bブロック第2試合は、巧みな立ち回りでここまで勝ち上がってきた実力者、シャルマ・ノイス選手!対するは、圧倒的な身体強化を誇る破壊力抜群、マクリム・ブルバン選手!!」
シャルマは、緊張を隠すように小さく息を吐いた。マクリムは、真剣な目でシャルマを見据えている。
「試合開始!!」
シャルマが剣を引き抜こうとした、その時にはもう――マクリムの姿は、目の前から消えていた。
「どこに――!?」
影が、頭上からシャルマを覆った。見上げると、マクリムが跳び上がり、拳を振りかぶってこちらへ迫っていた。
シャルマは咄嗟に、瞬足を発動する。
「お前、実戦は強いらしいな。だが運が悪い、お前は俺と相性が最悪だ。何せ俺は――全部、力任せで突っ込んでくるタイプだからなぁ!」
拳の連撃が、次々とシャルマへ襲いかかる。
「ええ、最悪ですよ!」
なんとか凌ぎながら、シャルマは声を絞り出した。綺麗に受け流しながら、距離を取る。
「シャルマ選手、もうマクリム選手の攻撃に慣れてきたかー!さすがです!」
「ちっ、鬱陶しいな……」
シャルマの額に、初めて焦りの色が滲んだ。じりじりと押される展開に、苛立ちを隠しきれない様子だった。
「超身体強化!!!」
マクリムの全身を、刺激的なまでに濃い赤の魔力が包み込んだ。
「マクリム選手の切り札が出たー!!あの禍々しいまでの魔力、尋常じゃありません!」
「なら――僕も!『身体強化!』」
シャルマも冷静に身体強化を発動する。マクリムのそれに比べれば見劣りするが、十分な補強にはなる。今のシャルマにできる、精一杯だ。
「うおおおおっ!」
マクリムが吠えながら突撃してくる。シャルマは剣を構え、真っ向から迎え撃った。
これしかない。一瞬の隙を見極め、シャルマは踏み込んだ。
「瞬速!」「光の陽剣!」
姿が掻き消える。
次の瞬間、マクリムの背後――剣の切っ先が、その首元に添えられていた。
「……勝負あり、ですね」
「試合終了ー!勝者、シャルマ・ノイス選手ー!!」
歓声が沸き起こる。
「これでBブロック決勝は、ソフィア・ムーンハート選手対シャルマ・ノイス選手に決定ですー!!」
「さぁ、残りのCブロック、まだまだいきますよー!」




