第19話 巡り合わせ
翌朝、学院の掲示板前には人だかりができていた。
「各クラス成績上位者及びライトサイド候補選抜戦出場者――」
貼り出された紙に、吸い寄せられるように近づく。
「Ⅲ組成績上位者」
1位 エリック・フロストフォード
2位 ソフィア・ムーンハート
3位 セオン・クレスト
3位にいる自分の名前を、何度も目でなぞった。
「……やった……!」
ソフィアが両手で口元を覆った。声が震えている。
「おめでとう、ソフィア。一緒に頑張ろう。」
「あなたたちのおかげよ。ずっと、出場できるか不安だった。」
「僕は元々確定してたから、そんなに驚かないけど。」
「ちょっと、エリック。」
「はいはい、冗談だよ。三人揃って選抜戦、悪くないね。」
いつもの調子で、エリックが笑った。
視線を横に移すと、他のクラスの掲示にも結果が並んでいる。
Ⅳ組の一位には、当然のようにリン・レステニアの名前があった。Ⅱ組にはグラディス・エバフォールとシャルマ・ノイスの名前が続く。
「問題はブロック分けだね。」
エリックが、少し声を落として言った。
「一緒に出場できたとしても、同じブロックになったら選ばれるのは1人だけだ。結局は蹴落とし合いだよ。」
そうだ。候補生になれるのは3人。三人一緒になれるほど、都合のいい話じゃない。
リンも、グラディスも、シャルマも――少しだけ戦いを見てきたが、どれも本物の実力者だった。
「続いて、ブロック分けを発表する。」
試験官が新しい紙を貼り出した。
Aブロック――エリック・フロストフォード
グラディス・エバフォール
ネイサ・ホウン
ドルフ・ライネン
Bブロック――ソフィア・ムーンハート
シャルマ・ノイス
キエイ・ミルファン
マクリム・ブルバン
Cブロック――リン・レステニア
セオン・クレスト
フィア・グレイス
オーウェン・ハルト
自分の名前の隣に並ぶ「リン・レステニア」の文字を、俺は静かに見つめた。
同じブロックになるのが嫌なわけじゃない。ただ、今の自分の実力を考えると、少し、複雑な気持ちだった。
「同じブロックか。」
「うん。」
いつの間にか、リンが隣に立っていた。
「セオンと同じブロックになれて、ボクは嬉しいよ。」
それだけ言って、リンは静かに立ち去った。
「リンと一緒のブロックになったのね。」
ソフィアが背後からそう言ってきた。
「ああ。ソフィアは――シャルマ・ノイスと一緒か。魔物討伐で5位だった。」
「ええ。エリックとセオンのブロックに比べたら、まだマシな方だと思うけど。」
その声には、少しの安堵と、少しの緊張が混じっていた。
「あの闇魔法と、本気でやり合えるのかな……楽しみだな。」
どこからともなく、そんな声が聞こえてくる。Aブロックの結果を見た誰かが、グラディスの噂をしているのだろう。
選抜戦を目前に、学院全体が浮き足立っていた。
◇
選抜戦まで、残り二週間。
エリックは氷魔法の精度をさらに研ぎ澄まし、ソフィアは花の魔法に新しい型を加えていった。リンは剣を振り続けているという噂だった。グラディスもシャルマも、それぞれのやり方で仕上げに入っているらしい。誰も、この二週間を無駄にはしなかった。
俺は、学院の訓練場に籠り、何度も魔法を放ち続けた。
たまにバルスケの森へも足を運び、実戦の感覚を確かめた。
今必要なのは、限界まで魔力を練り上げる精度だ。
「――ッ!」
魔法を放つ。何度も、何度も。
村のみんなを思い出しながら、証明してみせる。
そして、変えるんだ。この手で。
二週間は、あっという間に過ぎていった。
そして――選抜戦当日を迎えた。




